原油価格上昇が米シェール企業に及ぼす影響について、ダイヤモンドバック・エネルギーを題材にシミュレーションしました。計画通りの生産を行う中で原油価格上昇は収益にプラス影響をもたらし、原油価格が年平均100ドル、150ドルとなった場合、現在179ドルの株価は212ドル、259ドルに上昇する結果となりました。


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原油価格とともに株価は上昇トレンド入り

  ダイヤモンドバック・エネルギー(FANG) (株価179ドル:3月2日終値)は、米国最大の原油・ガス生産地帯であるパーミアン盆地(テキサス州西部・ニューメキシコ州南東部)での生産に特化したシェール企業です。詳細は以下の記事をご参照ください。


2025年7月31日: 米シェール開発大手ダイヤモンドバック・エネルギーに「買い」推奨:買収シナジーで利益拡大見込み(西勇太郎)


 2025年7月に「買い推奨」としてご紹介させて頂きましたが、下落基調の原油価格が重石となって、株価は年末まで150ドル近辺での横ばい推移でした。2026年に入って中東情勢が緊迫化し原油価格が上昇に転じると、ダイヤモンドバック・エネルギーの株価も上昇トレンド入り。ホルムズ海峡の実質的な封鎖を経た現在は180ドルに迫る水準となっています。


<原油価格推移(NYMEX WTI)>
原油高騰が米シェール大手ダイヤモンドバック・エネルギーに及ぼす影響は?(西 勇太郎)
出所:NYMEX

<ダイヤモンドバック・エネルギーの株価推移>
原油高騰が米シェール大手ダイヤモンドバック・エネルギーに及ぼす影響は?(西 勇太郎)
出所:ダイヤモンドバック・エネルギー資料等より楽天証券経済研究所が作成

原油価格が150ドルになれば株価は259ドル

 次にダイヤモンドバック・エネルギーの2025年12月期の通期決算を前年度と比較してみると、平均原油価格が0.9倍となったマイナス影響を生産量1.5倍への増加で打ち返して売上高は1.4倍となりました。この生産量増加は同社が積極的に行っている買収戦略が寄与したものです。


 他方で当期利益は半分になりました。これは、期中の原油価格の下落に応じてシェール生産資産の評価損を減損計上したことによるものです。この減損が無ければ、当期純利益は1.4倍程度への増加となっていたと考えられます。


 2025年は原油価格下落が株価の重石となる一方、株主資本が概ね横ばいだったため、時価総額は0.9倍へと減少しました。PBRは1.3倍から1.2倍へと低下しています。


<ダイヤモンドバック・エネルギーの業績(2024年度と2025年度の比較)> (百万ドル) 2024年 2025年 変化 実績 実績 倍 平均原油価格($/バレル) 77 65 0.9 原油換算生産量(千バレル/日) 600 921 1.5   うち、原油 338 497 1.5 売上高 11,023 14,929 1.4   うち、原油 8,963 11,458 1.3 減損 0 3,652 - 当期純利益 3,338 1,664 0.5 株主資本等合計 37,736 36,972 1.0 株価(ドル) 164 150 0.9 時価総額 47,837 43,073 0.9 PBR(倍) 1.3 1.2 - PER(倍) 14 26 - 出所:ダイヤモンドバック・エネルギーの資料等より楽天証券経済研究所が作成

 2026年12月期の業績シミュレーションを、原油価格のみを変化させる形で、2026年の足元までの平均価格水準である65ドル、節目の100ドル、150ドルの3パターンについて行ってみると、現在の時価総額が変わらなかった場合、PBRはそれぞれ1.2倍、1.1倍、0.9倍となります。


 2024年12月期のPBR水準である1.3倍になるまで株価が上昇したとすると、65ドル、100ドル、150ドルのパターンでそれぞれ株価は194ドル、212ドル、259ドルになります。


<ダイヤモンドバック・エネルギーの2026年度業績シミュレーション> (百万ドル) 2025年 2026年シミュレーション 実績 65ドル 100ドル 150ドル 平均原油価格($/バレル) 65 65 100 150 原油換算生産量
(千バレル/日) 921 944 944 944   うち、原油 497 505 505 505 売上高 14,929 14,915 21,295 30,512   うち、原油 11,458 11,804 18,184 27,400 当期純利益 1,664 3,586 8,853 16,461 株主資本等合計 36,972 39,356 44,623 52,231 株価(ドル) 150 179 179 179 時価総額 43,073 49,104 49,104 49,104 PBR(倍) 1.2 1.2 1.1 0.9 PER(倍) 26 14 6 3 出所:ダイヤモンドバック・エネルギー、FactSetの資料等より楽天証券経済研究所が作成

