コンサル大手の三菱総合研究所は、行政DXの需要急拡大や金融機関システム開発需要伸長といった追い風の中、過去10年間で売上高を1.4倍、当期純利益を1.7倍に伸ばしています。株主資本が1.9倍に増加したものの、時価総額は1.6倍増加にとどまっていることと、同業他社比較の観点から、株価には割安感があります。
プロローグ
タローくん「政府向けコンサルティング大手の三菱総研って最近どうなの?」
ユーちゃん「AIや行政DXの大型案件が増えて、受注単価も利益も株価も全部上昇中。昔は調査が中心だったけど、今は行政DX、ビッグデータ分析、AI活用といった大規模案件が主役だよ」
タローくん「へぇ、割高になってそう」
ユーちゃん「むしろ割安。PBRは1.1倍で株価は5,000円割れだけど、同業並みに評価されれば株価は1万円台もあり得る」
タローくん「そんなに?」
ユーちゃん「財務レバレッジも低いから、これを高めれば1,000億円以上の追加資金を使える可能性もある」
タローくん「つまり伸びしろがあるってこと?」
ユーちゃん「そう。AI案件で伸びて配当も高い上、財務は健全」
タローくん「優等生すぎるね!」
ユーちゃん「そのうち「三菱総研に相談するAI」とか出るかもね」
AI関連など大規模案件の増加で業績拡大
三菱総合研究所(3636 東京) (株価4,940円、時価総額778億円:2月3日終値)は政府関連コンサル大手で、金融機関向けITシステム開発なども行っています。三菱グループの創業100年を記念して民間主導での社会開発・研究を目的とし、グループ傘下企業の出資で1970年に設立されました。
2004年以降、三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)のコンピューター受託計算部門であった三菱総研DCSの株式を80%譲受し、コンサルティングとITシステム開発を二本柱とする現在の事業体制となりました。
コンサルティング事業の柱である政府関連事業の2025年9月期における大規模受注案件は、総務省の「省人化・省力化による地域社会課題の解決に資する通信システムを用いたAI・自動運転等の検証に関する調査研究の請負」(28億円)、法務省の「戸籍情報連携システム等の工程管理等支援の請負」(9億円)、厚生労働省の「介護保険総合データベース等介護関連システムの改修に係る工程管理支援」(8億円)などです。
案件当たりの平均受注単価は1億円でした。(出所:調達ポータル)
比較のために8期前の2017年9月期における大規模受注案件を見てみると、総務省の「放送コンテンツ海外展開基盤総合整備事業の運営の請負」(10億円)、経済産業省の「中小企業実態基本調査の実施及び結果検証」(3億円)、財務省の「第4次通関情報総合判定システム(CIS)の設計・開発等に係る追加業務支援」(1億円)などでした。
また、案件当たりの平均受注単価は4千万円でした。
大規模受注案件と平均受注単価の変化から明らかなとおり、過去8年間で案件金額単価は大きく増加しました。これは、かつては個別政策の調査研究を主とした政府案件が太宗であったところ、近年は行政DX、ビッグデータ分析、AI活用といった大規模案件が増えている実態を反映した結果と言えます。
純利益は高水準、株価は上昇トレンド
三菱総合研究所の当期純利益は2019年9月期までは30億円台で推移していましたが、行政DX、ビッグデータ分析、AI活用といった大規模案件が増えていく中、2020年9月期以降は50億~80億円と一段高い水準で推移するようになりました。
<三菱総合研究所の当期純利益推移(2017年9月期以降)>
当期純利益の増加に合わせて株価も上昇トレンドが継続しています。
<三菱総合研究所の株価推移(2017年9月期以降)>
業績拡大も、PBRは小幅に低下
三菱総合研究所の過去8年間の業績変化を見ると、売上高が1.4倍、営業利益も1.4倍、当期純利益は1.7倍に増加しました。株主資本蓄積も順調に進んで1.6倍に達しており、それに合わせて時価総額も1.6倍となっています。
ただし過去8年間の平均PBRは1.2倍なのに対し現在のPBRは1.1倍と小幅ながら低下しています。この割安感が解消され、PBRが1.2倍にまで上昇した場合には、株価は5,700円となります。
<三菱総合研究所の業績推移(2017年9月期以降)> (億円) 2017年9月期 2025年9月期 変化(倍) 売上高 895 1,215 1.4 売上総利益 200 287 1.4 営業利益 57 80 1.4 経常利益 63 97 1.6 当期純利益 38 64 1.7 株主資本等合計 437 719 1.6 時価総額 539 778 1.6 PBR(倍) 1.2 1.1 - PER(倍) 14 12 - ※時価総額は期末時点値、2025年9月期だけは直近値
出所:三菱総合研究所の資料等より楽天証券経済研究所が作成
