「追加利上げ難色」報道で円安が進む中、ドル円は米国の経済指標やトランプ関税、AI脅威論など複雑な要因に翻弄(ほんろう)されています。介入警戒ラインとして158円が意識され、日銀の利上げ観測も揺れる中、ドル安・円安の綱引き相場は今後も続きそうです。


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「追加利上げ難色」報道で円安進行!ドル円を動かす円安・ドル安の要因

 8日の衆院選挙後、ドル円は圧倒的勝利による高市政権への期待やポジション調整から152円台前半まで円高に進みましたが、その後調整も一巡したのか円安に戻しました。154円はなかなか抜けなかったのですが、下記のような円安要因やドル安要因によって、24日には一時156円台へと円安が進みました。その要因とは、


  • 米2月NY連邦準備銀行製造業景況指数など堅調な米経済指標が続き、18日に公表された米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録ではインフレの根強さや利上げについても言及があったことからドル買いが強まり、19日には155円台前半に。
  • 20日(金)、日本1月消費者物価指数(CPI)が前月を大きく下回ったことや、高市早苗首相の施政方針演説で「責任ある積極財政」への政策転換を改めて宣言したため円売りが優勢となり、155円台後半へ。
  • 24日(火)、「高市首相は16日の植田和男総裁と会談した際、追加利上げに難色を示した」と報じられると、円売りが一気に強まり、156円台前半の円安に。
  •  156円台は長くとどまりませんでした。背景にはドル安要因や介入警戒感も働いているようです。


     ドル安(円高)要因としては、


  • 米連邦最高裁判所がトランプ政権の相互関税に対して違憲の判決を示し、違憲判決を受けたトランプ大統領の新たな関税政策を巡り、ドル信任不安再燃が意識されドル売りに。
  • 米国・イラン間の軍事緊張。
  • AI利用によってこれまでのサービスや雇用を破壊するのではないかとの「AI脅威論」の見方が根強くあり、米国株式市場を揺さぶっている。
  • 以上のような材料が次から次へと出てきました。(3)の「利上げに難色」報道が出るまでは155円台に乗せてもドル安と円安の綱引きのような動きでした。


     23日には、(4)と(5)の材料で一時154円近辺への円高となりましたが、(3)24日の材料によって、154円台から156円台へと円売りに弾みがつきました。

    ただ、ここから先の円安に対して市場の警戒感は強まりそうです。


     介入警戒感が強まる背景は、複数の米政府高官が、1月23日のニューヨーク連銀による「レートチェック」は日本側の要請ではなく、ベッセント財務長官の指示によるものだったことを明らかにしたからです。さらに、日本側の要請があれば日米協調の為替介入も視野に入れていたとのことです。


     ベッセント財務長官は、2月の衆院選前の政治空白で市場が不安定になり、世界の通貨・債券市場に影響することを警戒し、「レートチェック」を主導し、日本から要請があれば日米協調介入も視野に入れていたということですが、この事実は今後のドル円の円安をかなり抑制しそうです。


    ドル安・円安の綱引き相場は続く?

     レートチェックは158円台の水準でみられたということですから、今後は日米協調の防衛ラインとして市場は158円をかなり意識することになりそうです。


     もちろん、為替水準だけでなく、1月のダボス会議でベッセント財務長官と片山さつき財務相が日米のトリプル安(株安、債券安、通貨安)に関する協議を行ったことを踏まえ、通貨・債券市場が不安定になった時には、為替水準にかかわらず、日米は協調して行動する可能性が強まったという点には留意する必要があります。


     ベッセント財務長官主導の「レートチェック」はそのことを裏付けています。


    (4)~(6)のドル安要因も引き続き市場に影響を与えることが予想されます。


    (4)トランプ関税については、成り行きによっては円安要因よりも勝るドル安要因になるかもしれないため、その動向を注視していく必要がありそうです。


     24日、トランプ政権は相互関税の代替措置として通商法122条に基づく、10%の追加関税を150日間の期間限定で発動しました。トランプ大統領は税率をいずれ15%に引き上げる方針を表明しています。


     しかし、この法律適用についても、これまで適用事例がないことや、発動要件である「大規模かつ深刻な国際収支の赤字」への疑念があることから、相互関税と同様に大統領権限を逸脱しているのではないかと訴訟への警戒感があることが指摘されています。


     また、これまで徴収された関税の還付の時期や方法は不透明で、確実に還付されるかどうかも分かりません。トランプ大統領は返還請求に対して「5年は法廷で争うことになる」と言及し、無条件の返還に応じない姿勢を示しました。


     このようにトランプ関税は不透明な状態で再発動となったことから市場の不安材料として続くことが予想されます。


     高市首相の「追加利上げに難色」報道については、真偽は分かりませんが、先日発表された日本の10-12月期国内総生産(GDP)が実質年率+0.2%と予想を大きく下回ったことや、20日の日本の1月CPIが前年比2.0%と前月を大きく下回ったこともあり、追加利上げの時期は当面後退することが予想されます。


     しかし、春先になって春闘の賃上げ動向が明らかになってくると再び利上げ期待が高まることが予想されます。市場が期待していた4月利上げが「難色」報道で後退しましたが、再度浮上する可能性があることにも留意する必要がありそうです。


     ドル円は、158円の「ベッセント・シーリング」を意識し、ドル安要因や円高要因が出てきた時に再度155円以下を目指す動きも予想されるため、ドル安・円安の綱引き相場が続いているとみておいた方がよいかもしれません。


    (ハッサク)

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