米国市場では「トランプ劇場」や「AI相場疲れ」で不確実性が高まっています。こうした投資環境でも、記録的な連続増配を続けるウォルマートやP&Gなど、「配当貴族」や「配当王」に注目。
米国市場がVUCAに直面:「配当貴族」や「配当王」の堅実性に注目
米国市場を覆う複数の不透明要因が強まっています。投資業界で指摘されてきた「VUCA」とは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の略称です。1月中旬以降に株式市場の重しとなってきたリスク要因を図表1に整理しました。
「トランプ劇場」は昨年に続き、今年も波乱要因。ドンロー主義と称する「力による国際秩序」を背景にした年初のベネズエラ攻撃に続き、先週末はイランへの軍事攻撃に至りました。
昨年11月以降はAIへの過剰投資懸念や新興AI企業アンソロピックの進化を受けてSaaS*関連株が急落。 エヌビディア(NVDA) が2月25日に好決算を発表したにもかかわらず株価が下落するなど「AI相場疲れ」が顕在化し、ナスダック総合指数のセンチメントは悪化しています。
2月20日には連邦最高裁がトランプ関税(相互関税)を憲法違反との判決を下し、大統領は即日で代替関税(10%)を公表。翌21日に関税率を15%へ引き上げると表明する朝令暮改で市場に混乱を与えました。
* SaaS…ソフトウエアをインターネット経由で提供するクラウド型サービスの一種
一方、1月に公開された「エプスタイン・ファイル**」(約300万ページ)に起因する疑惑が党派を超えた政財界に広まり大統領自身やラトニック商務長官にも波及。予測市場(Polymarket)は「11月中間選挙の下院選でトランプ共和党が敗北する確率」を84%と見積もっています。
こうして不透明要因が交錯する中、「配当貴族」や「配当王」と呼ばれる長期にわたり着実に株主還元を積み上げてきた企業群が相対的に注目されています。
**エプスタイン・ファイル…エプスタイン・ファイルは、児童性的人身売買で起訴され、拘留中に死亡した、謎の大富豪、ジェフリー・エプスタインに関する捜査の過程でまとめられたファイル。政財界やハリウッドの大物、さらには王族の名前までが関係者リストに並び、真偽と闇の深さが今、話題となっている。
図表1:米国市場が直面するリスク要因(一覧)
米国市場の「配当貴族指数」の長期総収益はS&P500を圧倒
S&P500配当貴族指数(S&P500 Dividend Aristocrats Index)は、S&P500構成銘柄のうち25年以上にわたり毎年(毎期)増配を継続してきた企業群(69銘柄)で構成される株価指数です。単に「配当を払い続けた銘柄群」ではありません。
景気後退や金融危機、金利上昇、パンデミックといった逆風に直面するなど、経済環境がどんなに荒れて業績が落ち込みやすい局面でも、時に資産を切り売りしてでも配当を増やし続けてきた経営陣の強いコミットメント(歯を食いしばる株主還元姿勢の強化)を体現してきた企業群です。
増配の継続は、安定したキャッシュフロー、価格決定力、規律ある資本配分、そして長期的視野に立って配当を増やし続ける株主還元姿勢の証左です。そうした経営姿勢こそが投資家の信頼を積み重ね、資本コストの低下や持続的成長へとつながってきました。
図表2が示すように、2000年以降、配当貴族トータルリターン(配当込み総収益)指数が市場平均を大きく上回ってきました。相場下落局面での相対的な耐久力と配当再投資による複利効果が支えです。
不確実性が高まる局面でも、連続増配という「結果」で信頼を示し続けた企業群は、長期資産形成における質の力を雄弁に物語ってきたといえるでしょう。そして不透明感が強まる今、「配当貴族指数」が年初来の2カ月で10.4%上昇してきたことに注目です(2月末時点)。
図表2:S&P500配当貴族指数とS&P500の長期総収益の推移に注目
「配当貴族」を構成する主力銘柄の年初来騰落はおおむね堅調
配当貴族指数の主力銘柄は、足下の市場環境において総じて年初来騰落率が堅調です。図表3は、配当貴族銘柄のうち時価総額の降順に15銘柄のみを一覧したものです。
図表3:配当貴族指数を構成する主力銘柄の年初来騰落率に注目
