2024年以降、日米金利差の縮小が続いた中で、円安が続きました。足元、日米協調で円安を止めようと画策しても、円高トレンドへの転換につながっていません。

日本から米国へ資金が流出することで、日本は世界に流動性を供給する役割を果たしています。その構造が継続する限り、円高トレンドへの転換は限定的となる可能性があります。


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ドル/円を動かす要因、「日米金利差」だけではない

 為替を動かす要因は無数にありますが、最も影響の大きい要因の一つは「日米金利差」といえます。


 日米金利差が拡大すると円安(ドル高)が進み、日米金利差が縮小すると円高(ドル安)が進む傾向が、過去20年以上にわたり顕著に見られてきました。


 ところが、2024年以降、日米金利差と為替の動きに、異変が出ています。日米金利差は縮小しているのに、円高が進みにくくなっています。


<ドル/円為替レートと、日米2年金利差の推移:2020年1月~2026年2月(2日)>
円安が止まらない!日米協調でも「1ドル=150円台」の攻防が続く理由(窪田真之)
出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

 日米金利差が縮小しても、円(日本)からドル(米国)へお金が出ていく流れは変わらないと思われ、それが円安(ドル買い)圧力として続いています。以下二つの要因が円安圧力として働いていると考えています。


【1】日本の貿易収支が構造的赤字に。トランプ関税によりさらに赤字拡大の可能性。
【2】対米直接投資の拡大により、金融収支赤字がさらに拡大する可能性。


 要するに日米金利差が縮小しても、国際収支統計において日本から出ていくお金が減らないと思われ、それが構造的な円安圧力となっています。


 解散総選挙の見通しも影響しています。

各メディアのアンケート調査で、自民党が大勝する可能性が出ています。財政拡張をともなう積極的な成長戦略がとられる見込みです。日本は大量にお金を供給し続け、それが日本からさらに海外にも還流する動きが続きそうです。それが円安圧力となります。


トランプ関税によって貿易収支・金融収支の赤字拡大の可能性

 トランプ関税がもたらす変化は、一時的ではなく構造的と考えられます。つまり米国は高関税国に転換し、それは元に戻ることはないだろうと想定されます。


 米国は巨額の関税収入を得たことにより、財政が一時的に黒字となりました。関税収入に財政が依存する形ができあがったと考えられます。こうなると、トランプ大統領退任後も、関税が引き下げられる可能性は低いと考えられます。


 日本にとって大きな構造変化をもたらします。まず、近年の日本の国際収支の変化をご覧ください。


<日本の国際収支(暦年ベース)、主要項目抜粋:2020年~2024年および2025年1-6月>
円安が止まらない!日米協調でも「1ドル=150円台」の攻防が続く理由(窪田真之)
出所:財務省「国際収支総括表」より楽天証券経済研究所が作成注:日本から見て資金が流出する項目を赤字、資金が流入する項目を黒字で表記。経常収支より上の項目は、プラスが黒字(資金流入)マイナスが赤字(資金流出)となる。経常収支より下は、プラスが赤字(資金流出)マイナスが黒字(資金流入)となる。

【1】日本の貿易収支が構造的赤字に。トランプ関税によりさらに赤字拡大の可能性


 日本は、戦後、巨額の貿易黒字を稼ぎ続けてきた国でした。

1964年と1980年に一時的に貿易赤字になったことはありますが、それ以外は黒字でした。


 ところが、近年は貿易赤字が定着しています。対米では貿易黒字を稼いでいるものの、原油ガスの輸入により対中東で貿易赤字が続いているからです。今後、トランプ関税の影響によって対米黒字が減少すると、トータルで貿易赤字が拡大する可能性があります。


 日本の貿易収支が構造的な赤字体質に変わったのは2011年以降です。東日本大震災後に、原発が停止して火力発電用のLNG輸入が増加したためです。2015年、2020年など、原油価格が大きく下落した年は小幅の黒字になりますが、それ以外の年は貿易赤字が続いています。


 ただし、構造的な貿易赤字国の日本も、対米では貿易黒字を続けています。トランプ政権はその点を問題視して日本に15%の相互関税・自動車関税を課しました。今後、トランプ関税の影響で、対米黒字が減り、トータルで日本の貿易赤字が拡大する可能性があります。


 日本は、サービス収支でも構造的な赤字が続いています。インバウンド(訪日外国人観光客)消費によってサービス黒字を稼いでいますが、それ以上にデジタル赤字(クラウドサービスなど米国製デジタルプラットフォームを利用する料金の支払い)が大きく、トータルでサービス収支も構造的に赤字です。


【2】対米直接投資の拡大により、金融収支赤字がさらに拡大する可能性


 対外純資産が世界第2位の日本は、海外からの利息・配当金によって、毎年巨額の所得収支黒字を稼いでいます。但し、その大半が、そのまま海外への直接投資に使われ、国内には還流していませんでした。


 今後、トランプ関税の影響で、日本企業は対米投資をさらに増やす必要に迫られます。日本政府が、トランプ政権に対して5,500億ドル(約80兆円)の対米投資を約束した影響も出ます。今後、所得収支を上回る直接投資が必要になる可能性もあります。


 1月23日に一時1ドル=159円台まで円安が進むと、米連邦準備制度理事会(FRB)がレートチェックを行い、日米協調して円安を防ぐ構えを見せました。これを受けて、一時的に円高が進みました。ただし、円高は一時的となりそうです。日本から米国などに資金が流出する流れは変わらないと思われるからです。


当面のドル/円見通し

 私のメインシナリオでは、米景気ソフトランディングを想定しています。トランプ関税の影響で景気減速が見込まれるものの、景気後退は回避すると予想しています。米景気ソフトランディングを前提に、当面、1ドル=150~160円程度のレンジで推移する可能性を想定しています。


 トランプ関税の影響が、構造的な円安要因として働きます。日米金利差の縮小が円高要因となるものの、トランプ関税が円安要因となり、1ドル=150円台の攻防が継続する可能性が指摘されます。


 それでは、どのような時に、円高急伸するでしょうか?米国景気が急激に悪化して、FRBが大幅利下げを実施する時には、円高が急伸すると予想されます。ただし、現時点でその可能性は低いと判断しています。


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(窪田 真之)

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