今後、急成長が見込まれる「フィジカルAI」は株式投資にとって重要なテーマになるでしょう。今回は、フィジカルAIについて学べるクイズを出題します。
クイズ
今回のクイズの設問は、クイズを解くための基礎知識の説明も含まれるためやや長文になります。
【第1問】
フィジカルAIとは、「AIエージェント(自律的に人間の作業をサポートするAI)」が導き出すソリューションを物理的な行動によって実現する主体です。
さて、この中から、フィジカルAIの実用化が進む分野として適切ではないものを一つ選んでください。
【A】自動車工場での溶接・塗装・部品組み付け
【B】外食業での調理・配膳・下膳
【C】物流センターでの自動搬送・ピッキング
【D】法律事務所での訴訟資料作成
【第2問】
AIには、「組み込みAI」と「クラウドAI」があります。
◆組み込みAI
ロボットや機器の中に直接搭載されるAIです。その機器内でAI処理を完結させるため、インターネット接続が不要で、低遅延での瞬時な判断・行動が可能です。
◆クラウドAI
インターネットを通じて、遠く離れた高性能なサーバー(クラウド)でAI処理を行います。大量のデータ処理や複雑な学習が可能です。ただし、インターネット接続が必要なため、リアルタイムの判断が難しく、通信環境によって遅延が発生することもある。
フィジカルAIでは、瞬時の判断が大切なため、組み込みAIが重要な働きをします。
以下の作業の中で、組み込みAIを使わずに、クラウドAIでも処理できる可能性が高い作業を一つ選んでください。
【A】人間と同じ空間で作業する協働ロボットによる、作業員の急な動きを検知し、衝突を回避するために瞬時に停止する判断
【B】自動運転車が、交差点で飛び出してきた歩行者を認識し、緊急ブレーキをかける判断
【C】農業用ドローンが広大な農地を巡回し、作物の生育状況を撮影した画像を送信。その画像をAIで解析して、施肥計画を立案、収穫量を予測する判断
【D】工場内の生産ラインで、流れてくる製品の微細な傷をAIカメラで検知し、不良品として自動で排除する判断
【第3問】
フィジカルAIを「ロボット」と呼ぶケースもあります。ただし、従来のロボットとは、AIを使って「人間的な判断」ができるようにしている点が大きく異なります。
近年、産業用ロボットにAIを導入して「フィジカルAI」として活用する動きが広がっています。従来の産業用ロボットにはできないが、フィジカルAIにはできることを一つ選んでください。
【A】事前にプログラムされた手順通りに高速で正確に部品を組み立てる作業
【B】箱の中に無造作に(雑然と)入っている部品をピッキングして組み付けする作業
【C】工場内で決められたルートを高速で移動し、荷物を運搬する作業
【D】一日中、休憩なしで作業を続けること
【第4問】
フィジカルAIの実用化がさまざまな産業で進んでいる中でも、自動運転は、フィジカルAI技術の結晶です。自動運転車は周囲の状況をセンサーで検知し、AIが判断して、ブレーキやアクセル、ハンドルを操作します。
自動運転には、レベル0~5まであります。日本ではレベル3まで実現しています(一部レベル4の実証実験は行われています)。米国や中国ではレベル4が実現していますが、レベル5の自動運転はまだ実現していません。
さて、以下に説明する自動運転のうち、レベル4はどれでしょう?
