年初の米国株式市場は循環物色やAI投資の選別を伴いながら底堅いスタート。S&P500は1月に最高値を4度更新し、「1月バロメーター」は今年の強気相場継続を示唆しました。
循環物色を伴い底堅く発進!1月にS&P500は最高値を4度更新した
米国株式市場ではS&P500種指数(S&P500)が1月に最高値(終値)を4度更新し、2026年1月の年初来騰落率は+1.4%で着地しました(1月30日)。
長期市場実績に基づく経験則として知られる「*1月バロメーター(January Barometer:1月の株式市場の動向がその年一年間の方向性を示すという、米国株式市場、特にS&P500において知られるアノマリー)」があります。
これによると、1950年以降に1月がプラスで終わった年のS&P500は、年間リターンが平均+16.9%と高水準となっており、実際に年間リターンがプラスとなった確率は89%にも達し、「年初の値動きは年間相場の方向性を占う材料になりうる」として注目されてきました。
2026年のS&P500の1月騰落率は+1.4%(1月30日時点)となり、市場には一定の安心感が広がりました。
こうした中、業種別に見た資金フローの変化、すなわちセクター別の循環物色にも注目です(図表1)。
図表1:業種別株価指数に見る「セクター物色」の現在地(年初来騰落率)
年明けの年初来騰落率で比較すると、相場の底堅さを主導したのは「エネルギー」「素材」「資本財」といった景気敏感株となっています(2月2日時点)。
一方、2025年11月以降に意識されてきた人工知能(AI)インフラ分野(データセンターなど)の過剰投資や資金調達不安を背景に「IT(情報技術)」や「公益事業(電力など)」などは伸び悩み、「金融」もトランプ政権による消費者信用向け金利抑制策による不透明感で低調となりました。
フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数:フィラデルフィア証券取引所が算出・公表している、半導体の設計、製造、流通、販売を手掛ける主要30銘柄で構成される株価指数)は、AI需要の堅調を背景に高機能メモリー半導体株が好調を持続。
先週末にトランプ大統領が、新米連邦準備制度理事会(FRB)議長に、2006~2011年、バーナンキFRB議長のもとでFRB理事を務めた経験があるケビン・ウォーシュ氏を指名したことによる思惑が交錯し、相場の上値が重くなる場面もありました。
世界経済見通し上方修正と金融環境改善が株高傾向を下支え
1月の米国市場で「景気敏感株」が相対的に優勢となった背景には、米国経済を軸に世界経済の底堅さが一段と明確になってきた点が挙げられます。
実際、国際通貨基金(IMF)が1月19日に公表した最新版の「世界経済見通し(World Economic Outlook-January 2026)」では、2026年の米国、ユーロ圏、日本、中国の実質成長率が、いずれも昨年10月時点の見通しから上方修正されました(図表2)。
図表2:IMFは2026年の世界経済見通しを上方修正した
世界全体の実質成長率は10月時点の+3.1%から+3.3%へと引き上げられました。IMFの経済見通しの変化は、欧州を中心とする機関投資家の投資行動(アセットアロケーション)に影響を与えやすいことで知られています。
実際、「世界のファンドマネジャー調査(1月)」(BofAが実施する機関投資家向け月次調査)を見ると、「12カ月後の世界景況感」に関する回答平均では、「ノーランディング予想」(世界経済が減速せず成長し続けると予想)が47%と過去3年で最高水準に達し、「リセッション予想」(世界経済が景気後退に直面すると予想)の比率は5%と低水準にとどまりました。
中でも、米国経済の実質成長率見通しの上方修正についてはIMFが初めて「AI関連の設備投資」や「トランプ政権の減税策」の効果に言及した点が注目されました。
一方、米国株式の底堅さを下支えた要因として、2025年9月以降の3回にわたる利下げ(金融緩和)や社債市場のスプレッド縮小(リスク許容度改善)がもたらしてきた「金融環境の改善」も見逃せません。
シカゴ連邦準備銀行が毎週発表する高頻度データとして注目される「金融環境指数(Financial Condition Index)」は、1月下旬で改善傾向を示しており、株式市場のリスク許容度(市場センチメント)を上向かせてきました(図表3)。
図表3:金融環境の改善傾向が「株式市場の強気相場」を下支え
1月30日に指名されたケビン・ウォーシュ新FRB議長が「金融当局の独立性」を維持しつつ、雇用情勢やインフレ動向次第で、一段の利下げを示唆する見方が強まれば、好材料となります。ウォーシュ氏が、2025年11月25日付けのウォール・ストリート・ジャーナル紙に「AIは生産性向上に寄与するため、ディスインフレ要因である」と主張する内容を寄稿している点に注目です。
シカゴ先物市場で取引されるFF金利先物市場における政策金利見通し(FEDウオッチ)は、2026年は6月と12月に2回の追加利下げが実施される確率を約9割とみています。
2桁増益と最高益更新予想を前提にしたS&P500のレンジ予想と上値余地
これまで述べてきたファンダメンタルズ動向(景気拡大と金融環境の改善)を前提にすると、今後は企業業績の推移が株価指数の方向性を左右しやすい局面となります。市場参加者の視線はすでに2026年通年の相場見通しに移っています。
図表4は、S&P500指数ベースの1株当たり利益(EPS:1株当たり利益/時価総額加重平均で算出)の実績と、市場予想平均(2025~2027年はアナリストによるボトムアップ予想平均)を示したものです。
