日本の10年債利回りが1999年以来、約27年ぶりの高水準となる2.3%台に急上昇、金利が上がると借り入れコストが上がるため、一般的には不動産株にはマイナス要因ですが…大手不動産株は上場来高値(最高値)ラッシュ!時価総額トップの三井不動産は1月13日、2位の三菱地所と3位の住友不動産は1月15日に最高値を更新しました。


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今回のお題:金利上昇なのに最高値の大手不動産株

 東京都心のオフィス市況が想定より良いうえ、優良物件を保有することに伴うインフレ恩恵業種としての評価が各大手不動産の株価に反映されています。大手不動産株は似た値動きをしますが、その振幅には大きな差も。

昨年の年間騰落率でいえば、三菱地所(8802)が+74%、三井不動産(8801)が+40%と三菱地所が圧勝でした。株価指標面ではどうなのか?今後のビジョンで有望なのは?ここから買うならどっち?この2社で比べてみます。


三菱地所(8802) 三井不動産(8801)
三菱地所 vs 三井不動産 金利上昇なのに最高値の大手不動産株 買うならどっち?<br />

三菱地所 vs 三井不動産 金利上昇なのに最高値の大手不動産株 買うならどっち?<br />

 上記両社の株価のポイントや株価データを見ながら、双方を比較し、皆さんの相場観で購入検討するならどちらにしますか?


A:三菱地所(8802)

三菱地所 vs 三井不動産 金利上昇なのに最高値の大手不動産株 買うならどっち?<br />
出所:筆者作成 昨年初来週足

ここがGOOD

丸の内、大手町エリアで強大なプレゼンス

 オフィスを中心とした賃貸利益が営業利益全体の半分以上と、総合不動産デベロッパーの中でも特にオフィス色が強い三菱地所。延床面積の大きい物件では、「新丸の内ビル」、「丸の内パークビル」、「大手町フィナンシャルシティ グランキューブ」などを保有しています。インフレ期待が高まるなか、より良いものがより高く評価される時代になると予想されます。その意味では、丸の内、大手町など超プライムエリアで質の高いオフィスを多く有する三菱地所が“勝ち組”評価を受けるのは当然かもしれません。


 東京のオフィス市況は、すこぶる良好なようです。都心5区の平均賃料は07年3月を100として25年9月が105。これを見るとさほど上がっていませんが、三菱地所の丸の内事務所の平均賃料は驚異の144%。さらにインフレ期待の高まりで、テナントとの賃料改定の増額妥結率は今期ほぼ100%、増額幅も5~20%となっているようです。オフィス賃料の勢いある上昇の恩恵を受けやすい点がGOODポイント!既存物件以外でも、新規の開発案件の収益寄与も見込まれます。最大のカタリストは、2028年に竣工予定の「Torch Tower」。東京駅直結、そして日本一の高さを誇るビッグプロジェクトです。


ROE10%目標に向け「自社株買い」重視

 三菱地所も三井不動産も、双方31年3月期に向けた長期ビジョンとしてROE10%をターゲットとしています。ROEは現在7.6%のため、10%というのはかなり挑戦的な目標にも見えますが、積極的な自社株買いで目標達成に突き進んでいます。20年3月期から26年3月期まで、直近7年で自社株買いは3,00億円。25年5月の本決算発表時に発表した自社株買い枠は1000億円と過去最大でした。


 年間で1,000億円の買付けは、1日当たりの売買代金から計算すると売買インパクトで“7営業日相当”と需給メリットも大きく発生します。27年3月期も1,000億円超の自社株買い枠設定が求められるし、おそらく設定してくると予想されます(設定しなかった場合は逆にネガティブサプライズ)。その原資についても、政策保有株(25年3月期末時点では時価2,920億円)の売却で捻出することが可能です。


ここが心配

自社株買い効果飲み込み、株価に割高感も

 金利上昇による借入コストの上昇で不動産株は金利上昇ネガティブ業種で、金利上昇メリット業種は銀行株というのが定石です。ただ、昨年10月の高市トレード開始以降、金利上昇で利ザヤ改善期待の銀行株と、インフレ期待の不動産株が同時進行する珍しい現象が続いています。不動産大手株は軒並み今年1月に上場来高値を更新!その中でも、昨年からの株価上昇率が最も高いのが三菱地所です。


 株価上昇ピッチがどこよりも早い結果、予想PERは大手不動産株で一番高い24倍台に(三井不動産、住友不動産は18倍台)。三菱地所は積極的な自社株買い(その後消却)によるEPS押し上げ効果もありますが、それを吸収するほどの株高になったということです。保有する不動産の含み損益も加味した企業価値(NAV)をまだ下回っているため、その間は自社株買いを重視する姿勢の様子。

配当は“累進配当”を掲げていますが、2030年度まで毎期原則1株+3円としており大きな増配は無さそうです。配当利回りは1.1%と、三井不動産の同1.8%や、日本株全体との比較で低い(物足りない)という印象は強い銘柄です。


三菱地所 レーダーチャート ※各指標の数値に基づき独自基準でスコア化
三菱地所 vs 三井不動産 金利上昇なのに最高値の大手不動産株 買うならどっち?<br />
出所:筆者作成

