後編では、なごちょうさんのユニークな「企業分析」の視点や、会社員生活と両立させる「情報収集ルーティン」、そして数々の失敗から学んだ教訓に迫ります。「特別な才能はない」と語る彼が、なぜこれほどまでに勝ち続けられるのか。
「夢のような計画は99%うそ」数々の問題企業を見て養った相場観
トウシル:なごちょうさんのX(旧Twitter)を拝見していると「XX株ウォッチャーが趣味(自主規制)」とあって…。コンプライアンスに懸念がありそうな企業、いわゆる「問題アリ企業」について、売買はせずともよく言及されていますよね。ご自身の堅実な投資スタイルとは真逆に見えますが、なぜそういう株をウオッチされているのですか?
なごちょうさん:昔から「なんでこんな会社が上場できているんだ?」というような、怪しい企業を見るのが好きなんですよ(笑)。
実態がないのに「海外で画期的な新薬が承認された」とうそのような開示を出して株価をつり上げるバイオベンチャーとか、AI、ブロックチェーン、メタバースといったはやりのキーワードだけを並べて中身のないプレスリリースを乱発する企業とか。
トウシル:投資家を惑わせるような企業ですね。
なごちょうさん:そうです。そういう企業をウオッチしては、「やっぱりダメだったな」と結果を答え合わせするのが楽しみなんです。もちろん、自分のポートフォリオには絶対に入れません。いろいろ調べているので、答えが出る前にSNSや掲示板など書いて注意喚起したい気持ちもあります。
トウシル:そういった悪い例をたくさん知っていることは、実際に利益を上げるための本業の投資にも役立っているんですか?
なごちょうさん:非常に役立っています。「売上も利益もないのに、夢のような計画ばかりぶち上げるリリースは夢物語で終わる事が非常に多い」といった経験を数多くしますから。
それに、怪しい適時開示情報や不誠実なIRのパターンを知っていると、自分が投資しようとしている企業の決算書を見た時に「この書き方はちょっと怪しいな」とか「不自然なリリースだな」といった違和感に気づけるんです。
いわば、偽物をたくさん見ることで、本物を見抜く解像度が上がったといえますね。これは問題アリ企業ウオッチの意外な効能です(笑)。
時間の使い方が勝負の分かれ目。兼業投資家でもできる一次情報取得法
トウシル:普段はご実家の文具店で働いておられますが、いつ情報収集をしているのですか? 200銘柄以上を管理するのは大変ではないですか?
なごちょうさん:私は兼業投資家なので、板にずっと張り付いているわけにはいきません。基本的には仕事の合間や休憩時間に、適時開示情報をチェックしています。具体的には、お昼休みの13時ごろや、市場が閉まった後の15時半ごろに見ることが多いですね。ざっとタイトルを見て、自分の持っている銘柄や監視している銘柄の開示があれば、帰宅後にPCでじっくり読みます。
トウシル:自営業ならではの時間の生かし方ですね。
なごちょうさん:そうですね。そういう意味では恵まれた環境かもしれません。ただ、サラリーマンの方でも、通勤電車の中や昼休みにスマホで適時開示情報をチェックする習慣をつけるだけで、だいぶ違うと思いますよ。ニュースサイトの要約記事だけでなく、企業が発表する一次情報を調べる癖をつけるのが大事です。
トウシル:本当に誠実に企業に向き合っているのがよく分かります!
なごちょうさん:はい。そこは人と接するのと同じように、誠実に企業と向かい合っていると自分でも思います。決算短信や有価証券報告書ももちろん読みこみます。また、株主アンケートが来たら必ず回答しますし、疑問点があれば会社にメールで質問しますね。
時には、同じようなスタイルの投資仲間から情報を集めたり、その業界に詳しい友人に話を聞いたりして、情報の裏取りをすることもあります。化学メーカーの技術について、理系の友人に「この技術って本当にすごいの? 他社でもできるの?」と聞くと、表には出てきにくい真実が聞けたりするんですよ。
トウシル:そんな人とどこで知り合うんですか?! スゴイ人脈ですね。
なごちょうさん:いや、ずっと地元にいるので、たまたま幼なじみがそういう職についていたり、Xや講演会で知り合った知識人に遠慮なく聞いたり、僕がグイグイいくからじゃないですか?(笑)
トウシル:それにしてもスゴイ。リアルの友人関係や人との付き合いを本当に大切にしている誠実なお人柄が分かります。だからこそ、「ほんとのとこ、どうなの?」と素直に聞けて、ぶっちゃけ話をしてくれる人間関係が築けるんですね。
なごちょうさん:はい。それは銘柄に対しても同じことです。
無限ナンピンの悪夢。信用取引で退場しかけた痛恨の失敗談
トウシル:今でこそ堅実な投資スタイルですが、過去には大きな失敗もあったのでしょうか?