これを見ると、とりわけダウ工業株30種平均を構成する30銘柄の中で年初来上昇率トップ(+29.7%)となっている キャタピラー(CAT) は、AI関連を含めたインフラ投資や資源関連需要の拡大を背景に大幅高となっています。
時価総額が初めて「1兆ドル」に到達した ウォルマート(WMT) は昨年12月に上場先をNYSE(NY証券取引所)からナスダックに変更して注目されました。 エクソンモービル(XOM) や シェブロン(CVX) は安定拡大するエネルギー需要と高水準の株主還元が評価されています。
その他、 プロクター・アンド・ギャンブル(PG) 、 コカ・コーラ(KO) といった生活必需品株やブランド飲料株も、強固なブランド力とキャッシュフローを武器に底堅い株価騰落率となっています。
昨年まで市場をけん引してきたテック株がAI関連株軟調の余波で調整する中、資金(マネー)フローはより確実性の高い企業(長期で株主還元を継続してきた銘柄群)へとシフトしているようです(図表3の15銘柄の平均年初来株価騰落率は+13.3%です)。
配当貴族銘柄はしばしば「オールド企業」と見なされがちですが、実際には景気循環や金利循環を超えて増配を続けてきた実績と、絶え間ない株主還元を貫く経営姿勢こそが本質です。不確実性が強まる局面だからこそ、派手さではなく実行力で信頼を積み上げてきた企業群が再評価されている-それが足下の米国市場における物色変化のメッセージと言えそうです。
50年超の連続増配銘柄は「配当王」と呼ばれている
米国市場の配当貴族指数の中でも「50年以上連続増配」を続けてきた企業群は「配当王(Dividend Kings)」と呼ばれます。半世紀超にわたり景気後退や金融危機を乗り越えて増配を継続する姿勢は、単なる高配当株とは一線を画します。
図表4で「配当王」と称される約30銘柄のうち15銘柄のみを一覧にしました。
図表4:「配当王」(Dividend Kings)にあらためて注目する
象徴的なのが生活必需品世界大手のプロクター・アンド・ギャンブルです。69年連続増配を重ね、そのマーケティング手法が世界の実業界で手本とされるP&Gは、分割調整後の1株配当額は長期で数十倍規模に拡大してきました。投資後に株価が横ばいでも増配が続けば取得利回り(Yield on Cost)は年々上昇し、再投資を組み合わせれば複利効果は加速します。
また、 ドーバー(DOV) の「70年連続増配」は異次元です。産業機器や流体制御、冷却装置など複数分野に展開し、事業ポートフォリオを機動的に組み替える分権型経営と規律ある買収や合併(M&A)で安定的なキャッシュ創出力を維持してきました。半世紀超にわたり増配を守り抜く経営姿勢そのものが、配当王というブランド価値を形づくっています。
その他では、 コルゲート・パルモリーブ(CL) 、 ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ) 、コカコーラ、そしてウォルマートや ターゲット(TGT) など消費者に寄り添った価格路線を貫く著名小売企業なども50年以上の連続増配銘柄です。
強固な価格決定力と安定的なキャッシュフローで株主還元を積み上げてきました。減配はもちろん前年実績より増配できなければ「配当王」の称号を失う厳格なルール(S&Pダウジョーンズ社選定)が経営陣の資本配分を律しています。
日本市場でも連続増配記録が25年以上で「配当貴族」の名に値する銘柄が東証で数社上場しています(例: 花王(4452) 、 三菱HCキャピタル(8593) 、 SPK(7466) など)が、50年以上の連続増配を記録する「配当王」は皆無です。
この日米市場の差は株主還元文化の歴史の差を映していると思われます。投資手段としては、米国の配当貴族指数に連動するように運用されている公募型投資信託や東証上場投資信託(ETF)の活用があります。
もちろん、日々の生活で身近に感じる個別銘柄を研究して増配余力を見極める楽しみもあるでしょう。不透明感に覆われるVUCAの時代で、連続増配という「株主への約束」を守り続けてきた企業群に複数業種をまたいで直接株主となることも、長期的視野でトータルリターン(総収益)を追求していく資産形成の醍醐味(だいごみ)となるでしょう。
(香川 睦)

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