米AI株迷走、ドル軟化が続き、米市場は一見して暗雲の中にいるようです。しかし、ダウ平均やS&P500は最高値圏にあり、米市場以外では、日本株、新興国株、高金利通貨、金など相場の狙い目が浮上。

いわば、波乱と妙味が素直に表れています。この延長線上で、米AI株の復調の時間軸を含め、3月からの投資目線をアップデートしましょう。


米国株・日本株と世界市場 3月からの虎視眈々(たんたん)の画像はこちら >>

サマリー

●米AI株:勢力異動、相場の波乱を踏まえつつ、投資の中核
●米景気・バリュー株:不安定なAI株からのローテーション、利下げ次第で金融相場も
●日本株:米AIの裏方需要、高市政権の成長戦略、日本企業の意識・体質改善でアウトパフォーム
●新興国:米金利低下でドル安局面は、優良国の株、高金利国の通貨が活況に
●国際分散投資:米国一極集中投資の見直しで、日本株を含む主要国株を物色
●金:米利下げでドル安、不穏な世界情勢、アンチ米国の需要で投資妙味大


米国・世界は今

 2026年に入り、米株はAI相場が一進一退から次第にダレてきました。しかしAI株の迷走を横目に、景気・バリュー株へのローテーションが起こり、ダウ工業株30種平均やS&P500種指数などの指数は最高値圏にあります。このため、相場のどこを見るかで、悲観にも楽観にも評価でき、視座が定まりにくい状況です。


 米国経済については、雇用データだけ見ても、ADP雇用統計や雇用動態調査(JOLTS)のデータは弱めで、政府集計の雇用統計はしっかりとしているなど、マチマチの結果です。明暗どちらの面からも語ることが可能なため、株高の時には楽観、株安の時には先行き警戒と、相場追認で見方が変転しがちです。


 筆者は、米景気が堅調か悪化かを見定められるのはまだ先との判断を変えていません。おそらく数カ月ごとに楽観と警戒を変転させる近年のパターンを今年も繰り返すと想定しています。その振れとともに、利下げ観測の後退と強化も変転するでしょう。


 経済へのリスク要因の判断も、株価次第です。2月23日の株価急落時には、トランプ関税の新局面、プライベート・クレジット不安、イランの地政学、SaaSの死(従来のAIソフトウエア・サービスがAIにとって代わられて成り立たなくなること)などの悪材料が、市況解説に並び立てられました。


 しかし、翌日に株価が反発すると、これらのリスクへの警戒論も消えて、どこ吹く風です。


 要は、景気も利下げも先行きを見定められない段階です。リスク要因も証拠不十分であったり、評価を下すのは時期尚早だったり、市場が織り込みようのない段階です。その曖昧な環境を前提に、新たに出てくるデータを精査して、市場の相場追認情報に惑わされない視座が必要です。


ここからの市場別ポイント

<米AI株>

 米AI分野の成長ぶりを見れば、株式投資の中核テーマとの判断は変わりません。しかし、2025年8月以降、主要なAI銘柄の相場は迷走しています。


 AI半導体の盟主 エヌビディア(NVDA) も、AIソフトの花形 パランティア・テクノロジーズ(PLTR) も、好決算で反落する悩ましい値動きになり、先導役を失ったAI銘柄個々も迷走状態で、AI相場全体も方向感を見失っています。


 その背後では、データセンターへの巨額投資の採算性、エヌビディアとオープンAI社という中核2社を軸とする提携・相互投資・巨額ディールによる「循環取引」、AI企業の債務急増、AI株迷走とプライベート・クレジット・リスクへの警戒がありました。


 さらに、この中核2社に対して、アルファベット( GOOGL 、 GOOG )がライバルとして浮上し、AI領域の勢力異動が臆測されるようになりました。そこにまた、アンソロピックが公表したクロード・コワークが従来のAIソフトウエア・サービス企業の業務を侵食するとの警戒で、株価の急落を招くに至っています。


 しかしこの間も、新たなAI分野の需要増が、メモリーや、半導体製造関連の装置・部材などに波及し、投資妙味が出ています。また、従来のAI関連の代表銘柄も、数カ月に及ぶ相場の迷走で、既に割安との評価も出ています。


 当社モデルは、AI株は最近の迷走の余波が3月まで残るものの、順当には(予想外のショックなどなければ)、4~6月を通して復調路が見えるのではと評価しています。


<米景気・バリュー株>

 AI株の迷走は、景気・バリュー株へのローテーション買いにつながりました。

2025年9~12月に米連邦準備制度理事会(FRB)が3回利下げし、景気・バリュー株へ追い風になりました。


 また、AI株の急落場面でリスクオフ感が強まると、生活必需品や医薬品・ヘルスケア・公益などディフェンシブ株選好も見られます。


 こうして、直近では、グロース系のナスダック総合指数を、景気・バリュー株比率の高いダウ指数が上回っています。AIバブル破裂のような深刻な事態にでもならない限り、株式相場で調整が起こっても、別市場に妙味が生じるものです。


 筆者は、成長性があってダイナミックなAI相場に軸足を置き続けますが、AI株の迷走自体も、他市場の妙味を探索する手がかりと考えています。


<日本株>

 日本株は、2023~2024年に急上昇したとはいえ、この間の値動きはほぼ「米国株×ドル円」のミラー相場として説明されました。日本株の相場には自律性がなく、ダイナミックな米国株に集中することが得策と判断してきました。