ちなみにセグメント別では、コンサルティング事業の増益が全体の増益に直結しています。
<三菱総合研究所のセグメント別業績推移(2017年9月期と2025年9月期)> (億円) 2017年9月期 2025年9月期 変化(倍) 売上高 895 1,215 1.4 シンクタンク・
コンサルティングサービス 327 471 1.4 ITサービス 567 744 1.3 経常利益 63 97 1.6 シンクタンク・
コンサルティングサービス 20 57 2.8 ITサービス 41 40 1.0 経常利益率 7% 8% - シンクタンク・
コンサルティングサービス 6% 12% - ITサービス 7% 5% - 出所:三菱総合研究所の資料等より楽天証券経済研究所が作成
2026年9月期、2027年9月期はともに高水準の売上高と利益を維持する見通しです。株価水準がこのまま変わらなければ、2027年9月期にはPBRが0.9倍まで低下する計算となります。
<三菱総合研究所の業績予想> (億円) 2025年9月期
実績 2026年9月期
予想 2027年9月期
予想 売上高 1,215 1,220 1,291 営業利益 80 75 - 経常利益 97 90 - 当期純利益 64 58 58 株主資本等合計 719 793 872 時価総額 778 778 778 PBR(倍) 1.1 1.0 0.9 PER(倍) 13 14 14 出所:三菱総合研究所、FactSetの資料等より楽天証券経済研究所が作成
PBRの割安感が解消されれば株価は10,500円に
三菱総合研究所の比較対象に適する経営・財務・政府コンサルティングの上場同業他社には、 レイドス・ホールディングス(LDOS) 、米 ブーズ・アレン・ハミルトン(BAH NYSE )、米 CACIインターナショナル(CACI NYSE) 、米 サイエンス・アプリケーションズ・インターナショナル(SAIC NYSE) 、米 パーソンズ(PSN NYSE) 、米 テトラ・テック(TTEK NASDAQ) 、米 FTIコンサルティング(FCN NYSE) 、米 ICFインターナショナル(ICFI NASDAQ) などがあります。
これらの企業について、ROEを横軸、PBRを縦軸とした散布図を作成すると、概ね比例関係にあることがわかります。その中で、三菱総合研究所については大きく割安方向にずれており、この点から、株価に割安感があると言えます。この割安感が解消された場合の三菱総合研究所のPBR(下図の青破線に乗る水準)は2.2倍であり、相当する株価は10,500円です。
<主な経営・財務・政府コンサル企業のROEとPBRの関係>
<主な経営・財務・政府コンサル企業10社のROEとPBR> 社名 証券
コード 取引所 売上高 ROE PBR 億円 % 倍 Leidos Holdings LDOS NYSE 25,275 29 5.6 Booz Allen Hamilton BAH NYSE 18,284 91 13.4 CACI International CACI NYSE 12,921 13 3.0 Science Applications Int’l SAIC NASDAQ 11,402 22 2.9 Parsons PSN NYSE 10,240 10 3.8 Serco Group SRP ロンドン 9,280 5 2.9 Tetra Tech TTEK NASDAQ 7,826 21 5.2 FTI Consulting FCN NYSE 5,611 13 2.4 ICF International ICFI NASDAQ 3,064 12 1.8 三菱総合研究所 3636 東京 1,154 7 1.1 出所:各社資料より楽天証券経済研究所が作成
なお、これらの企業の予想配当利回りを比較すると、三菱総合研究所は3.3%の利回り(一株当たり配当165円で計算)となっており同業他社中最も高くなっています。
<主な経営・財務・政府コンサル企業10社の配当及び総還元利回り> 社名 証券
コード 取引所 2024年度 2025年度 実績配当 総還元 予想配当 % % % Leidos Holdings LDOS NYSE 1.1 4.4 0.8 Booz Allen Hamilton BAH NYSE 2.0 7.9 2.4 CACI International CACI NYSE 0.0 1.5 0.0 Science Applications Int’l SAIC NASDAQ 1.4 12.9 1.3 Parsons PSN NYSE 0.0 0.2 0.0 Serco Group SRP ロンドン 2.8 9.3 1.5 Tetra Tech TTEK NASDAQ 0.5 0.5 0.7 FTI Consulting FCN NYSE 0.0 0.2 0.0 ICF International ICFI NASDAQ 0.0 2.5 0.0 三菱総合研究所 3636 東京 3.2 4.5 3.3 出所: 各社資料等より楽天証券経済研究所が作成