B:三井不動産(8801)

三菱地所 vs 三井不動産 金利上昇なのに最高値の大手不動産株 買うならどっち?<br />
出所:筆者作成 昨年初来週足

ここがGOOD

“ドル箱”オフィスビル多く保有

 東京都心の一等地である中央区日本橋エリアにオフィスビルを多数持っているほか、巨大複合施設の「東京ミッドタウン」は六本木、日比谷、八重洲に3箇所。オフィス市況は良好で、オフィスの増額賃料改定の増額妥結率は今期ほぼ100%、10%以上の増額幅獲得も大幅に増えているようです。31年3月期前後を目標とする中計では「EPS成長率+8%以上」を掲げていますが、日本橋や八重洲で大規模なオフィス開業など期待材料は控えます。


 新たな成長事業としては、アリーナ事業として25年3月期のLaLa arena TOKYO-BAYに続き、27年度以降で名古屋アリーナも開業予定。また、さらに先のビジョンとしてデータセンター事業に注力予定で、35年度までに総投資額で6,000億円を計画しています。三井不動産も三菱地所と同じROE10%ターゲットを掲げていますが、同社はROE計算の分子である利益拡大への意識が高いように思われます。


株主還元に拡大余地アリ!

 31年3月期前後でのROE10%以上を目標としており、自社株買いの継続など着実に進めています。自社株買いに関しては、今期は三菱地所の1,000億円枠が目立ちましたが、同社も570億円と高水準(前期と合算すれば1,000億円)。大手不動産株で自社株買いをいち早く始めたのが同社で、2018年8月から現在まで毎期必ず実施しています。


 還元の原資となる利益は、政策保有株の売却などで捻出することも可能です。同社では中計の中で“聖域なき売却”という言葉を使っていますが、これは目標に向けて固定資産や販売用不動産の売却をする決意表明。

外部に向けて売れなかった物件を、例えば同社がスポンサーの日本ビルファンドなどREITに売ることも可能です。利益を安定的に生み出せる点が強みといえるでしょう。総還元性向は「毎期50%以上」、配当性向は「毎期35%程度」かつ“累進配当”を数値目標として示しています。利益の拡大が見込まれるため、配当の積み増しも有力です。


ここが心配

収益構成のバランスの良さが裏目に?

 オフィスも強いですが、マンション分譲、マネジメント、施設営業と収益構成が分散。賃貸でいえば、オフィスだけでなく、商業施設、物流施設などにも分かれていて、まさに“バランス型”。特徴でいえば、商業施設に強いイメージはありますよね。「ららぽーと」「三井アウトレットパーク」のブランド力は強力です。


 本来、三井不動産は、バランスのとれた事業ポートフォリオに着目され、高い市場評価が付いてきた経緯があります…ですが、今の不動産株人気の背景にはインフレ期待があり、東京のオフィス賃料の上昇加速こそがカタリスト。それでいえば、三菱地所に割り負けしている要因はシンプルに”オフィスの濃さ”といえそうです。株価パフォーマンスは十分良好ですが、三菱地所や住友不動産が良過ぎるため、相対的には平凡に映るところ…。予想PERは18倍台と三菱地所よりは低いのですが、これも不動産株全体でいえば平均的(平凡)といえます。


三井不動産 レーダーチャート ※各指標の数値に基づき独自基準でスコア化
三菱地所 vs 三井不動産 金利上昇なのに最高値の大手不動産株 買うならどっち?<br />
出所:筆者作成

あなたなら、どっちを買う?

三菱地所/三井不動産 株価比較表
三菱地所 vs 三井不動産 金利上昇なのに最高値の大手不動産株 買うならどっち?<br />
出所:筆者作成

 それぞれの個性はありますが、つまるところ「どっちも良さそう」という2社。保有する不動産を時価で計算した企業価値のNAVでいえば両社とも1倍を下回っており、割安株という見方は最高値ながら可能です。

今期も両社とも自社株買い枠を設定してくれそうでもあって、「どっちでも良さそう」ですが…株価パフォーマンス差もあって配当利回り、そして株価位置的には“逆張り派”なら三井不動産でしょうか。ここから買うなら、三菱地所か三井不動産か、あなたならどちらを選びますか?


銘柄投票にぜひ参加してみてください

【銘柄を投票】三菱地所 vs 三井不動産 金利上昇なのに最高値の大手不動産株 買うならどっち?


各指標の説明 予想PER 1株当たり利益の何倍(何年分)まで株価が買われているかを示す指標。同業他社と比較する際に使われ、低いほど割安と判断します。 PBR 1株当たり純資産の何倍まで株価が買われているかを示す指標。同業他社と比較する際に使われ、低いほど割安と判断します。この数値が1倍を下回る企業に対し、東証は「1倍を上回るよう頑張れ」と指令を出しています。 配当利回り 今期の予想配当金ベースの利回りで、高いほど配当妙味が高いと判定します。定義はありませんが、3%以上なら配当利回りが高いと認識されています。 流動性 1日の売買代金がどれくらいあるか?(表では25日平均)を金額で表示しています。同数値が高いほど、機関投資家も大口の個人投資家もストレス無く参加できると考えられます。

(岡村 友哉)

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