【A】部分的な運転自動化
システムが「加速・減速」「操舵(そうだ)」を同時に行う。高速道路での車線維持と前車追従を同時に行う機能などがこれに当たる。ただし、運転の主体はあくまでドライバーにある。
【B】条件付きの運転自動化
特定の走行環境条件(例えば、高速道路の渋滞時や限定された区間など)下において、システムが全ての運転操作を自動で行う。この間、ドライバーは運転操作から解放されるものの、運転席にいる必要がある。システムが対応できない状況に陥った場合や、システムからの介入要請があった際には、速やかにドライバーが運転操作を引き継ぐことが求められる。
【C】特定条件下でドライバー不要の自動運転
特定の走行環境条件(特定の地域、特定の時間帯、特定の道路など)を満たす限り、システムが全ての運転操作を自動で行う。ドライバーが全く介在する必要がない自動運転。システムが対応できない状況に陥った場合には、自動的に安全な場所に停車して対処する。このレベルでは、運転席にドライバーが乗車している必要がなく、完全無人での運行も可能になるが、運行可能なエリアや条件は限定される。
【D】完全自動運転
システムがあらゆる状況下で、全ての運転操作を自動で行う。天候、道路状況、地域、時間帯といった条件に一切左右されず、人間による運転と全く同じか、それ以上の能力を発揮する。規制上の制約がない限り、全国の公道をどこでも自由に走行可能。このレベルでは、運転席やハンドル、ペダルといった運転装置そのものが不要となる。
【第5問】
フィジカルAIがさまざまな産業で使われるようになっていますが、以下に、その実例が示されています。以下のうち、まだ実現していないものはどれでしょう? 一つ選んでください。
【A】搾乳ロボット:個体ごとの搾乳履歴や健康状態を把握し、乳牛にとって快適で効率的な搾乳方法を選択する。
【B】清掃ロボット:オフィスや空港の床を自動で清掃。人の動きを検知して衝突を回避する。
【C】農業ロボット:トマトの成熟度をAIが識別し自動で収穫を行う。
【D】手術ロボット:熟練医師の動きを学習したロボットが自動で外科手術を行う。
【第6問】
以下【A】~【D】の企業群のうち、【1】、【2】に該当する企業群をそれぞれ一つずつ選んでください。
【A】 ファナック(6954) と 安川電機(6506)
【B】 ハーモニック・ドライブ・システムズ(6324) と ナブテスコ(6268)
【C】 THK(6481) と 日本精工(6471)
【D】 キーエンス(6861) と 村田製作所(6981)
【1】産業用ロボットの関節部に不可欠な「精密減速機」を供給。2社合わせて世界シェア推定約8割。ヒト型ロボットやフィジカルAIでも重要な役割を果たす関節部の製造に不可欠。
【2】産業用ロボットの世界大手。産業用ロボットへのAI導入を進めている。
クイズは以上です。
正解
【第1問】
フィジカルAIでなくても可能なのは、【D】の訴訟資料作成、です。
【A】自動車工場での溶接・塗装・部品組み付け
【B】外食業での調理・配膳・下膳
【C】物流センターでの自動搬送・ピッキング
【D】法律事務所での訴訟資料作成
これらはAIが一部行えるようになってきた業務です。この内、ソリューション作成はAIエージェントの仕事ですが、物理的に実行するにはフィジカルAIが必要です。【A】【B】【C】がフィジカルAI、【D】はAIエージェントの仕事です。
【第2問】
クラウドAIでも処理できるのは、【C】農業用ドローンの撮影、画像の解析、です。
【A】人間と同じ空間で作業する協働ロボットによる、作業員の急な動きを検知し、衝突を回避するために瞬時に停止する判断
【B】自動運転車が、交差点で飛び出してきた歩行者を認識し、緊急ブレーキをかける判断
【C】農業用ドローンが広大な農地を巡回し、作物の生育状況を撮影した画像を送信。その画像をAIで解析して、施肥計画を立案、収穫量を予測する判断
【D】工場内の生産ラインで、流れてくる製品の微細な傷をAIカメラで検知し、不良品として自動で排除する判断
【A】【B】【D】は、瞬時の判断、瞬時の対応が必要なため、クラウドAIの回答を待って対応していては間に合いません。従って、いずれも組み込みAIで処理する必要があります。
一方、【C】は対応に時間的余裕があるので、クラウドAIが使えます。
【C】は、農業用機械大手 クボタ(6326) が提供しているスマート農業システム「KSAS」について説明したものです。
スマート農業システム「KSAS」では、ドローンが撮影した水田の画像をAIで解析することにより、以下を判断して営農計画に役立てます。
【1】ドローンで撮影:マルチスペクトルカメラなどを搭載したドローンが水田上空を飛行し、稲の光の反射率を測定します。
【2】AI解析:AIは、この反射率データを解析し、稲の葉の密度、緑色度、窒素吸収量などを推定します。
【3】AIによる推奨:生育状況マップを基に、AIが各エリアにどれくらいの量の追肥が必要かを自動的に計算し、可変施肥マップを作成します。生育が旺盛なエリアには、追肥量を減らすか、与えない。生育が遅れているエリアには、追肥量を増やす。これにより、無駄な肥料散布を減らし、コスト削減と環境負荷低減に貢献しながら、水田全体の収量と品質の均一化を目指します。