石油・ガス開発同業他社比でPBRに割安感があり、解消されれば株価は226ドル

 ここまではダイヤモンドバック・エネルギーが今後の原油価格の変化によって取りうる「将来の株価」について複数パターンで検討してきました。他方、同社の「現在の株価」は同業他社比で割安な状況にありますので、この点に触れさせて頂きたいと思います。


 ダイヤモンドバック・エネルギーの比較対象に適する石油・ガス開発の上場同業他社のうち、既に2025年度の決算を発表済みの企業には、ノルウェーの エクイノール(EQNR NYSE) 、米 コノコフィリップス(COP NYSE) 、カナダの セノバズ・エナジー(CVE NYSE) 、カナダの サンコア・エナジー(SU NYSE) 、米 EOGリソーシズ(EOG NYSE) 、米 オキシデンタル・ペトロリアム(OXY NYSE) 、米 EQTコーポレーション(EQT NYSE) 、米 アンテロ・リソーシズ(AR NYSE) 、米 レンジ・リソーシーズ(RRC NYSE) などがあります。


 これらの主要石油・ガス開発企業について、ROE(3年平均)を横軸、PBRを縦軸とした散布図を作成すると、概ね比例関係にあることがわかります。その中で、ダイヤモンドバック・エネルギーについては大きく割安方向にずれており、この点から、株価に割安感があると言えます。この割安感が解消された場合のダイヤモンドバック・エネルギーのPBR(散布図の青破線に乗る水準)は1.8であり、相当する株価は226ドルです。


<主な石油・ガス開発企業のROEとPBRの関係>
原油高騰が米シェール大手ダイヤモンドバック・エネルギーに及ぼす影響は?(西 勇太郎)
出所:各社資料より楽天証券経済研究所が作成

<主な石油・ガス開発企業10社のROEとPBR> 社名 証券
コード 取引所 売上高 3年平均
ROE PBR 百万ドル % 倍 Equinor EQNR NYSE 105,828 18 1.8 ConocoPhillips COP NYSE 58,944 17 2.2 Cenovus Energy CVE NYSE 37,754 13 1.8 Suncor Energy SU NYSE 37,486 16 2.0 EOG Resources EOG NYSE 22,582 23 2.2 Occidental Petroleum OXY NYSE 21,593 8 1.5 Diamondback Energy FANG NASDAQ 14,929 12 1.3 EQT EQT NYSE 8,353 8 1.6 Antero Resources AR NYSE 5,014 4 1.5 Range Resources RRC NYSE 2,988 16 2.2 出所:各社資料より楽天証券経済研究所が作成

 また、これらの企業の予想配当利回りを比較すると、ダイヤモンドバック・エネルギーは他の企業と概ね同等の利回りとなっており、そん色ない状態にあると言えます。


<主な石油・ガス開発企業10社の予想配当利回り> 社名 証券
コード 取引所 昨年度 今年度 実績配当 総還元 予想配当 % % % Equinor EQNR NYSE 6.4 14.1 5.0 ConocoPhillips COP NYSE 2.8 6.3 2.9 Cenovus Energy CVE NYSE 3.4 7.5 2.6 Suncor Energy SU NYSE 3.8 7.0 3.1 EOG Resources EOG NYSE 3.2 6.9 3.2 Occidental Petroleum OXY NYSE 2.3 0.5 1.9 Diamondback Energy FANG NASDAQ 2.3 3.8 2.3 EQT EQT NYSE 1.0 1.0 1.1 Antero Resources AR NYSE 0.0 1.1 0.0 Range Resources RRC NYSE 0.9 3.1 0.9 出所:各社資料等より楽天証券経済研究所が作成

 ここまで述べさせて頂いた通り、ダイヤモンドバック・エネルギーは2025年の平均原油価格が65~150ドルのレンジで変化した場合、現在179ドルである株価は194~259ドルのレンジで変化する計算となります。


 また、現在の株価179ドルは、2025年度の決算を踏まえて同業他社比較を行った場合に割安感があり、その割安感が解消された場合の株価は226ドルという計算になります。


(西 勇太郎)

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