なごちょうさん:一番の失敗は、信用取引に手を出したことですね。特に痛かったのが、ある電機メーカーの銘柄での失敗です。そのメーカーは、爆発的に売れていたスマートフォンに同梱される付属イヤホンを作っていました。
そのため「絶対に上がり続ける」と確信してしまい、株価1,500円くらいから信用取引で買い始めたんです。ところが、予想に反して株価はずるずると下がっていってしまい…。
トウシル:絶対的な確信があると、下がっても「安すぎる、チャンスだ」と思ってしまいますよね。
なごちょうさん:そうなんです! 1,400円、1,200円と下がるたびに「市場が間違っている」と思って買い増しを続ける、いわゆる「無限ナンピン」状態に陥りました。結局、株価が上がる前に資金が尽きてしまい、底値付近で一度投げ売りをして損切りせざるを得なくなりました。半分は買い戻しましたが…。
トウシル:退場させられてしまったわけですね。
なごちょうさん:皮肉なことに、私が泣く泣く売った直後に株価は反転し、1年もたたずに3倍以上の3,300円まで高騰しました。もし現物で持っていれば大もうけだったのに、信用取引でレバレッジをかけていたせいで、耐えることができなかったんです。
その後もPCメーカーの銘柄でも、大半を早売りしてしまうなど、似たような失敗をしたのを機に「二度と信用取引でのナンピンはしない!」と誓いました。
暴落時も仕事があれば耐えられる。本業×投資家の心地よい距離感
トウシル:徹底的な裏取りをしているなごちょうさんもそんな失敗をするのか、と少し安心しました(笑)。そうしたご経験を経て、今はどのようなスタンスで相場に向き合っているのでしょう?
なごちょうさん:原則として現物取引のみにしているので借金もなく、精神的にはだいぶ楽ですね。例外として買付余力が足りないときにつなぎとして信用買いすることはありますが、5営業日以内に現引きするというマイルールを設けています。
トウシル:どっしりとしたスタンスに落ち着かれたんですね。
なごちょうさん:もう無限ナンピンはしないですよ(笑)。勤務時間中に株価を見ることはありますが、短期売買をするわけではないので、株価が下がっても「まあ、配当をもらって待てばいいか」と思えます。
精神的に落ち着いていられるのは、本業の影響が大きいと思いますね。
トウシル:専業投資家のように「稼がなきゃいけない」というプレッシャーがないのは強みですね。
なごちょうさん:そうですね。それに、AIや半導体といったはやりのテーマ株が盛り上がっていても、無理に乗っかることはしません。バリュー株相場が来るまで待てばいい、と割り切れるようになりました。
相場が良い時は誰でももうかりますが、悪い時にいかに退場せずに市場に居続けるかが、長期で資産を築くキモだと思います。
「大手だから安心」は幻想。初心者が身につけるべきは財務諸表の読み方
トウシル:これから投資を始める人、新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)で投資を始めたばかりの人へアドバイスをいただけますか。
なごちょうさん:まずは決算書の損益計算書(P/L)、貸借対照表(B/S)、キャッシュフロー計算書(C/F)の「財務三表」に何が書いてあるか大ざっぱでもいいから理解できるようになってほしいです。数字の変化から、その会社に何が起こっているのか、多少なりとも自分で推理する力を少しずつつけていければと思います。
これは習うより慣れろで、自分の持っている株の決算を見ることから始め、慣れてきたら気になる銘柄や話題になってる銘柄へ広げていけばいいです。
トウシル:やはり勉強は必要だということですね。
なごちょうさん:そうですね。自分も勉強は好きではありませんでしたが、2002年の夏から財務諸表の読み方はずっと勉強し続けています。会計の基準もどんどん変わっていくので。
そして、「最初は必ず失敗する」と理解しておきましょう。私自身もそうでした。だからこそ、いきなり退職金や貯金の全額を突っ込むのではなく、資産の10分の1程度かそれ以下の金額から始めてください。今は1株から買える「かぶミニ®」などもありますから、実地で痛みを知りながら学んでいくのがいいと思います。
トウシル:最初から大金を投じるのは危険だと。
なごちょうさん:危険ですね。特に「大手企業だから安心」「メガバンクなら絶対大丈夫」という思い込みは捨てた方がいいでしょう。私はこの30年の間に、大手銀行の株価が何分の1、何十分の1に暴落する地獄を何度も見てきましたから。
どんな大企業でも、財務が悪化すれば株価は下がります。だからこそ雰囲気やイメージではなく、数字を見て判断する力をつけてほしいですね。
トウシル:なごちょうさんの強みは、企業に対しても人に対しても「誠実」であることだと感じました。本当に芯のある割安株を見つけて長く付き合うというスタンスは、なごちょうさんが困ったときも必ず助けてくれそうです。本日はありがとうございました!
▼前編はこちら
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(トウシル編集チーム)

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