【4】収量予測:ドローン画像による生育データと過去の収量データをAIが学習することで、その年の収量をより正確に予測することが可能になります。早期に収量予測を行うことで、販売計画や収穫作業の計画を立てやすくなります。
【5】AIによる検知:ドローン画像から、稲の異常な変色や生育不良パターンを検知し、病害虫の発生や雑草の繁茂を早期に発見します。問題のある箇所を特定することで、ピンポイントでの農薬散布や除草作業が可能になり、全体への拡大を防ぎ、コストと環境負荷を低減できます。
【第3問】
従来の産業用ロボットにできないがフィジカルAIにできることは、【B】雑然と入っている部品のピッキング、です。
【A】事前にプログラムされた手順通りに高速で正確に部品を組み立てる作業
【B】箱の中に無造作に(雑然と)入っている部品をピッキングして組み付けする作業
【C】工場内で決められたルートを高速で移動し、荷物を運搬する作業
【D】一日中、休憩なしで作業を続けること
【A】【C】【D】は、事前に手順が決められた作業なので、従来の産業用ロボットが得意とすることです。
ところが、雑然と置かれた部品のピッキングは、AIの活用なしには極めて困難です。
従来の産業用ロボットが部品をつかむには、部品の正確な位置と姿勢(向き)の認識が必要です。
フィジカルAIならば、3Dビジョンシステムで部品が入っている箱の中をスキャンし、取得した画像データをAIが解析します。AIは、個々の部品の3次元位置と姿勢を推定し、ロボットアームに最適なピッキング経路と姿勢を指示します。
そうすることによって、雑然と置かれた部品もピッキングできるようになります。高度なAIが登場する以前は、産業用ロボットにつかませる部品は、正確な位置に人間が整える必要がありました。フィジカルAIによって、そうした作業を省くことができるようになりました。
【第4問】
自動運転レベル4の説明は、【C】特定条件下でドライバー不要の自動運転、です。
【A】~【D】は、それぞれレベル2・3・4・5の自動運転の説明です。
【A】レベル2:部分的な運転自動化
高速道路で車線維持・前車追従を同時に行う機能などがあります。ただし、運転の主体はあくまでドライバーにあります。
【B】レベル3:条件付きの運転自動化
特定の走行環境条件下において、システムが全ての運転操作を自動で行います。ただし、ドライバーは運転席に常駐して緊急時には速やかに運転操作を引き継ぐことが求められます。
【C】レベル4:特定条件下でドライバー不要の自動運転
特定の走行環境条件を満たす、特定地域内だけで、ドライバー不要の自動運転が可能となります。米国では、サンフランシスコ、ロサンゼルスなど、一定の地域内で、完全無人の自動運転タクシーが商業運行されています。中国でも、北京市、上海市、広州市などで、限定された地域内で、完全無人のロボタクシーなどが運行されています。
【D】レベル5:完全自動運転
全国の公道どこでも完全無人で自動運転します。このレベルでは、運転席やハンドル、ペダルといった運転装置そのものが不要となります。ただし、レベル5を実現した国はまだありません。
【第5問】
フィジカルAIが実現していないのは、【D】手術ロボット、です。
以下の【A】【B】【C】は全て、実現しています。
【A】搾乳ロボット:個体ごとの搾乳履歴や健康状態を把握し、乳牛にとって快適で効率的な搾乳方法を選択する。
【B】清掃ロボット:オフィスや空港の床を自動で清掃。人の動きを検知して衝突を回避する。
【C】農業ロボット:トマトの成熟度をAIが識別し自動で収穫を行う。
川崎重工業(7012) が開発・製造している「hinotori(ヒノトリ)」は、国産初の手術支援ロボットシステムで、世界的に高い評価を受けています。ただし、手術を行う医師のサポートをするだけで、手術そのものは医師が行います。
完全自動の手術ロボットは、将来的にも実現しないかもしれません。これは技術的な問題ではなく、患者の生命を預かる重大な責任や予測不可能な状況への対応を考慮し、完全自動化が避けられると考えられるためです。
【第6問】
【1】産業用ロボットの関節部に不可欠な「精密減速機」を供給しているのは、
【B】ハーモニック・ドライブ・システムズ(6324)とナブテスコ(6268)です。
【2】産業用ロボットの世界大手。産業用ロボットへのAI導入を進めているのは、
【A】ファナック(6954)と安川電機(6506)です。
上記に限らず、日本には、フィジカルAIで活躍する企業が多数出ると考えています。
テクニカル・ファンダメンタルズ分析を詳しく勉強したい方へ
最後に、株式投資を書籍でしっかり勉強したい方に、私の著書を紹介します。ダイヤモンド社より、株価チャートの読み方をトレーニングする「 2000億円超を運用した伝説のファンドマネジャーの 株トレ 」(黄色の本)と、決算書の見方などを学ぶ「 2000億円超を運用した伝説のファンドマネジャーの 株トレ ファンダメンタルズ編 」(水色の本)が出版されています。どちらも一問一答形式で株式投資の基礎を学ぶ内容です。
(窪田 真之)

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