中国の2025年主要経済統計が発表されました。GDPの実質成長率は5.0%増で前年と同水準、政府目標は達成したものの、供給過剰、需要不足、デフレ、不動産不況など問題は山積しています。

2026年、中国経済はどこへ向かうのでしょうか。


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著者の加藤 嘉一が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 中国の2025年GDP「5.0%増」をどう読むべきか? 」


中国2025年GDP実質成長率5.0%増。当局は「勝利宣言」

 中国国家統計局が1月19日、2025年の主要経済統計結果を発表しました。


 最も注目される国内総生産(GDP)の実質成長率は前年比5.0%増で、伸び率は2024年と同様、政府が設定した年間成長率目標である「5.0%前後」を達成しました。


 四半期ごとの成長率は以下の通りです。後半になるほど伸び率が鈍化していることが見て取れます。


2025年の中国GDPの実質成長率 1~3月 5.4% 4~6月 5.2% 7~9月 4.8% 10~12月 4.5% 1~12月 5.0% 出所:中国国家統計局の発表を基に筆者作成。数字は前年(同期)比

 政府目標は「5.0%前後」なので、4.9%増でも「目標達成」と言えます。しかし、見栄えの観点から5%に達するよう、特に10-12月期に関しては、中央政府が数字を合わせるべく躍起になっていた光景は想像に難くありません。


 実際、5.0%という数字が統計局によって公表されると、国営新華社通信など官製メディアを中心に、「中国経済の総量は140兆元(約3,177兆円)の節目を突破」「国内外の経済環境が複雑に変化する中、国民経済は下振れ圧力に耐え前進し、新しい、良質な方向へと進んだ」などと大々的に宣伝していました。


 また、2025年は中国が「建国の父」である毛沢東の時代から実行している五カ年計画の第14次が終了する年でもあっただけに、何が何でも、表面的なものだったとしても、「目標達成」を掲げたかったという政治的立場があったのでしょう。


 実際、官製メディアは「経済社会発展目標は円満に達成され、第14次五カ年計画が勝利の中で終了した」という宣言を前面に打ち出していました。


同時に発表された主要統計の内訳:低迷する投資、持ちこたえる貿易?

 2025年、本連載で、上海や北京、香港への出張報告を複数回させていただきました。当局によって発表される統計と実態がどの程度リンクしているのか、あるいは乖離(かいり)しているのかをこの目で把握すべく、可能な限り現場に足を運んできました。


 そこで感じたことは、習近平氏も警戒する「内巻式競争」(価格などを巡る過当競争が激化し、経済全体が疲弊し、悪循環に陥る現象)が横行している実態でした。住宅、自動車といった大きな買い物から、レストラン、生活必需品まで、デフレの闇は想像以上に根深いと感じたものです。


 そんな中、今回、GDP成長率以外の2025年主要統計の結果が発表されました。


  1~12月 12月 工業生産 5.9% 5.2% 小売売上 3.7% 0.9% 固定資産投資 ▲3.8%   不動産開発投資 ▲17.2%   不動産を除いた固定資産投資 ▲0.5%   貿易(輸出/輸入) 3.8%(6.1%/0.5%) 4.9%(5.2%/4.4%) 失業率(調査ベース、農村部除く) 5.2% 5.1% 消費者物価指数(CPI) 横ばい 0.8% 生産者物価指数(PPI) ▲3.0% ▲2.1% 出所:中国国家統計局の発表を基に筆者作成。▲はマイナス。数字は前年同期比、または前年同月比

 この統計発表から読み取れる示唆を抽出すると、以下のようになるでしょう。


  • 工業生産、小売売上という主要指標において、直近(12月)の数字が通年よりも悪化
  • 投資はマイナス成長で、明らかに低迷している(民間投資はマイナス6.4%)
  • 不動産不況は続く、さらに悪化
  • 貿易は「トランプ関税」の影響を受けつつもなんとか持ちこたえている様相
  • 物価は足元で回復しつつあるが、まだまだ予断を許さない状況

 このような状況下、統計局は現状認識を次のようにコメントしています。


「中国経済は複数の圧力がかかる中で持ちこたえた。

外部環境の変化がもたらす影響は深化している。国内における供給過剰、需要不足の矛盾は突出している。経済成長過程における古い問題と新たな課題は少なくない」


 中国政府として景気の現状と行方を決して楽観視していない空気感が伝わってきますが、2025年12月に開催された中央経済工作会議で審議した方針に基づき、「安定の中で進化。質と効果を向上させる」「従来以上に積極的、有為的なマクロ政策を実施する」「内需拡大、供給の最適化」「全国統一大市場の建設」といった政策を打ち出しながらなんとか経済を持ち直し、立て直すという姿勢で臨んでいくことでしょう。


 3月5日に開幕する全国人民代表大会(全人代)で、成長率の目標や財政赤字率がどの程度の水準に設定されるのかに注目したいと思います。


デフレと不動産不況の行方は?

 さて、2025年を通じて、中国経済を巡る構造的問題として注目されてきたのがデフレスパイラルと不動産不況だったと振り返っています。今回の統計発表を見る限り、2026年も、経済はデフレ基調で推移し、不動産不況から抜け出すことは難しく、不動産市場の低迷が生産や投資を含めた経済全体に及ぼす悪影響も軽視できないと私は考えています。


 デフレに関して言えば、2025年のGDPの実質成長率は5.0%増えたものの、名目は4.0%にとどまりました。2024年のGDPの名目成長率、4.2%からも伸び率が鈍化しています。名目が実質を下回るということは、経済に対するデフレ圧力が強いことを意味しており、この「名実逆転」も中国経済がデフレスパイラルに陥っている一つの証左だと言えます。


 消費者物価指数(CPI)は横ばい、PPIは依然マイナスでありますが、2026年を通じて、デフレがどう進行するのか、注目していきたいと思います。


 不動産に関して、私の実感としては、「出口」が見えません。

政府当局としても、不動産神話はもはや過去の遺物であり、市場全体をそのような過熱状態に戻すようなことは考えていないでしょう。


 不動産以外の業界や分野で経済成長を促していくための「改革」、言い換えれば不動産の代替となる産業を育てる方針で、今後数年取り組むものと思われます。私自身は、そのトランスフォーメーションの過渡期において、株式市場がどれだけ盛り上がるのか(2026年1月21日午前時点で上海総合指数は4,100ポイント強)に注目したいと思っています。


(加藤 嘉一)

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