米サイエンス・アプリケーションズ・インターナショナル(SAIC)は、国防総省、NASA、国土安全保障省などの米政府機関が主要顧客の防衛ITコンサル大手です。ITインフラ刷新、サイバーセキュリティ案件の受注拡大やM&Aにより10年間で株主資本は4.6倍となりました。

他方、株価は2.1倍の上昇にとどまっており、同業他社比でも割安な水準です。


米政府向け防衛ITコンサル大手、SAICに割安感(西 勇太郎...の画像はこちら >>

プロローグ

タローくん「最近、『SAIC』って会社の株が割安だって聞いたんだけど、どんな会社か知ってる?」


ユーちゃん「陸軍、海軍、NASAを半世紀支えてきた『政府向けITの職人集団』だよ。買収で高付加価値化が進んで、利益は10年で2.6倍」


タローくん「そんなに伸びてるのに株価は?」


ユーちゃん「株価純資産倍率(PBR)は過去より低くて割安。平均に戻れば170ドル、同業並みに戻っても144ドルくらい」


タローくん「なんでこんなに割安なの?」


ユーちゃん「政府案件って他の業界に比べたら地味だからなあ」


タローくん「SAICって『地味だけど超優秀で、しかもまだ評価されてない』ってことか」


ユーちゃん「そう、『クラスで目立たないのにテストは毎回90点取る生徒』みたいな会社」


タローくん「そういう子、だいたい卒業後にめちゃくちゃモテるんだよな」


陸軍、海軍、NASAを半世紀にわたってシステム面で支え続けてきた

  サイエンス・アプリケーションズ・インターナショナル(SAIC NASDAQ) (株価104.38ドル、時価総額47億1,000万ドル:1月26日終値)は米政府向け防衛ITコンサル大手です。国防総省(特に陸軍、海軍)、NASA、国土安全保障省などを主要顧客とし、ITインフラ刷新、サイバーセキュリティ案件などに携わっています。


 1969年に核物理学者のJ. Robert Beyster氏がカリフォルニア州サンディエゴで設立し、当初は科学研究・エンジニアリングの受託開発企業として事業を始めました。1970~1990年代には国防総省、情報機関、NASAなどの政府機関を顧客として軍事システム、宇宙技術、ITサービスなどの研究開発・システム統合で事業を拡大。


 2000年代には国防、情報、宇宙分野の大規模プロジェクトを多数継続受注できる体制を確立するとともに、サイバーセキュリティ、物流支援、システム統合などの領域にさらに事業を拡大しました。


 この事業拡大の結果、「システムを設計・開発する企業」と「そのシステムを運用・評価する企業」としての両方の役割を担えるようになってしまい、社内での利益相反の問題が表面化。


 この問題解決のため、2013年に会社分割を行い、「システムを設計・開発する企業」が レイドス・ホールディングス(LDOS NYSE) 、「システムを運用・分析評価する企業」がサイエンス・アプリケーションズ・インターナショナル(SAIC NASDAQ)となりました。


 2018年には宇宙関連や情報機関向けのシステム開発・分析評価に強みを有するEngilityを約25億ドルで買収して事業規模を拡大。


 2020年にはクラウド移行に強みを持つ ユニシス(UIS NYSE) の米国連邦政府向け事業部門を約12億ドルで買収し、連邦政府のクラウド移行需要を一気に取り込みに行きました。いずれの買収も高付加価値事業の獲得をもたらし、利益率の上昇につながりました。


10年間で利益2.6倍となり株価も上昇トレンド継続

 サイエンス・アプリケーションズ・インターナショナルの2015年1月期の売上高は38億8,500万ドルでしたが2025年1月期には74億7,900万ドルと1.9倍に増加しました。他方、当期純利益については売上高の増加率を上回る増加を示しており、2015年1月期の1億4,100万ドルから2025年1月期には3億6,200万ドルへと2.6倍になりました。


<サイエンス・アプリケーションズ・インターナショナルの当期純利益推移(2015年1月期以降)>
米政府向け防衛ITコンサル大手、SAICに割安感(西 勇太郎)
※2026年1月期は予想値出所:サイエンス・アプリケーションズ・インターナショナル資料などより楽天証券経済研究所が作成

 他方、株価も利益拡大に伴って上昇トレンドが継続しています。なお、イーロン・マスクが主導した政府効率化省(Department of Government Efficiency)という連邦政府の効率化・スリム化を進めるための新組織は、現時点では構想レベルで止まっている状況で、株価に大きな影響はありませんでした。


 ただ、行政を効率化していくという政策方針は生きており、古くからあるシステム運用系のビジネスには逆風となる一方で、データ統合、AI、クラウド案件には追い風となる可能性があります。


<サイエンス・アプリケーションズ・インターナショナルの株価推移(2015年1月期以降)>
米政府向け防衛ITコンサル大手、SAICに割安感(西 勇太郎)
※2026年1月期は直近値出所:サイエンス・アプリケーションズ・インターナショナル資料などより楽天証券経済研究所が作成

PBRが過去平均水準に回復すれば株価は170ドル

 サイエンス・アプリケーションズ・インターナショナルの過去10年間の業績変化を見ると、売上高が1.9倍に増加したのに対して営業利益は2.3倍、当期純利益率も2.6倍と増加ペースが売上高を上回りました。これは複数の買収で高付加価値事業の割合が高まったことによるものです。


