設計ソフトウエア大手の米PTCは、製造業DX需要の高まりや買収による製品強化が奏功し、5年間で当期純利益は5.6倍、株主資本は2.7倍となりました。他方で株価は1.9倍の上昇にとどまっている上、同業他社比でも割安な水準です。
設計から使用現場まで各段階に対応
PTC(PTC NASDAQ) (株価150.88ドル、時価総額179億5400万ドル:2月23日終値)は設計ソフトウェア大手です。設計からデータ管理、製品を使用する現場支援まで、製品の全工程を一気通貫で提供できる数少ない大手企業です。
具体的には、設計段階では「Creo」というCAD(Computer Aided Design:コンピュータ支援設計)ソフトウェアによって3Dモデルの作成機能を提供しています。管理段階では「Windchill」というPLM(Product Lifecycle Management:製品ライフサイクル管理)ソフトウェアによって設計データや部品情報の管理機能を提供しています。
製造・運用現場でのデータ収集段階では「ThingWorx」というIoT(Internet of Things:モノのインターネット)ソフトウェアが工場設備や製品の稼働データを集めます。現場作業支援段階では「Vuforia」というAR(Augmented Reality:拡張現実)ソフトウェアが作業手順をARで表示し、教育や保守を支援しています。
CADソフトウェアを提供する同業他社としては仏ダッソー・システムズ(DSY パリ)、米 オートデスク(ADSK NASDAQ) などがあります。PTCの「Creo」は、機械の設計に強く、操作が安定していて扱いやすい上、設計データをそのまま後工程(PLM、IoT、AR)につなげられるため、設計後の工程まで見据えた使い方がしやすいという特徴があります。
これに対しダッソー・システムズの「CATIA」は、車や飛行機のような複雑で曲線の多い製品の設計に最も強く、大手メーカーでよく用いられます。また、オートデスクの「AutoCAD」や「Fusion 360」は、初心者からプロまで幅広く使われる手軽な仕様となっています。
PTCは1985年に米国マサチューセッツ州でParametric Technology Corporationとして設立され、世界で初めてパラメトリック3D(長さや角度などの数値を変えるだけで形状が自動的に更新される3D設計方式) CAD「Pro/ENGINEER」を商用化し、設計のデジタル化を大きく進めました。
2000年代には製品ライフサイクル管理システム「Windchill」を提供開始し、製品データ管理の分野で存在感を高めました。
2010年代以降はIoTソフトウェア「ThingWorx」やAR基盤「Vuforia」を買収し、設計から製造・保守までをつなぐ総合ソリューション企業へと進化。
<CADソフトウェア「Creo」の画面>
また足元では、AIを活用した高度化戦略にも取り組んでいます。CAD「Creo」では生成AIによるデザインや設計自動化機能を強化し、PLM「Windchill」では要件生成、ワークフロー自動化、品質予測などAIによる意思決定支援を実装。さらにIoT「ThingWorx」やAR「Vuforia」との連携によって、現場データを活用した最適化や予兆検知も可能にしています。
過去5年で株価上昇も、足元は調整局面
PTCの2020年9月期の売上高は14億5800万ドルでしたが、2025年9月期には27億3900万ドルと1.9倍に増加しました。当期純利益は売上高の増加率を上回る増加を示しており、2020年9月期の1億3100万ドルから2025年9月期には7億3000万ドルへと5.6倍に増加しました。
<PTCの当期純利益推移(2020年9月期以降)>
他方、株価については2025年まで堅調に推移していたものの、現在は業績見通しの引き下げや、生成AIによって代替される懸念が投資家心理の悪化を招き、下落基調となっています。
ただし前述の通り、むしろAIを活用することによる機能の高度化が提供サービスの価値のさらなる上昇につながることから、PTCはAIを脅威ではなく武器として活用しつつあるのが実態です。
<PTCの株価推移(2020年9月期以降)>
過去実績対比でPBRに割安感
PTCの過去5年間の業績変化を見ると、売上高が1.9倍となった一方で利益増加はそれを上回り、営業利益が4.1倍、当期純利益は5.6倍となりました。これは、サブスク化で限界費用が低く粗利率の高いビジネスモデルへ転換したこと、クラウド運用でサポートコストが減ったこと、そして 営業費用の最適化で効率が向上したこと、などが要因です。
株主資本蓄積も順調に進んで2.7倍に達している中、時価総額の変化は1.9倍にとどまっています。結果的にPBR(純資産倍率)は6.7倍から4.7倍へと低下しました。PBRが過去5年平均の6.1倍にまで回復した場合、株価は193ドルとなります。
<PTCの業績推移(2020年9月期と2025年9月期)> (百万ドル) 2020年9月期 2025年9月期 変化(倍) 売上高 1,458 2,739 1.9 売上総利益 1,124 2,294 2.0 営業利益 244 998 4.1 税引前純利益 135 920 6.8 当期純利益 131 734 5.6 株主資本等合計 1,438 3,826 2.7 時価総額 9,605 17,954 1.9 PBR(倍) 6.7 4.7 - PER(倍) 74 24 - ※時価総額は、2020年9月期は期末時点値、2025年9月期は直近値
