米国株市場は、グリーンランド領有や関税を示唆するトランプ氏の発言をめぐり、急落から一転して急反発しています。市場の一部では2025年の「TACO」トレードが再現されたとの見方もありますが、今回も継続的な株高基調を維持することができるのか? TACOトレードの本質や市場に潜むリスク、今後のポイントなどについて探っていきます。


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著者の土信田 雅之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 再燃する米国市場の「TACO」トレード。さらなる株高につながるか? 」


忙しい展開が目立つ今週の米国株市場

 連休明けで4営業日となった今週の米国株市場ですが、主要株価指数は1月20日(火)の取引で急落したかと思いきや、翌1月21日(水)には大きく反発して不穏な空気を一掃するなど、値動きの激しい展開が目立っています。


<図1>米NYダウ(日足)の動き(2026年1月21日時点)
米国株:「TACO」トレード再現でさらなる株高につながるか?(土信田雅之)
出所:MARKETSPEED II

<図2>米S&P500(日足)の動き(2026年1月21日時点)
米国株:「TACO」トレード再現でさらなる株高につながるか?(土信田雅之)
出所:MARKETSPEED II

<図3>米ナスダック総合(日足)の動き(2026年1月21日時点)
米国株:「TACO」トレード再現でさらなる株高につながるか?(土信田雅之)
出所:MARKETSPEED II

 図1から図3の日足チャートで米主要株価指数の動きをたどってみると、20日(火)の取引で、ダウ工業株30種平均が25日移動平均線、S&P500種指数とナスダック総合指数については50日移動平均線をそれぞれ下回る場面が確認できるほか、いずれの株価指数も下段のMACD(移動平均収束拡散)がシグナルを下抜けるなど、短期的な下落トレンド入りを意識させる格好となっています。


 もっとも、先週に引き続き、資源・エネルギー株や航空宇宙・防衛関連株、石油サービス株などの銘柄が物色されているほか、これから出てくる予定の米テック企業の決算次第でAI・半導体相場が息を吹き返す可能性もあり、現時点で下落トレンドが本格化していく展開を想定するのは早計と思われますが、警戒レベルを引き上げておく必要はありそうです。


「TACO」トレードは再現したのか?

 また、今週の米国株市場が見せている慌ただしさの背景には、トランプ米大統領の動きが大きく影響しています。


 グリーンランドの領有に向けた米国の動きに反発姿勢を示しているデンマークやフランス、ドイツなどの欧州8カ国に対し、トランプ米大統領が「米国がグリーンランドを取得するまで、追加関税を課す」と表明したことが、国内外の市場に警戒感をもたらし、20日(火)の米国市場では、株安・債券安・通貨(米ドル)安の「トリプル安」となったほか、安全資産とされる金(ゴールド)が最高値を更新するなど、リスクオフムードが漂い始めました。


 しかし、翌21日(水)を迎えると、トランプ米大統領がダボス会議での演説において、「武力による解決を望んでいない」という発言があったこと、そして、その後に関税発動を見送る旨をSNSに投稿したことで相場のムードが一変し、米国市場は前日と反対の方向に転じました。


 結果的に、トランプ米大統領の変わり身の早さに振り回される格好になったわけですが、こうした相場展開を受け、市場の一部では、2025年の相場で見られた「TACO(Trump Always Chickens Out:トランプはいつもビビッて尻込みする)」トレードが再現されたという見方もあるようです。


 確かに、昨年4月に米トランプ政権が「相互関税」を発表した際も、米国市場がトリプル安で反応したことで、トランプ米大統領の態度が軟化し、市場も落ち着きを取り戻していったという経緯があり、今回も同様の展開になったと考えることができます。


 仮に、TACOトレードが再現されたということになれば、今後もトランプ米大統領が大胆な発言をして、株式市場が下落で反応したとしても、「どうせ振り上げた拳を下ろすに違いない」ということで、株価が下落したところが「絶好の買い場」という展開が繰り返される可能性が高くなりますが、そのウラでは、気を付けておきたいポイントが潜んでいます。


グリーンランド情勢はまだ不透明

 一つめのポイントは、昨年と同じように見えるTACOトレードでも、微妙に状況が異なる点です。


 昨年の場合は、最初に高い関税率をちらつかせ、その後の交渉を通じて、少しでも米国に有利な条件を相手国側から引き出し、トランプ米大統領が「勝利」を宣言できる落としどころを探った結果、関税率が引き下げられるという流れでしたが、今回のグリーンランドの領有については、領土という「主権」が絡んできます。