 株主資本蓄積も順調に進んで4.6倍に達している中、時価総額変化は2.1倍にとどまっています。結果的にPBRは6.5倍から3.0倍へと低下しており、割安感が出ています。この割安感が解消され、PBRが過去10年間の平均水準である5.0倍にまで上昇した場合には、株価は170ドルとなります。


<サイエンス・アプリケーションズ・インターナショナルの業績推移(2015年1月期と2025年1月期)> (百万ドル) 2015年1月期 2025年1月期 変化(倍) 売上高 3,885 7,479 1.9 売上総利益 335 892 2.7 営業利益 240 561 2.3 当期純利益 141 362 2.6 株主資本等合計 345 1,577 4.6 時価総額 2,229 4,710 2.1 PBR(倍) 6.5 3.0 0.5 PER(倍) 16 13 0.8 ※時価総額は、2015年1月期は期末時点値、2025年1月期は直近値
出所:サイエンス・アプリケーションズ・インターナショナルの資料などより楽天証券経済研究所が作成

 今後も高水準の利益が継続する見通しです。他方で積極的な株主還元の継続と株主資本の減少が見込まれています。


 結果的に、株価水準がこのまま変わらない場合、PBRは上昇することとなりますが、それでも3倍台と過去水準に比して低い状況に変わりはない計算になります。


<サイエンス・アプリケーションズ・インターナショナルの業績予想> (百万ドル) 2025年1月期
実績 2026年1月期
予想 2027年1月期
予想 売上高 7,479 7,296 7,424 営業利益 561 - - 当期純利益 362 340 329 株主資本等合計 1,577 1,384 1,305 時価総額 4,710 4,710 4,710 PBR(倍) 3.0 3.4 3.6 PER(倍) 13 14 15 ※時価総額は直近値
出所:サイエンス・アプリケーションズ・インターナショナル、FactSetの資料などより楽天証券経済研究所が作成

経営・財務・政府コンサルティング同業他社比でPBRに割安感があり、解消されれば株価は144ドル

 サイエンス・アプリケーションズ・インターナショナルの比較対象に適する経営・財務・政府コンサルティングの上場同業他社には、レイドスHD(LDOS)、米 ブーズ・アレン・ハミルトン(BAH NYSE) 、米 CACIインターナショナル(CACI NYSE) 、米 パーソンズ(PSN NYSE) 、米 テトラ・テック(TTEK NASDAQ) 、米 FTIコンサルティング(FCN NYSE) 、米 ICFインターナショナル(ICFI NASDAQ) 、 三菱総合研究所(3636 東京) などがあります。


 これらの企業について、自己資本利益率(ROE)を横軸、PBRを縦軸とした散布図を作成すると、おおむね比例関係にあることが分かります。

その中で、サイエンス・アプリケーションズ・インターナショナルについては割安方向にずれており、この点から、株価に割安感があるといえます。


 この割安感が解消された場合のサイエンス・アプリケーションズ・インターナショナルのPBR(散布図の青破線に乗る水準)は4.1であり、相当する株価は144ドルです。


<主な経営・財務・政府コンサルティング企業のROEとPBRの関係>
米政府向け防衛ITコンサル大手、SAICに割安感(西 勇太郎)
出所:各社資料より楽天証券経済研究所が作成

<主な経営・財務・政府コンサルティング企業10社のROEとPBR> 社名 証券
コード 取引所 売上高 ROE PBR 百万ドル % 倍 Leidos
Holdings LDOS NYSE 16,662 29 5.6 Booz Allen
Hamilton BAH NYSE 11,980 91 13.4 CACI
International CACI NYSE 8,628 13 3.0 Science
Applications 
Int’l
SAIC NASDAQ 7,479 22 3.0 Parsons PSN NYSE 6,751 10 3.8 Serco Group SRP ロンドン 6,119 5 2.9 Tetra Tech TTEK NASDAQ 5,443 21 5.2 FTI
Consulting FCN NYSE 3,699 13 2.4 ICF
International ICFI NASDAQ 2,020 12 1.8 三菱総合
研究所 3636 東京 815 7 1.1 出所:各社資料より楽天証券経済研究所が作成

 また、これらの企業の予想配当利回りを比較すると、サイエンス・アプリケーションズ・インターナショナルは1.3%の利回り(1株当たり配当1.5ドルで計算)となっており、同業他社比でそん色ない水準です。また、2024年度には自社株買いを行っており、総還元性向は12.9%と他社を引き離す高水準でした。


<主な経営・財務・政府コンサルティング企業10社の配当および総還元利回り> 社名 証券
コード 取引所 昨年度 今年度 実績配当 総還元 予想配当 % % % Leidos
Holdings LDOS NYSE 1.1 4.4 0.8 Booz Allen
Hamilton BAH NYSE 2.0 7.9 2.4 CACI
International CACI NYSE 0.0 1.5 0.0 Science
Applications
Int’l
SAIC NASDAQ 1.4 12.9 1.3 Parsons PSN NYSE 0.0 0.2 0.0 Serco Group SRP ロンドン 2.8 9.3 1.5 Tetra Tech TTEK NASDAQ 0.5 0.5 0.7 FTI
Consulting FCN NYSE 0.0 0.2 0.0 ICF
International ICFI NASDAQ 0.0 2.5 0.0 三菱総合
研究所 3636 東京 3.2 4.5 3.3 出所: 各社資料などより楽天証券経済研究所が作成

 ここまで述べさせていただいた通り、サイエンス・アプリケーションズ・インターナショナルは今後も高水準収益継続が見込まれる中で、株価は過去実績比、同業他社比で割安感がある状況です。


(西 勇太郎)

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