米国株市場は、1月末の「アンソロピック・ショック」による急落から落ち着きを取り戻しつつあります。しかし、AI相場は「勝ち組」と「負け組」の「二極化」の視点で選別される構図に。

来週のエヌビディア決算、利上げの可能性が浮上した金融政策の行方、地政学的リスクなど、注目イベントをどう乗り越えられるかが焦点になります。


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落ち着きを取り戻した米国株市場

 連休明けで迎えた今週の米国株市場ですが、1月末からの荒い値動きが、ようやく落ち着きを取り戻しつつあります。


<図1>米主要株価指数のパフォーマンス比較(2025年末を100)(2026年2月18日時点)
米国株市場:アンソロピック・ショック後の「AI相場二極化」で上昇しにくい?(土信田雅之)
出所:MARKETSPEED IIおよびBloombergデータを基に作成

 図1は、2025年12月末を100とした、米主要株価指数のパフォーマンスを比較したものです。


 ダウ工業株30種平均をはじめ、S&P500種指数やナスダック総合指数、半導体関連銘柄で構成されるSOX指数(フィラデルフィア半導体株指数)、そして、中小型銘柄で構成するラッセル2000が今週に入って徐々に復調している様子が確認できます。


 こうした米国株市場の復調の背景には、複数の要因が重なっています。まず、先週13日(金)に発表された米1月消費者物価指数(CPI)が市場予想を下回り、インフレの沈静傾向が確認されたことで、米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げの選択肢が首の皮一枚つながったとの見方が強まりました。


 また、地政学的リスクの面では、スイスで行われた米国とイランの核問題を巡る協議において「大筋合意」の期待が報じられて、原油先物相場が下落したことも、インフレへの警戒を和らげる要因となりました。


 果たして、このまま米国株市場は、再び力強い戻り基調をたどれるのでしょうか?


アンソロピック・ショックに始まった「AIの脅威」はまだ続く?

 さらに、足元の復調を支えたのが、1月末に市場を襲った「アンソロピック・ショック」に伴う売りが、ひとまず一服したことです。


 AI新興企業のアンソロピックが発表した新型のAIエージェントモデルは、既存のソフトウエア企業のビジネスモデルを根底から覆す「SaaSの死」として受け止められ、 セールスフォース(CRM) や マイクロソフト(MSFT) といった銘柄が大きく売られました。


 しかし、今週は エヌビディア(NVDA) と メタ・プラットフォームズ(META) による大規模なAIインフラ構築での提携発表などもあり、市場の目線が「AIを巡る投資意欲の持続」を評価する方へ向かい、結果的に売られていた銘柄が下げ止まった格好となりました。


 ただし、ここで注意すべき点があります。それは、AI・半導体関連銘柄とソフトウエア関連銘柄のパフォーマンスを詳しく比較すると、実はあまり状況が変わっていないことです。


 まずは、M7(マグニフィセント・セブン)銘柄のパフォーマンスから見ていきます。


<図2>米M7(マグニフィセント・セブン)のパフォーマンス比較(2025年末を100)(2026年2月18日時点)
米国株市場:アンソロピック・ショック後の「AI相場二極化」で上昇しにくい?(土信田雅之)
出所:MARKETSPEED IIデータを基に作成

 図2からは、エヌビディアと アマゾン・ドット・コム(AMZN) の反発が目立っていますが、全体的に1月下旬の水準と比べると、「ようやく底を打ってきた」という印象です。


<図3>米AI・ソフトウエア関連銘柄のパフォーマンス比較(2025年末を100)(2026年2月18日時点)
米国株市場:アンソロピック・ショック後の「AI相場二極化」で上昇しにくい?(土信田雅之)
出所:MARKETSPEED IIデータを基に作成

 続いて、AI・ソフトウエア関連銘柄についても見ていきます。 アドビ(ADBE) やセールスフォースなどのソフトウエア関連銘柄が引き続き低調なほか、昨年に大きく株価を伸ばした パランティア・テクノロジーズ(PLTR) や クラウドストライク(CRWD) 、 オラクル(ORCL) なども昨年末比でまだマイナスに沈んでいます。


<図4>米半導体・メモリ・ストレージ関連銘柄のパフォーマンス比較(2025年末を100)(2026年2月18日時点)
米国株市場:アンソロピック・ショック後の「AI相場二極化」で上昇しにくい?(土信田雅之)
出所:MARKETSPEED IIデータを基に作成

 その一方で、図4を見ると、 サンディスク(SNDK) や ウエスタンデジタル(WDC) 、 マイクロン・テクノロジー(MU) などのメモリ・ストレージ関連銘柄は好調を維持しています。巨額のAI投資による成果が実るまでに時間が掛かることが見込まれる中、物理的なインフラ関連やデータ保存という実利・実需へのシフトが起きている状況といえます。


 このように、図2から図4を見ると、アンソロピック・ショックの余韻はまだ残っていると思われます。


 また、AIが既存のビジネスを代替するという懸念が、「ソフトウエアの次はどの業種がAIに食われるのか」という脅威につながり、金融や物流、商業用不動産など、業種をまたいで売られる銘柄が出てきたことを踏まえると、AI技術の進歩が今後も銘柄の物色動向に大きく影響を与える場面はまだまだありそうです。


「二極化」で上昇しにくい?

