中東危機で恐怖指数が上昇する場面でも冷静さが試されます。長期にわたり数々の危機を乗り越え成長してきたのがS&P500。

波乱に惑わされず「米国:世界経済をリードする資本主義国」の業績の伸びに時間と複利を味方に、投資し続けることが、長期的な資産形成において有効な戦略の一つと考えられます。


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米国市場で恐怖指数が上昇 ― 中東の地政学的リスク上昇と原油相場上昇

 地政学的リスクが米国市場のみならず世界市場の投資家心理を強く揺さぶっています。トランプ政権はイスラエルと共同で2月28日、イランの核開発と弾道ミサイル配備を阻止するため「Operation Epic Fury(壮絶な怒り作戦)」を発動。


 初日に最高指導者ハメネイ師や中枢幹部を殺害したことで、昨年6月22日の核施設へのピンポイント爆撃時よりも事態は一段と緊迫しています。


 イランは即日反撃し、原油輸送の大動脈であるホルムズ海峡を封鎖、ウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は急騰しました。想定シナリオは以下の三つです。


(1)革命防衛隊主導の長期対峙(たいじ)で原油高が定着
(2)外交交渉で核開発停止・海峡再開となり原油反落
(3)政権転覆と周辺国仲介で停戦に向かい原油下落


 ただトランプ大統領は「戦闘は40~50日続く可能性」と発言しており先行きは不透明です。原油高は企業コストやガソリン価格を押し上げ、世界株の重荷となります。米国市場では恐怖指数(VIX)は21.44に上昇(3月2日)。


 原油高が続けば企業コストやガソリン価格を押し上げ、世界株の重荷となるのは言うまでもありません。新・中東危機が長期化するかどうかが最大の焦点。図1に市場の不安心理を象徴するVIXとS&P500種指数の推移を示しました。


 VIXはS&P500のオプション価格から算出される予想変動率であり、通常は15~20程度で推移しますが、不確実性が高まると20~30を超え急騰します。

恐怖指数が急上昇すると、リスクパリティ売りや商品投資顧問(CTA)などヘッジファンドによる順張り売りがかさみ、株式が下落しやすくなります。当面は、新・中東戦争の行方と原油相場の方向性に市場の関心が集まります。


図表1:S&P500と「恐怖指数」の推移(2025年初以降)
中東危機で恐怖指数が上昇!S&P500積立投資は続けて大丈夫?
出所:市場実績に基づき著者作成(2026年3月2日)

図表2:「壮絶な怒り作戦」と原油先物相場の急上昇
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出所:各種情報と市場実績に基づき作成(2026年3月2日)

長期視点で米国株式と向き合う ― 名目GDPを超えた利益成長トレンドに注目

 目先の相場波乱とは対照的に、米国市場の長期のトレンド(構造的な収益向上傾向)は明確です。1995年以降、米国の名目国内総生産(GDP)は約7兆ドルから約29兆ドルへと約4.1倍拡大してきました。しかし、米国企業の税引き後純益総額はそれを上回るペース(約7.1倍)で成長してきました(図表3)。


図表3:長期の業績トレンド ― 名目GDPを超えて伸びてきた企業利益成長
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出所:1995年初を100とした米国の四半期別名目GDP額と税引き後企業利益総額(商務省統計)より作成

 その背景には、五つの構造要因があります。


 第一に、グローバル化です。S&P500企業の売上の約4割は海外向けビジネスとされ、世界市場から収益を取り込む体制を確立。米国企業は国内経済成長を超える海外市場拡大の恩恵を受けてきました。


 第二に、技術革新(イノベーション)です。インターネット革命、スマートフォン、クラウド、データ分析経済、そして人工知能(AI)普及へと続く技術進化は、生産性を飛躍的に高めました。高付加価値分野では価格決定力が高まり、利益率の改善につながっています。


 第三に、無形資産中心の経済構造です。

ブランド、ソフトウエア、特許、データなどは規模拡大による限界費用が低く、営業レバレッジが大きくなります。資本集約型産業に比べて利益率が安定しやすい特徴があります。


