リタイアが迫るアラフィフ・アラ還世代、iDeCo加入は「もう遅い」と諦めていませんか?それは誤解です。2027年からの拠出限度額拡大や、70歳までの積み立て延長で、老後資金形成は大きく変わります。
アラフィフ・アラ還世代のiDeCo
これまで20~30代、アラフォー世代と、iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)の世代別活用術について順番に考えてきました。今回は、アラフィフ、アラ還世代のiDeCo活用術についてお届けします。
アラフィフ世代はリタイアがより具体的なイメージとして迫り始めます。この世代は、65歳までは働くイメージができている一方で、「自分たちは70歳まで働くことになるのではないか」と感じ始めているのではないでしょうか。
一方で、老後の生活が気になり始める中、「ここまでサボってきた分、最後こそ一気に老後のために資産形成をしたい」と考える人もいると思います(個人差はありますが)。
そして、もう一つ上のアラ還世代は、一般的な定年退職年齢である60歳や、現在のリタイア年齢として想定される65歳が含まれます。iDeCoは65歳まで加入可能であり、会社は基本的に65歳まで働くことができます。60歳前半のおおむね8割は働いているとされており、アラ還世代はもはやリタイア世代ではないのです。
今回は、こうしたアラフィフ、アラ還世代のiDeCo活用について考えてみます。
iDeCoで老後の余裕づくりを
私は50代前半から定年直前の方向けの企業内セミナーでお話しすることが多いのですが、この世代は「老後のお金のことはもうどうしようもない…」という諦めムードがあります。そこで私がよく言うのは「老後準備のスタートに『もう遅い』はない!」ということです。
もし、リタイアまでに100万円の資産を上乗せすることができたとしたら、老後に100万円分の「できること」を増やせます。予算10万円の一泊旅行も、10カ所行くことができます。
若い時期からiDeCoをスタートした人に比べれば、積み上がる資産は小さいかもしれません。しかし、気にする必要はありません。「このまま、諦めて準備をしなかった老後」と、「ここからリタイアまで少しでも積み上げて迎える老後」とでは、大きな違いが生まれます。
50歳からのiDeCo加入でも、まったく問題ありません。現行制度では、会社員の場合、月2.0万円もしくは2.3万円が拠出限度額です。仮に50歳から65歳までの15年間、月2.0万円を拠出したとしましょう。年24万円×15年で357万円の老後資産確保につながります(月171円の事務手数料を控除。以下同じ)。
これに年4.0%の運用利回りを乗せると、資産は488万円の資産に育ちます。これなら、一泊二日の旅行10回どころか、もう少しできることが増えそうです。
そして、2027年1月より、iDeCoの拠出限度額が月々6.2万円まで拡大します(法律は2026年12月に切り替わり、実際の掛金拠出が2027年1月から対応する)。
仮に企業年金のない会社員の人が、50歳から65歳までの15年間、この上限額で拠出したとすると、年74.2万円の15年で1,113万円まで元本を積み増せます。
アラフィフのがんばりは効果も大きいものがあります。所得税・住民税の軽減メリットです。10年あるいは15年後に自分が使うお金を「iDeCo口座に入金する」というだけで、目の前の税負担を軽くできるわけです。アラフィフ、アラ還でも、iDeCo活用の余地が大きいことが分かります。
もちろん、限度額が上がったからといって上限まで出す必要はありません。月2.0万円のような金額でもいいのです。先ほど言ったように、50万円でも100万円でも、上乗せ資金があれば老後にできることは一気に増えます。自分の老後のための上積みはどこまでできるか、じっくり考えてみてください。
公的年金の繰り下げが前提だが、70歳までiDeCo積み立てが可能に
2027年の限度額引き上げに合わせて実施予定となっているのが、iDeCoへの積み立てが70歳まで可能になるという改正です。
また、これまでのiDeCoは、厚生年金保険料を納めている人や、国民年金の任意加入者(未納期間を埋めている人)しかiDeCoの加入ができませんでした。
今回の改正により、原則として誰でもiDeCoに加入できるようになります。
65歳到達以降のiDeCo加入については、70歳まで延長されます。実施予定は2026年12月からとなっており、実際に掛金を振り込むようになるのは2027年1月からとなる見込みです。