2025年のEPSは前年比11.9%増益で過去最高益を更新して着地。2026年も+15.6%、2027年も+14.6%と力強い2桁増益と最高益更新が継続すると予想されています。
AI分野のインフラ投資拡大に加え、AIの社会実装である「AIエージェント」や「フィジカルAI」が普及するにつれ、産業全体の生産性改善(利益率改善)が進み、企業収益や利益の拡大に寄与する効果が期待されています。
図表4:2026年末に向けたS&P500のレンジ予想
1月末時点のS&P500を基に試算した予想株価収益率(PER)は、2026年予想EPSを前提にすると約22.1倍、2027年予想EPSを前提にすると約19.3倍となります。
市場は常に「Forward Looking」(半年から1年後の業績動向を織り込む)とされる特性があります。図表4の示すとおり、2026年末にかけて2027年予想EPSをベースとした予想PERが23倍程度まで拡張すると想定すると、相場のモメンタム好調次第ではS&P500は8,000ポイント到達(2027年予想EPS359.54×想定PER23倍)が射程に入ってくる可能性があります。
2025年に続き、2026年、2027年も、2桁増益と最高益更新が継続すると、S&P500の7,000ポイント到達は時間の問題で「通過点」となり、需給の一時的悪化や株価変動を消化しつつ、2026年末には2027年の利益予想水準を先取りする形で強気相場が持続すると見込まれます。
とりわけ、AIの普及、利活用、社会実装を通じた産業全体の生産性向上期待が高まれば、相対的に高めの予想PERが許容される市場センチメント改善も期待可能です。実際、2025年第3Q(7-9月期)の非農業部門の労働生産性の伸び(労働省発表)が前年同期比+4.9%と「2年ぶりの高い伸び」となったことが象徴的なマクロ指標として注目されました。
リスク要因は「ドンロー主義」と呼ばれるトランプ劇場による波乱
もっとも、2026年も昨年に続き「トランプ劇場」が市場のリスク要因(株価変動要因)となる構図は変わらないとみられます。実際、年初は1月3日のトランプ政権による「ベネズエラ攻撃」や、1月中旬の「グリーンランド領有主張」を巡る欧米間の摩擦が投資家心理を冷やし、株式相場の上値を抑える展開となりました。
これらの動きは、2025年末に示された「国家安全保障戦略(NSS)」に沿った対外強硬策と位置付けられています。
トランプ大統領は、自身の名である「ドナルド」と、北中南の米大陸を含む西半球から敵対勢力を排除する19世紀のモンロー主義を掛け合わせた「ドンロー主義」(ドンロー・ドクトリン)を掲げています。同大統領は、米国の国益、安全保障、影響圏拡大を優先し、とりわけ「西半球」における主導権確保を「力は正義なり」との思いで重視する考え方です(図表5)。
図表5:「ドンロー主義」が突き動かす大統領の言動は地政学リスク
トランプ大統領は「世界秩序は力こそ正義(The world respects strength)」と公言し、外交・安全保障分野での対外圧力や軍事力を前面に出す姿勢を鮮明にしています。
例えば、デンマーク領グリーンランドの領有権や安全保障を意識した強硬発言では、反発した欧州8カ国に対して関税引き上げを示唆し、北大西洋条約機構(NATO:北大西洋両岸の32カ国が参画する集団防衛機構=軍事同盟)内での緊張を高めました。
その結果、欧州投資家の「米国資産売り」の懸念が浮上し、1月20日にはS&P500のドローダウン(直近高値からの下落率)がマイナス2.6%に達しました。
また、反米左派政権のベネズエラ統治や、石油供給遮断で経済的困難に直面するキューバに対して「政権転覆」を示唆する強硬姿勢は、米国近海のカリブ海地域の不安定化を招き、「キューバ危機の再来」となれば市場の変動要因となりやすい状況です。
11月の中間選挙を見据え、トランプ政権が対キューバ強硬策を示唆し、ヒスパニック層の支持拡大を狙うのが目的…との見方もあります。トランプ陣営のマルコ・ルビオ国務長官の父母がキューバからの難民であり、反米独裁国のキューバに対する強硬策で存在感を強めています。
一方、国内で暴動による死傷者が増加している、イランに対するトランプ政権による軍事的威圧は、イスラエルや親米中東諸国における、自己のファミリービジネスの拡大を狙うトランプ大統領の狙いもあります。ホルムズ海峡の緊張を高め原油価格上昇を通じてインフレ懸念を再燃させると市場のリスクオフ(リスク許容度低下)を誘発しかねません。
なお、「ドンロー主義」の本質は、大統領自身が「G2(米国と中国の二大国が経済・安全保障の両面で世界を主導する構想)」と位置付け、安全保障の中核とする「対中国覇権争い」(チャイナ・デリスキング)との見方があります。中国の石油輸入量の約3割をベネズエラとイランで占めるとされます。
米国は中国の台頭抑制に向け、同盟国の防衛費負担増加を進めつつ抑止力拡充を進める一方、貿易交渉がレアアース供給で劣勢となった対中ディール(交渉)を有利に進めるため、石油供給をカードに対中圧力を一段と強める可能性があります。
とりわけ、11月3日の中間選挙を控えて支持率が伸び悩む中、トランプ大統領が「建国250周年」(7月4日:独立記念日)に向けて国威発揚を目的とした対外強硬策で暴走すると、地政学リスクを巡る不確実性が増幅し、株式市場の変動を恒常化させる可能性を警戒せざるを得ません。
(香川 睦)

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