 第四に、資本効率重視経営の定着です。経営者は自己資本利益率(ROE)向上を意識し、自社株買いや事業再編を通じて資本を効率化する経営が一般化しました。1995年以降の自社株買い累計額は数兆ドル規模に達し、1株当たり利益(EPS)を押し上げる効果をもたらしました。


 第五に、ドル基軸通貨体制と金融市場の厚みです。世界最大の資本市場を有する米国では、資金調達コストが相対的に低く、イノベーション企業が成長資金を得やすい環境があります。ドルが基軸通貨であることは、国際資金の流入を促し、企業価値の成長を後押ししてきました。


 これらが、「名目GDPを上回る利益成長構造」を確立してきました。今後も「世界最強の資本主義経済」であろう米国企業の業績の伸びを巡る期待が長期的な株高傾向のエンジンと言えるでしょう。


相場は荒れた方がいい?長期積立投資が示すドルコスト平均と複利の力を検証

 中東情勢の緊迫化など米国市場がしばらく波乱含みを余儀なくされる可能性は排除できません。しかし、過去30年のS&P500(円ベース)への積立投資実績(長期市場動向に基づく検証)が示すのは、別のファクトです。


 1995年以降の約30年間には、ITバブル崩壊、リーマンショック、欧州債務危機、コロナショックなど株価の急落や乱高下は幾度もありました。


 しかし、相場の上下を気にせず毎月積立投資(定時定額投資)を継続した場合、S&P500種指数(円建て)の長期的な年率リターンはおおむね+12.4%(配当を除く)となり、複利効果(雪だるま効果)を支えに1995年初比で約23倍となり、投資資産の時価は約1億3,243万円となりました(図表4/2月末時点)。


図表4:株価は荒れた方がいい?長期積立投資が示す複利の力を検証
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出所:長期市場実績(円換算S&P500/月末値)に基づく検証(2026年2月末)*上記は参考情報であり将来の投資成果を保証しません。

 為替相場では、ドル高・円安局面が追い風となる局面が多く、日本の投資家にとっては為替差益も享受できました(1995年以降のドル円相場は年率平均で+2.1%のドル高円安でした)。公募型投信を活用した積立投資では、株価下落局面では安値で多くの口数を取得でき、その後の回復局面で大きな果実を得ることができました(ドルコスト平均効果)。


 積立投資は予見が難しい価格変動をリスクではなく時間を「味方」に変えながらリターンがリターンを増やす仕組み(複利運用効果)を期待する資産形成です。株式相場は短期的には感情(市場心理の揺れ)で動きます。


 しかし、長期では上述のように企業利益の成長トレンドに株式の大勢が収縮してきた傾向が知られています。過去30年超にわたる米国株への積立投資の検証は、相場変動に動揺せず、定時定額投資が合理的であったことを示します。


 図表4で示す通り、1995年初を起点とする長期市場実績を振り返るとS&P500は世界株価指数(オールカントリー)や東証株価指数(TOPIX)を大きく上回る成果を示してきました。これは、ウイリアム・シェークスピアの戯曲「テンペスト」にある「The past is prologue(過去は序章にすぎない=過去は未来の鏡である)」との名言を想起させます。


 歴史は未来の土台であり、米国資本主義の進化の軌跡そのものです。幾多の危機や需給波乱を乗り越えて世界市場や日本市場をしのぐ利益成長を続けてきたS&P500種指数の実績は、世界最強の企業群の集合体である事実を物語ると言えるでしょう。


 短期的なボラティリティ(変動性)に惑わされず、時間と複利を味方に米国株式に積立投資を継続することこそ、再現性の高い資産形成戦略における「王道」といえるでしょう。


図表5:米国株(円)、世界株(円)、日本株の長期市場推移を比較する
中東危機で恐怖指数が上昇!S&P500積立投資は続けて大丈夫?
出所:長期市場実績(ドル建ておよび円建て/月末値)より作成(2026年2月末)

(香川 睦)

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