新NISA3年目、投資額や売却経験が人それぞれ異なる今、制度への疑問がでてきているでしょう。今回は、枠復活の誤解や1,800万円枠の使い方、商品の入れ替え方といった制度のポイントをご紹介します。


NISA3年目、「枠復活」の落とし穴と投資上限枠1800万円...の画像はこちら >>

新NISA、3年目で出てくる制度の疑問

 新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)が始まって3年目、制度が浸透する一方で、「2026年度のNISAをどう活用すればいいか悩む」という声をよく耳にします。私の知人も同様の悩みを抱えていました。


 3年目に入ると、これまでの投資額や売却経験が人それぞれ異なり、初年度と比べると複雑に感じるかもしれません。そこで今回は、「3年目の新NISA」活用の注意点やポイントを改めてまとめてみたいと思います。


 まずは、新NISAの原則をおさらいしましょう。


原則1:1年当たりの投資枠は年360万円


  • 成長投資枠240万円
  • つみたて投資枠120万円(定期購入が必須)

原則2:投資上限枠は1,800万円


  • 購入時の元本で判断
  • 成長投資枠は1,200万円が上限のため、1,800万円を使い切るにはつみたて投資枠を600万円以上活用する必要あり

原則3:投資上限枠の1,800万円を超えた場合、新規買い付けは不可


  • 上限に達した人が保有資産の売却を行った場合、その売却額(購入時価格相当分)が翌年の新規買付枠として復活

原則4:旧NISAと新NISAは連続しない


 これらの原則はご存じの方も多いでしょう。しかし、実際に3年目の投資を進める中で、「あれ?」と思ったりします。


1,800万円の上限に達している人はいないので「2026年の枠復活」はない

「昨年、NISAの投資資金を一部売却したのに、2026年の投資枠は成長投資枠240万円で変わらないじゃないか。売却したら翌年再投資できるのではないのか」


 こんなコメントをネットで見かけたことがあります。これは新NISAの仕組みに対する誤解から生じています。よく言われる「NISAは売却すると投資枠が復活する」というのは、生涯投資上限枠(1,800万円)の話であり、年間の投資上限枠(360万円)は購入履歴や売買履歴にかかわらず変わりません。


 売却して復活するのは、あくまで「投資上限枠1,800万円」です。しかし、新NISAが始まってまだ3年目。仮に2024年、2025年と満額の360万円を投資してきた人でも、まだ720万円の投資元本しかないはずです。


 投資元本1,800万円の投資上限に達している人はひとりもいません。従って、2026年に枠復活のメリットを受ける人もいない、ということになります。


 復活した枠も、年間投資枠を広げるものではなく、1,800万円の生涯投資枠内で再投資が可能になる、という点を改めて確認しておきましょう。


生涯投資上限1,800万円、使い切る必要はあるのか

 これまた別の書き込みで「1,800万円を使い切れないのか」という意見もありました。


 これは、厳密に1,800万円ぴったりを投資しきることにこだわる必要はありません。


 そもそもまだ先のことという理由もありますが、新NISAは1,800万円を使い切ることが狙いではないからです。


 例えば、普通の会社員が月数万円くらいの積立投資を何十年もかけてがんばって、累積では1,800万円の積立元本に届かなくても、運用益を加味すれば2,000万円を軽く突破し、老後の安心ができた、というのがNISAが国民の将来を豊かにするイメージです。


「1円でも非課税投資枠を活用し切らないと、納得がいかない!」という気持ちは、投資資金に余裕がある方の考えだと思います。本来NISAがターゲットとしているイメージは「投資のゴール段階で、元本1,800万円積み上げることが一つの目標」と考えてみるといいでしょう。


 もし5年で1,800万円にこだわる場合は、ぴったり1,800万円使い切る前に、ちょっとずつ売却をされていけばよいかと思います。


 例えば、以下のように投資を進めたとします。


年 つみたて投資枠 成長投資枠 2024 120万円 220万円 2025 120万円 230万円 2026 120万円 210万円 2027 120万円 200万円 2028 120万円 230万円

 この場合、2028年末でつみたて投資枠の累積は600万円、成長投資枠は1,090万円となり、2029年のNISA非課税投資枠の余裕は110万円しかないことになります。


 ここで2028年の間に、元本250万円相当を売却しておけば、2029年も合計360万円の非課税投資ができる理屈となります。


 毎年、「翌年の360万円の枠を残すくらいの資産残高にしておく」という調整は考えられますが、ここまでしっかりNISAを使い切る人はかなり少数派ではないでしょうか。


商品の入れ替え(スイッチング)をしたい場合はどうする

 NISAの課題として、商品の入れ替え(スイッチング)を行いにくいことが挙げられます。こちらは全ての方々が考えるテーマです。


 例えば「2年間、オールカントリー系投資信託に720万円の上限まで全額購入してきた。しかし、国内投資比率が低すぎるし、今後の国内株価上昇期待を踏まえて、東証株価指数(TOPIX)連動のインデックスファンドに300万円くらい乗り換えたい」というようなニーズがあったとします。


 現状のNISAで国内株投資比率を増やしたいのであれば、選択肢として以下が考えられます。


  • つみたて投資枠など定期的な新規買い付け分を、国内株投信に変更する(徐々に国内株投資の割合が増えていく)

 これは、時間をかけて資産の保有割合を変えていくやり方で時間がかかります。また、その間はオールカントリー系投資信託への積立投資額を減らすことになります。しかし、売買をするとNISA枠を使ってしまうような心配はなく、定額の積立投資計画には影響がまったく出ません。


  • 保有分を売却して、成長投資枠の年間投資枠の範囲で国内株投信を買い直す

 こちらは、資産の入れ替えはダイナミックに行えますが、年間投資枠の制限を受けます。つみたて投資枠はスポット購入に使うことができませんので、「年120万円の新規買い付けはつみたて投資枠で継続」しつつ「年240万円の成長投資枠内で商品の入れ替えを行う」ということになります。


 もし「成長投資枠はすでに新規買い付けに使う予定がある」「2026年には360万円投入予定!」という人にとっては、買い直しに使うことができませんので注意が必要です。


「3年目のNISA」自分なりのかじ取りを

 NISA制度が本格的に回り始め、多くの人が利用するようになった今、制度の少し複雑な部分に悩む人が出始めています。


 NISAの本質は、長期保有にあります。そのため、ゆっくりと長期積み立てを続けている人にとっては、あまり気にならない点かもしれません。しかし、積み立てペースが早いなど、NISAを積極的に活用している人は、改めて基本的な仕組みを再確認してみるといいでしょう。


 テンプレートのような投資情報に踊らされず、自分なりにNISAのかじ取りをしていくことが大切です。


(山崎 俊輔)

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