三菱総合研究所は今後も高水準収益継続が見込まれる中で、株価は過去実績比、同業他社比で割安感があります。
財務レバレッジが他社比で低く、ROEに上昇可能性
前述の通り、三菱総合研究所の現在のROE12%に対してPBR1.1倍は割安であり、PBR2.2倍が、割安感が解消された水準です。
三菱総合研究所のROEが今後さらに高まればPBRの適正水準もさらに高まるわけで、さらなる株価上昇につながります。ここでは、三菱総合研究所のROEを、同業他社との比較を通じてより詳細に分析し、さらなるROE上昇の可能性を検討してみたいと思います。
ROEを分析する際には、
ROE(当期純利益÷株主資本) = 当期純利益率(当期純利益÷売上高) × 総資産回転率(売上高÷総資産) × 財務レバレッジ(総資産÷株主資本)
の3要素に分解する手法(デュポン分析)を使用するのが一般的です。このやり方で経営・財務・政府コンサル企業10社についてROEを分解した結果を下表に示しました。
<主な経営・財務・政府コンサル企業10社のデュポン分析> 社名 ROE 当期純利益率 総資産回転率 財務レバレッジ % % 回 倍 Leidos Holdings 29 8 1.3 3.0 Booz Allen Hamilton 91 8 1.7 6.8 CACI International 13 6 1.1 2.1 Science Applications Int’l 22 5 1.4 3.1 Parsons 10 3 1.3 2.2 Serco Group 5 1 1.8 2.8 Tetra Tech 21 6 1.3 2.5 FTI Consulting 13 8 1.1 1.6 ICF International 12 5 1.0 2.1 三菱総合研究所 7 4 1.0 1.8 平均値 22 5 1.3 2.8 出所:各社資料より楽天証券経済研究所が作成
主要10社の財務レバレッジ平均値は2.8となっており、三菱総合研究所の財務レバレッジが他社比で低い状況にあることがわかります。
1,000億円以上の潜在的な使用可能資金
仮に、三菱総合研究所が財務レバレッジを平均水準の2.8倍まで高めるとすると、下表の通りとなって、1,036億円を使用可能資金として追加的に確保でき、新たな設備投資やM&A、株主還元に用いることが可能な計算となります。
<三菱総合研究所の使用可能資金試算(財務レバレッジを2.8倍に高めるケース)> (億円) 直近期 補足 株主資本等合計 719 - 総資産 1,281 - 調整後総資産 2,014 = 719 x 2.8(財務レバレッジ2.8倍に調整) 負債増加可能額 733 = 2,014 – 1,281 現金 303 - 使用可能資金 1,036 = 733 + 303 利益剰余金 590 - 出所: 三菱総合研究所の資料等より楽天証券経済研究所が作成
実際三菱総合研究所はこの潜在的な資金調達力も背景に、DX関連の設備投資(データセンター・クラウド・IT基盤)を推進しています。また、三菱総合研究所の最大の経営資源である「人」への投資として、採用強化、研修・リスキリング(AI、データ分析、政策領域)などに取り組んでいます。
さらにAI・データ分析、エネルギー・GX、社会インフラ(防災・交通・都市)、医療・介護・ウェルビーイング、宇宙・先端技術といった様々な分野に関する研究開発も進めています。
潤沢な資金調達力を活用した事業拡大が実現し、その結果として財務レバレッジが2.8倍にまで高まった場合には、ROEが11%に上昇し、PBRは2.7倍になる可能性があります。
(西 勇太郎)

![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 昼夜兼用立体 ハーブ&ユーカリの香り 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Q-T7qhTGL._SL500_.jpg)
![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 就寝立体タイプ 無香料 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51pV-1+GeGL._SL500_.jpg)







![NHKラジオ ラジオビジネス英語 2024年 9月号 [雑誌] (NHKテキスト)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Ku32P5LhL._SL500_.jpg)