出所:PTCの資料等より楽天証券経済研究所が作成
過去10年間の業績変化を地域別で見ると、米国の売上と利益の増加が全体の業績拡大をけん引しました。
<PTCの地域別業績推移(2020年9月期と2025年9月期)> (百万ドル) 2020年9月期 2025年9月期 変化(倍) 売上高 1,458 2,739 1.9 米国 622 1,288 2.1 ドイツ 199 369 1.9 その他欧州 345 626 1.8 アジア太平洋 265 417 1.6 税引前純利益 135 920 6.8 米国 ▲74 418 - その他 209 502 2.4 税引前純利益率 9% 34% - 米国 ▲12% 32% - その他 25% 35% - 出所:PTCの資料等より楽天証券経済研究所が作成
今後については、2025年9月期、2026年9月期と増収増益が継続する見通しです。結果的に株主資本の蓄積も進むため、株価水準がこのまま変わらない場合PBRは低下し、2027年9月期には4倍を割り込む計算となります。
<PTCの業績予想> (百万ドル) 2025年9月期
実績 2026年9月期
予想 2027年9月期
予想 売上高 2,739 2,823 3,013 営業利益 998 - - 当期純利益 734 948 1,003 株主資本等合計 3,826 4,195 4,736 時価総額 17,954 17,954 17,954 PBR(倍) 4.7 4.3 3.8 PER(倍) 24 19 18 ※時価総額は直近値
出所:PTCの資料等より楽天証券経済研究所が作成
PBRの割安感が解消されれば、株価は223ドル到達も
PTCの比較対象に適する設計ソフトウェアの上場同業他社には、ダッソー・システムズ、米 シノプシス(SNPS NASDAQ) 、オートデスク、米 ケイデンス・デザイン・システムズ(CDNS NASDAQ) 、米 トリンブル(TRMB NASDAQ) 、米 ベントレー・システムズ(BSY NASDAQ) 、 アルゴグラフィックス(7595 東京) 、 福井コンピュータホールディングス(9790 東京) 、 応用技術(4356 東京) などがあります。
これらの企業について、ROEを横軸、PBRを縦軸とした散布図を作成すると、概ね比例関係にあることがわかります。その中で、PTCについては割安方向にずれており、この点から、株価に割安感があると言えます。この割安感が解消された場合のPTCのPBR(下図の青破線に乗る水準)は6.8であり、相当する株価は223ドルです。
<主な設計ソフトウェア企業のROEとPBRの関係>
<主な設計ソフトウェア企業10社のROEとPBR> 社名 証券
コード 取引所 売上高 ROE PBR 百万ドル % 倍 Dassault Systemes DSY パリ 7,047 13 2.6 Synopsys SNPS NASDAQ 7,054 7 2.8 Autodesk ADSK NASDAQ 6,131 50 17.7 Cadence Design Systems CDNS NASDAQ 4,641 26 16.5 Trimble TRMB NASDAQ 3,587 7 2.7 PTC PTC NASDAQ 2,739 21 4.7 Bentley Systems BSY NASDAQ 1,353 24 9.4 アルゴグラフィックス 7595 東京 456 14 1.9 福井コンピュータHD 9790 東京 97 16 2.6 応用技術 4356 東京 50 16 1.6 出所:各社資料より楽天証券経済研究所が作成
また、これらの企業の予想配当利回りを比較すると、PTCは配当を行っていません。他方、2024年度に自社株買いは行っておりますが、総還元性向は1.5%と相対的に低い水準でした。
<主な設計ソフトウェア企業10社の配当及び総還元利回り> 社名 証券
コード 取引所 昨年度 今年度 実績配当 総還元 予想配当 % % % Dassault Systemes DSY パリ 0.8 1.6 1.5 Synopsys SNPS NASDAQ 0.0 -0.3 0.0 Autodesk ADSK NASDAQ 0.0 1.5 0.0 Cadence Design Systems CDNS NASDAQ 0.0 0.7 0.0 Trimble TRMB NASDAQ 0.0 5.5 0.0 PTC PTC NASDAQ 0.0 1.5 0.0 Bentley Systems BSY NASDAQ 0.5 1.3 0.8 アルゴグラフィックス 7595 東京 2.1 2.1 5.1 福井コンピュータHD 9790 東京 2.1 2.1 2.2 応用技術 4356 東京 2.2 2.2 2.2 出所: 各社資料、MarketScreenerより楽天証券経済研究所が作成
PTCは無配当であるものの今後も高水準の収益継続が見込まれる中で、株価は過去実績比、同業他社比で割安感があります。
(西 勇太郎)

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