 また、欧州8カ国への関税撤回については、トランプ米大統領は北大西洋条約機構(NATO)のルッテ事務総長と会談し、「グリーンランドや北極圏全体に関する将来の枠組みの構築について大枠で合意した」ことを根拠としています。ただし、そもそも当事者(デンマークおよびグリーンランド自治政府)がどこまで関わっているのかなど、現時点で不透明な部分は多いといえます。


 軍事・防衛拠点の設置許可をはじめ、レアアース採掘の優先権や共同開発事業といった資源へのアクセス権、米国企業による港湾や空港整備といったインフラ投資の利権獲得など、グリーンランドの領有そのものではなく、「中身」で落としどころを探る展開となることもあり得ます。


 そのケースでは、「グリーンランドの安全保障を確保した」として、トランプ米大統領が勝利宣言をすることが可能になると考えられますが、まずは当事者による交渉が始まるのか、そして、交渉がなかなか前に進まない事態になれば、トランプ米大統領が再び圧力を掛けてくることも想定しながら、状況の推移を冷静に見極めていくことが必要になりそうです。


TACOトレードの本質は「不安の後退」

 二つめのポイントは、TACOトレードの本質は「不安の後退」であり、積極的に「上値を追っていく」材料ではないということです。


 トランプ米大統領の発言によって「いつ揺さぶられるか分からない」「関税という脅しがいつまた別の形(対中国や対南米など)で現れるか分からない」という状況が続いてしまうことは、株価の値動きが荒っぽくなるほか、企業の設備投資計画が立てにくくなるなど、中長期的な視点ではネガティブに働きやすくなります。


 さらに、市場が「またTACOトレードになるだろう」と高をくくってしまい、実際に発動されてしまった際には、「おおかみ少年効果」でショックが倍増してしまうリスクもあります。特に、今年(2026年)の米国では11月に中間選挙が控えているだけに、具体的な成果を求めるトランプ米大統領が実行に移す展開も想定しておく必要があります。


<図4>米主要株価指数のパフォーマンス比較(2025年末を100)(2026年1月21日時点)
米国株:「TACO」トレード再現でさらなる株高につながるか?(土信田雅之)
出所:MARKETSPEED IIおよびBloombergデータを基に作成

 また、図4は、2025年末を100とした、米主要株価指数のパフォーマンスの状況を示したものですが、NYダウ、S&P500、ナスダック総合の3指数は昨年末比で伸び悩んでいることが分かります。


 その一方、半導体関連銘柄で構成されるSOX指数の上昇が目立っています。


<図5>米SOX指数構成銘柄の昨年末比の騰落率(上位と下位銘柄)(2026年1月21日時点)
米国株:「TACO」トレード再現でさらなる株高につながるか?(土信田雅之)
出所:Bloomberg

 構成銘柄で大きく上昇しているのは、 インテル(INTC) や インテグリス(ENTG) 、 ノバ(NVMI) 、 ラムバス(RMBS) 、 マイクロン・テクノロジー(MU) などですが、いずれの株価も昨年末比で35%以上も上昇しています。


 昨年のような エヌビディア(NVDA) などのAIチップ銘柄を中心に買う動きから、部材や装置、メモリといった分野に物色の対象が広がっていることが寄与しています。


 同じく、中小型株で構成されるラッセル2000も強い動きとなっていますが、主力株が伸び悩む中で、中小型株に資金が流れている様子がうかがえます。


 冒頭で示した日足チャートでは、下落トレンドへの意識が強まっているものの、物色の動向を見る限りでは、米国株市場の地合いは悪くはないといえます。とはいえ、株価がさらに上昇して高値を更新していくには、TACOトレードによる目先の安心感だけでなく、堅調な景況感の持続や企業業績の成長が不可欠になります。


 来週は、 マイクロソフト(MSFT) や メタ・プラットフォームズ(META) 、 テスラ(TSLA) 、 アップル(AAPL) といったM7(マグニフィセント・セブン)銘柄をはじめ、 ボーイング(BA) や IBM(IBM) などの米主力企業の決算が予定されており、資金が再び主力株に向かい、循環物色のような格好で上昇基調を描けるかどうかが焦点になりそうです。


(土信田 雅之)

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