 いわば、「AI脅威論」がくすぶっている状況ですが、その一方で、AIを「脅威」ではなく「武器」として味方につけ、株価を上昇させている銘柄も存在します。


 その代表例が、小売大手の ウォルマート(WMT) や建機大手の キャタピラー(CAT) です。ウォルマートは、オープンAIやグーグルとの提携を通じ、AIによる顧客体験の向上とコスト削減を劇的に進めており、時価総額が1兆ドルを突破する場面がありました。


 キャタピラーもまた、データセンター向けの発電設備需要という「AIインフラの裏方」としての恩恵をフルに受けています。他にも、直近で大きく株価が下げる場面があったものの、仕分け作業の効率化を達成した物流の CHロビンソン・ワールドワイド(CHRW) なども評価されています。


 昨年の10月末にいったんのピークを迎えたAI・半導体相場ですが、期待が先行するフェーズから、「財務リスク」や「収益性」「競争優位性」といった視点で選別される状況になってきました。


 そして、アンソロピック・ショックをきっかけに、「AIによってビジネスモデルが破壊される側(負け組)」なのか、それとも「AIを駆使してビジネスを向上させる側(勝ち組)」なのかという、「二極化」の視点が加わることになります。


 この勝ち組と負け組が分かれる構図は、負ける側の売り圧力が相場の重しとなるため、市場全体としては指数の上昇が抑制されやすくなります。


 さらに、二極化といえば、前回のレポートでも指摘した通り、現在の米国の消費構造は、高所得者層がAIの恩恵や資産効果で消費をけん引する一方で、中低所得者層がインフレと高金利で抑制的となる「K字型」の様相を強めています。こうした実体経済のゆがみも、相場全体の持続的な上昇を阻む要因として注意が必要です。


2026年2月13日: 米国株:下落局面への転換に備えるには(土信田雅之)


目先の波乱要因を乗り越えられるか?

 さて、落ち着きを取り戻しつつある米国株市場ですが、目先は波乱要因となり得るイベントをどう乗り越えられるかが焦点になります。


 中でも、最大の注目イベントとなるのが、日本時間2026年2月26日朝(25日の米国市場の取引終了後)に予定されているエヌビディアの決算発表です。


<図5>米エヌビディア(日足)とMACDの動き(2026年2月18日時点)
米国株市場:アンソロピック・ショック後の「AI相場二極化」で上昇しにくい?(土信田雅之)
出所:MARKETSPEED II

 テクニカル分析の視点で見ると、エヌビディアの日足チャートは、株価が横ばいの25日と50日移動平均線を挟んでもみあっているほか、下段のMACDも「0ドル」ライン付近での攻防が続いています。さらに、ギャンアングルについても、株価が「2×1」ラインに到達しており、「時間調整」がイイところまで進んでいると捉えることができます。


 仮に、エヌビディアの決算内容が市場の期待を上回り、次世代チップ「ルービン」への移行がスムーズであると確認されれば、テクニカル的には上値の抵抗線を突き抜けて大きく上昇しやすい形となっているだけに、来週はAI・半導体関連銘柄全体の命運を握る「天王山」となる可能性があります。


 また、今週公表された米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨も、新たなワイルドカード(不確定要素)として浮上しています。議事要旨では、一部の参加者からインフレ高止まりに対する「利上げ」の可能性まで議論されていたことが判明しました。


 これにより、市場が期待していた早期利下げシナリオは後退し、今後の経済指標の結果次第で、金利見通しが再びタカ派に振れるリスクが高まっています。


 さらに、政治・地政学的リスクも無視できません。


【トランプ関税に対する最高裁判断】
 米連邦最高裁がトランプ大統領の掲げる関税政策を「違憲」と判断するかどうか。もし違憲となれば、貿易摩擦懸念が和らぐ一方で、政策の不透明感が嫌気される可能性もあり、株式市場が敏感に反応することが想定されます。


【イラン情勢】
 先ほどは、米国とイランの協議の進展が株式市場にとって好材料となりましたが、今週に入ってからは一転して、米政権による大規模な軍事行動の可能性が報じられています。中東情勢の急変は、原油価格の急騰を通じて、再びインフレ懸念を呼び起こす火種となります。


 従って、現時点で落ち着いている米国株市場ですが、AIによる産業構造の変化とエヌビディア決算、金融政策の不透明感、そして地政学的リスクという「三すくみ」の状態にあり、過度に弱気になる必要はないものの、慎重に「勝ち組」銘柄を見極めるスタンスが求められる局面が続きそうです。


(土信田 雅之)

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