ただし、成立した条文を読むと、老齢基礎年金分の繰り下げが、65歳以降もiDeCoに加入する要件としているようです。「公的年金を受け取りながら、iDeCoに積み立てをして老後資金を増やす」というのは、原則として認められないということになります。
他方、65歳から厚生年金は受け取りつつ、iDeCoの積み立てをすることはできるように理解できます。老齢厚生年金はもらい、老齢基礎年金は繰り下げるような、それぞれ別にもらうパターンは今までマニアックな選択肢でしたが、老齢基礎年金は受け取らずに、以下のような活用法が考えられそうです。
- 厚生年金分は65歳からもらう
- 仕事は働いている
- iDeCoに65歳から70歳まで積み立てる
具体的な取り扱いについては、まだ政省令が出て確定していないので、最終的には条件が変更される可能性もあります(原則は法律に定めた通りになりますが)。
60代の雇用条件が今、一気に改善し始めています。特に60代前半の待遇が改善し、その流れで60代後半でも働ける会社が増え始めています。これは人材不足の影響が大きいため、今後も進展が期待できます。
もし、60代の雇用条件がよく、iDeCoへの拠出が継続可能であったら、積み立ての継続を検討してみてください。
高齢期の人生の多様性に配慮しつつ拡大するiDeCo
iDeCoの大きな魅力の一つは、「60歳から受け始められる」という点です。一度iDeCoから老齢給付を受け取ってしまうと、それ以降は加入できなくなりますが、早く受け取る選択肢自体は60歳のまま変更されていません。
この点は、高齢期の多様な人生設計に配慮しているものと思われます。60歳で完全リタイアを望む人もいます。追求したい趣味があったり、体調が優れない、といった場合です。この場合は70歳まで積み立てをする必要はなく、iDeCoを60歳で受け取ってもかまいません(60歳受け取りには企業型およびiDeCoに10年以上加入しているなどの要件がありますが、多くの人がクリアできていると思います)。
一般に「60歳まで受け取れないから、老後のためにしか使えない」とiDeCoのデメリットが説明されます。しかし、アラフィフ、アラ還世代で、子どもの誕生が遅かった世代などは、「教育費としてのiDeCo活用」という選択肢がありえます。
例えば、私の場合、私が65歳のときに下の娘が大学を卒業予定です。この場合、「60歳でiDeCoを受け取り、子どもの学費に回す」という使い方もできるわけです。
とはいえ、本来老後のために用意していた資金を切り崩すころにもなるため、やはり「iDeCoは老後のために使う」としたいところではあります。
アラフィフ、アラ還の運用戦略はどうする?
最後に少しだけ、アラフィフ、アラ還世代の運用戦略について触れておきます。
企業年金運用では、社員とOBの構成を見つつリスク許容度を検討し、それを運用方針に反映させます。例えば現役世代よりOB世代のほうが多い企業年金は、支払い責任の重さが増すため、高いリスクを取らないようにします。
個人の運用においても、リタイア直前にリーマンショック級の急落が生じ、想定外の時価の減少が起きれば、老後のマネープランに支障が出ます。
若い世代では「iDeCoは全額投資信託」「長期投資だから利益確定は不要」という人が多いかもしれません。しかし、リタイアが近づいてきた段階では、少しリスク資産の割合を引き下げていくのも一考です。
年代に応じて自動的に安定運用に切り替えていく「ターゲットイヤーファンド」では、リタイア時期を意識したターゲットイヤーには安定運用に切り替えます。
米国の401(k)プランでは、ターゲットイヤー型投資信託の利用が一般的で、本人は運用指図を行わなくてもリスクを抑えていく切り替えが自動実行されています。
ターゲットイヤーファンド以外の投資信託を保有している場合、どこまでリスクを落とすかは最終的には個人の判断となりますし、自ら運用指図を行う必要があります。
「手元に十分な預貯金を持っているのでiDeCoはギリギリまで全額投資継続」でもいいですし、「十分に値上がりしたと思うので、数割くらいは元本確保型商品に切り替えておこう」というのもアリです。自分なりに納得いく決断をしておいてください。
また、リスクを抑えるといっても、タイミングの判断も必要です。
振り返ってみると、2025年末まで望外の株価上昇が生じたわけですから、リタイアが近づいている世代は、安定運用の切り替えを考えてもいいと思います。
アラフィフ、アラ還世代は「受け取りも意識した運用」が求められます。これも検討してみてください。
(山崎 俊輔)

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