2026年1月下旬から2月の上旬にかけ、国内外の金(ゴールド)とプラチナの相場が急落しました。「サーキット・ブレーカー」発動など、相場急変を強く印象付ける出来事も重なり、もう手に負えない相場なのではないか、などの声も聞かれます。
1月・2月、記録的な上昇・下落が発生
足元、国内外の金(ゴールド)とプラチナの価格が、乱高下しています。以下のグラフのとおり、大阪とNYの金(ゴールド)とプラチナの先物価格は、12月半ばごろから上昇傾向を鮮明にし、翌1月下旬まで急上昇しました。
図:大阪とNYの金(ゴールド)先物の価格推移(日足 終値)
図:大阪とNYのプラチナ先物の価格推移(日足 終値)
そして同月下旬から翌2月初旬にかけて急落しました。急落後、2月の1週目に反発の兆しが出てからは、徐々に回復してきています。2月10日午前(日本時間)までに、金(ゴールド)においては、大阪は下落分のおよそ6割、NYが同5割、回復しました。プラチナにおいては、大阪は同3割、NYが同2割、回復しました。
国内外の金(ゴールド)とプラチナは、この短い時間に、歴史的高値に至るまでの急騰、そしてその後の急落(足元で反発の兆しあり)という目まぐるしい値動きを演じました。
「目まぐるしい」や「乱高下」という言葉から、手に負えないことが起きている、という印象を抱いている方もおられると思います。
ただ、以下のとおり、長い時間軸、そして月間平均で今回の値動きを見てみると、別の印象を抱く方も多いかもしれません。2025年2月は9日までのデータを参照しています。
図:ドル建て金(ゴールド)、プラチナの現物価格の推移(月間平均)2025年2月は9日まで
金(ゴールド)の2月の月間平均価格は、1月よりも高いことがわかります(上昇継続)。プラチナの2月の月間平均価格は、1月に比べて反落しているものの、その規模は比較的小さいです。
短期視点では手に負えないとんでもないことが起きているように見える値動きでも、月間平均価格を用いて長期視点で見れば、穏やかに見えます。目の前の木が風に激しく揺さぶられていても、森全体は平静を保っている、という表現になろうかと思います。
「サーキット・ブレーカー」で冷ます
手に負えないとんでもないことが起きているという印象を強めた出来事の一つに、「サーキット・ブレーカーの発動が頻発したこと」が挙げられます。大阪の貴金属先物市場には、市場が過熱感を帯びた時、鎮静化を図るため、一時的に取引を停止する「サーキット・ブレーカー」という制度があります。
1月と2月、金(ゴールド)とプラチナの市場でサーキット・ブレーカーが複数回、発動しました。このことにより、相場が大暴落している、という印象が強まった可能性があります。以下の図は、1月と2月(9日まで)に、金(ゴールド)とプラチナ先物市場において、サーキット・ブレーカーが発動したタイミングとその方向性を示しています。
図:大阪の金(ゴールド)先物価格の推移(中心限月 30分足) 単位:円/グラム
図:大阪の白金(プラチナ)先物価格の推移(中心限月 30分足) 単位:円/グラム
最高値を更新した1月下旬から2月の上旬にかけて、金(ゴールド)、プラチナ、ともに複数回、サーキット・ブレーカーが発動しました。
注目したいポイントは、方向性です。この間に発生したサーキット・ブレーカーの方向性は「下方向」でした。これは、相場が下方向に過熱感を帯びた状態になっているために、取引を一時的に中断した、という意味です。グラフ内では青の矢印です。
2月上旬の反発局面では、金(ゴールド)もプラチナも、複数回、今度は逆に「上方向」で発動しました。
先ほどの図、「ドル建て金(ゴールド)、プラチナの現物価格の推移(月間平均)2025年2月は9日」で示した通り、もともと、金(ゴールド)もプラチナも、記録的な高値圏で推移しています。
このため、更なる上昇を見込む買い手の注文と、もう下がるだろう、あるいは利益を確定しておこうと考える売り手の注文が激しく交錯しやすい状態にあります。こうした環境にあり、上下双方の方向で、サーキット・ブレーカーが発動しやすくなっていると言えます。
長期上昇トレンドに変わりはないと考える
筆者は、1月下旬から2月上旬にかけて発生した急落の理由は、三つあると考えています。
一つ目は、トランプ米大統領が「ロシアが1週間ほど、ウクライナとの戦闘を停止する」旨の発言をし、(1)伝統的な有事をきっかけとした上昇圧力が、後退したことです。(有事ムードの後退)
図:ドル建て金(ゴールド)価格の変動イメージ
二つ目は、今年5月に交代を予定している米連邦準備制度理事会(FRB)の議長について、緩和的な金融政策に否定的な人物が就任するかもしれない、という思惑が広がり、(3)代替通貨をきっかけとした上昇圧力が、後退したことです。(利下げ→ドル安→金(ゴールド)高のシナリオ後退)
三つ目は、歴史的高値更新を実現した劇的な急騰劇で大きくなった利益を確定させるための売りが膨らんだとみられることです。こうした動きを経て、伝統的な有事と代替通貨をきっかけとした上昇圧力が急激に弱まり、そこに利益確定の売りが拍車をかけ、急落が発生したと考えられます。
伝統的な有事をきっかけとした上昇圧力と、そして代替通貨をきっかけとした上昇圧力が、ともに弱まったことについては、図の通り、短中期のテーマに関わる事象だと言えます。さらには、利益確定の売りも、短中期的な事象になるケースが多いことから、一連の急落は「短中期的」な事象であると言えます。
図:ドル建て金(ゴールド)に関わる七つのテーマ(2026年)
また、先ほどの図「ドル建て金(ゴールド)価格の変動イメージ」で示したとおり、金(ゴールド)相場には、2010年ごろから続いている長期的な価格上昇を支える「土台」があると、考えられます。
この土台に関わる環境は、急落前と後で、何ら変わっていません。土台は、中長期の時間軸「中央銀行(金(ゴールド)保有量・通貨ストック)」、そして超長期の時間軸「非伝統的な有事(通貨不確実性・世界分断・民主主義後退など)」という、長い時間軸のテーマです。
今回の乱高下は、貴金属相場における「木を見て森を見ず」を、改めて認識する良い機会だと言えます。例えて言えば、目の前の木が風に激しく揺さぶられていても、森全体は平静を保っている、という表現になろうかと思います。
今後も、金(ゴールド)とプラチナの相場は、今回のような短期視点の乱高下をこなしつつ、長期視点で見れば土台に支えられ、上昇トレンドを継続すると、筆者は考えています。
[参考]貴金属関連の具体的な投資商品例
純金積立
純金積立・スポット購入
投資信託
三菱UFJ 純金ファンド
ピクテ・ゴールド(為替ヘッジあり)
楽天・ゴールド・ファンド(為替ヘッジなし/あり)
楽天・プラチナ・ファンド(為替ヘッジなし)
中期:
関連ETF
SPDRゴールド・シェア(1326)
NF金価格連動型上場投資信託(1328)
純金上場信託(金の果実)(1540)
NN金先物ダブルブルETN(2036)
NN金先物ベアETN(2037)
GXゴールド(425A)
SPDR ゴールド・ミニシェアーズ・トラスト(GLDM)
ヴァンエック・金鉱株ETF(GDX)
短期:
商品先物
国内商品先物
海外商品先物
CFD
金(ゴールド)、プラチナ、銀、パラジウム
(吉田 哲)

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