 しかし、その日本株が自立し、値動きの自律性を強め、米国株をアウトパフォームするに至っています。筆者もその自律のリズムを解析し、足元では日本株投資に注力しています。


 日本株の相場が自立して上伸する背景は、以下の3点に大別して捉えられます。


(1)米AI相場の裏方としての強み:米国でAI株相場が迷走していても、AI分野のデータセンター、半導体などの需要は拡大し続けています。これを支える半導体製造・検査装置・部材製造などに強みを持つ日本企業に恩恵が回ってきています。


(2)高市政権の成長戦略:高市政権は2月8日の衆院選で歴史的大勝利を収めました。これで長期にわたって政策運営を担う公算が強まりました。高市早苗首相が掲げる17の成長分野、特にAI、防衛、資源など政策銘柄への期待が一段と高まっています。


(3)企業の意識と体質の改革:長年にわたるデフレで萎縮していた日本企業が、円安とインフレによる名目国内総生産(GDP)拡大が長引くにつれて、好決算で賃上げ、投資、株価対策という好循環が進みつつあります。海外投資家の売買次第で方向が決まりがちな日本株相場も、日本企業自身の自社株買いなどの対策が強固になり、下値のもろさが目立たなくなってきました。


<新興国通貨・株>

 米金利が下がり、ドルが軟化する局面では、新興国市場が活性化しやすくなります。主にドル建ての対外債務を抱える新興国は、返済負担が軽減され、金融緩和効果を得られるのです。


 ファンダメンタルズが良好な新興国の、比較的高い金利水準の新興国の通貨は、対ドルで上伸しやすくなります。通貨高にはなりますが、それだけ海外マネーが流入する恩恵を受けやすくなるのです。


 株価にも堅調な新興国が出てきます。高市トレードだ何だとはやされる日本株相場ですが、これをアウトパフォームする新興国も見られます。


<世界分散投資>

 日本株の上伸も、一部新興国株の急伸も、迷走する米国一極集中投資の見直しによる国際分散投資としても捉えられます。

国際分散投資は、ある種の流行のようなローテーションが観察されます。


 2025年は当初、欧州株と中国株が選好され、日本株はカヤの外でした。それが同年後半になると、日本株が見直し買いされるようになりました。前述の日本株の自立と自律を、海外投資家も評価するようになったといえます。


 また、韓国株や台湾株は、半導体・メモリー製造の強みを反映して、その日本株を上回るパフォーマンスになっています。米国株の迷走は、世界的な投資の見直しをもたらし、そこに勝機が生まれます。


<金・銀>

 米金利低下で国際基軸通貨ドルが軟化すると、ドル建ての金価格が上がりやすくなります。金は究極の安全通貨としても認知され、米金利の循環要因ばかりでなく、不穏な世界情勢でも上がりやすくなります。


 さらに、近年は中国などアンチ米国勢の中央銀行の買いが目立ちます。彼らは準備資産としてドルを持つリスクを勘案し、金にシフトしているようです。


 このアンチ米国の中央銀行は、金を大量購入しながら、そうそう売りには出ないと想定されます。米金利低下とドル軟調、不穏な国際情勢が続くとみれば、2026年も金相場のパフォーマンスには期待が高まります。


 この分かりやすさ故に、投機マネーの流入が急増すると、相場の波乱が増幅されがちです。もっとも、この波乱はリスクばかりでなく、上昇トレンドにおける押し目という好機をもたらすものです。


 投機の波乱で、2025年終盤に調整気味になった金を横目に、投機筋は銀を買い上げました。しかしその投機も度を過ぎて、2026年1月終盤から銀相場は崩落し、金連れ安も招きました。投機性が強まった市場には、事前に売り逃げのイメージを持ち、機動的に対応することが肝要です。その上でこそ、押し目の好機到来を享受できるのです。


3月からの視座

 米AIという中核相場が迷走しても、あるいは迷走するから、他市場に新たな妙味が浮上します。またAI相場も調整が深まるほど、割安との評価で買われやすくもなるでしょう。要は、一つの市場がダメでも、別に活路を見いだすのが、投資の醍醐味(だいごみ)です。


 ここで取り上げた六つの投資対象・テーマは、昨年末に公開した「2026年の展望レポート」で示したものと変わりません。要は、期待された通りの波乱と妙味が素直に起こっているといえます。読者は自身の投資スタイルや関心に沿って、この対象・テーマを取り込むだけでよいのです。


2025年12月26日: 【田中泰輔】2026年の株・債券・為替・商品を考える、ゆく投資くる投資


 文中で記したように、米AI相場の迷走は3月も尾を引くと想定しています。しかし、テクニカルにポジション調整が進み、割安との評価が固まれば、おのずと復調路に戻る銘柄もあるでしょう。


 筆者は自らの投資スタイルに忠実に、米国株についてはAI銘柄を軸に焦らず急がず、1月には下旬までのスイング投資、2月は様子見とし、3月には再びスイングという構えです。4~6月により良い仕込みの機会があると想定しつつも、米AI株に十分肩入れできない間は、日本株や金などの妙味を享受します。


*本稿は個別銘柄を推奨するものではありません、投資はご自身の判断と責任において行ってください。


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(田中泰輔)

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