「円安」という言葉がニュースやSNSでよく見かけ、Googleトレンドでも、注目のキーワードに。「円安が続いている」「円安で物価が上がって大変」など、日常的に聞こえてきます。
ドル円が150円から160円に上がると、なぜ「円安」?
カップラーメンが150円から160円になると値段が高くなったといいます。でも、ドル円が150円から160円になると、「(円が)安くなった」といいます。数字が大きくなったのに安くなったって、これ、ちょっと違和感じゃないですか? 実はこれ、主役と脇役があいまいになっていることが原因なのです。
ドルは、米国の経済規模、金融市場の大きさ、そして(最近はやや揺らいでいるとはいえ)政治的安定性への信頼によって、世界で最も安全かつ流動性の高い通貨として位置づけられています。
そのため米国国内だけではなく、世界中で決済通貨として使われています。世界の貿易や石油や金などの主要商品取引はドル建てで取引されています。またドルは各国の中央銀行が保有する外貨準備の中心であり、世界の外貨準備の6割近くを占めています。
このような理由から、外国(Foreign)通貨を交換(Exchange)する外国為替(FX)市場においては、ドルが主役になっているのです。
通貨ペアの左側が主役
FX市場では、通貨ペアの左側を「基軸通貨(ベース・カレンシー)」、右側を「決済通貨(クォート・カレンシー)」と呼びます。ドル円(USD/JPY)の場合、ドルが基準になって、円はその価値を測る物差しです。つまりドル円とは「1ドルは、何円か」を示しています。
ドル円が150円から160円になったときは、ドルの価値が値上がりした(数字が大きくなった)、つまり「ドル高」と考えます。従って、FX市場で「ドル円が上がった」「ドル円が買われた」という表現が使われるときは、上がったり、買われたりしているのはドルだというのが暗黙のルールです。
ただし、全ての通貨ペアでドルが基軸通貨というわけではありません。例えば、ユーロドル(EUR/USD)やポンドドル(GBP/USD)では、ユーロやポンドが基軸通貨になります。
でも心配することはありません。どちらが基軸通貨なのか見分け方は簡単です。基軸通貨は左側です。つまり通貨ペアの左側が何かを見れば、どちらの通貨が基準になっているかがすぐに分かります。
このルールが分かっていれば、ユーロスイス(EUR/CHF)やポンド豪ドル(GBP/AUD)などのクロス通貨でもレートが示していることもパッと見て分かるようになります。ユーロスイスは、1ユーロは何スイスフランかということで、ポンド豪ドルが上がったというときは、ポンドが(豪ドルに対して)上昇したことを意味します。
円安(円高)という表現が混乱を招きやすいのは、日本のメディアはドルを基軸通貨にしたレート表記で、円を主語にしているからです。最初の例でいえば、カップラーメンが150円から160円に値上がりしたことを円が安くなったと表現しているようなものです。
もし円安、円高という表現を使うなら、円を基軸通貨にした表記にするべきです。1ドル=150円というのは、100円=0.666ドルです。ドル円が150円から160円に動いた場合、円ドル(JPY/USD)では、100円で買えるドルが0.666ドルから0.625ドルに減ります。
つまり円の価値が下がったことになります。こちらの方が「円安」という言葉にしっくりくるかもしれません。海外の両替店ではこのような表記になっていることが多いですね。
今回は、円安って何?ということについて説明しました。
円安というのは、その意味通り円の価値が下がるということです。しかしFX市場では、円ではなくてドルが主役です。ドル円ならば、円安というよりドル高という見方をすることが大事でしょう。
ではどこからが円安で、どこからが円高になるのでしょうか? 次回はこのことについて深掘りしたいと思います。
(荒地 潤)

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