2027年1月のiDeCo限度額引き上げに先駆け、2026年4月から企業型確定拠出年金のマッチング拠出上限が撤廃されます。これにより、月5.5万円の枠がフル活用できるようになり、さらに12月には月6.2万円まで拡大。

iDeCoとマッチング拠出、どちらを選ぶべきか、改正のポイントなどを紹介します。


4月から企業型DCのマッチング拠出「上限撤廃」、iDeCoか...の画像はこちら >>

2026年4月、iDeCo改正に先行してマッチング拠出の上限撤廃へ

 2027年1月からiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)の拠出限度額引き上げが行われます。制度上は2026年12月から切り替わり、2027年1月の掛金引き落としから増額される予定です。


 これにより、最大で月6.2万円まで拠出できるようになります。現在、月2.0万円ないし月2.3万円といった上限も取り払われるので、多くの方の枠拡大につながると期待されています。


 しかし、このiDeCoの改正に先行して、もうひとつの「拠出枠の拡大」が2026年4月から実施される予定です。それは、企業型の確定拠出年金(企業型DC)における「マッチング拠出」の上限撤廃です。


 iDeCoと企業型DCにおけるマッチング拠出はどちらも「本人のお金を掛金として拠出する」「掛金が所得控除の対象となる」という特徴を持っており、「運用益は非課税」という点では共通です。


 ただし、「iDeCoとマッチング拠出のどちらかの制度しか利用できない」という規制があったため、制度選択に悩むという問題がありました。


 今回は、改正のポイントと「iDeCoとマッチング拠出はどちらにすべきか」というテーマをお話します。


月5.5万円と会社の掛金額との差分がフル活用可能に

 改正のポイントをもう少し詳しく見ていきましょう。2026年3月まで、マッチング拠出の上限額は以下のような規制がありました。


規制1:月5.5万円が上限


規制2:確定給付企業年金がある場合はその掛金額(他制度掛金相当額)と、企業型確定拠出年金の会社負担の掛金額、そしてマッチング拠出額の合計で月5.5万円は超えられない


規制3:企業型DCにおける会社掛金額より多く負担することはできない


 ややこしいので以下表に、確定給付企業年金がない場合にiDeCoとマッチング拠出の有利不利についてまとめました。


会社掛金額 マッチング上限 有利不利 5,000円 5,000円 iDeCo 10,000円 10,000円 iDeCo 15,000円 15,000円 iDeCo 20,000円 20,000円 同等 25,000円 25,000円 マッチング 27,500円 27,500円 マッチング 35,000円 20,000円 同等 45,000円 10,000円 同等 50,000円 5,000円 同等 55,000円 0円 同等 ※確定給付企業年金がない場合

 つまり、これまでは「会社の掛金が2万円まではiDeCoが有利(必ず2万円出せるため)」で「会社の掛金が2万円超から3万5,000円まではマッチング拠出が有利(2万円より多く出せるため)」となっていました。


 しかし、2026年12月の改正で、iDeCoの拠出上限額が「月6.2万円と企業年金の掛金額合計の差分全て」となることに先行し、2026年4月から、マッチング拠出も「月5.5万円と企業年金の掛金額合計の差分全て」まで拠出できるようになります。つまり前述の規制3が削除されるわけです。


4月から企業型DCのマッチング拠出「上限撤廃」、iDeCoから乗り換えるのが得?
2026年4月改正マッチング上限規制の撤廃の図解

 この改正は、企業ごとの整備が必要であるため、iDeCoの上限引き上げよりも早く先行実施し、2026年12月までに各社に対応を求めているものです。


会社の対応状況を確認、iDeCoからの切り替えはすぐできないことも

 各社が確定拠出年金規約の変更や、社内制度、金融機関とのシステム連携を行う必要があるため、マッチング拠出の上限撤廃の実施時期は会社ごとに異なります。


 2026年4月から即座に実施する会社もあれば、少し遅れて開始するケースもあります。iDeCoの限度額が月6.2万円に引き上げられる2026年12月のタイミングに合わせて改定する会社もあるようです。まずは社内制度の対応状況を確認してください。


 なお「企業型DCはやっているが、マッチング拠出は実施していない」という会社もあり、この場合は規制緩和は関係ないこととなります。


 すでにマッチング拠出をしている人は、社内手続きにのっとって掛金額変更を行えば問題ありません。ややこしくなるのは「今はiDeCoに入っているけど、マッチング拠出に切り替えたい」という人です。マッチング拠出のほうが、iDeCoの月2万円より有利になる可能性があるからです。


 この場合、iDeCoとマッチング拠出の同時加入はできませんので、切り替えは「iDeCoの掛金拠出を停止する」→「iDeCoの立場が運用指図者になる(掛金を納めない立場をこういう)」→「社内で新規にマッチング拠出を始めたい旨、申し出て手続きをする」という流れになります。


 焦って二重加入状態の申し込みとなってしまうと、手続きが複雑になりますので注意してください。

同月に2カ所に掛金納付された場合、どちらかの制度でひと月分だけ還付されるが、手数料を引かれるはめになります。


 また、iDeCoの掛金停止手続きやマッチング拠出の加入手続きに時間がかかった場合、1、2カ月の掛金ゼロ期間が生じる可能性もあります。


「iDeCo停止、即マッチング」とはいかないわけです。


長い目で見ればiDeCoからマッチングに切り替えなくてもいいか

 もしあなたがiDeCoで積立投資をしているのであれば、「年内はマッチング拠出に変更し、2027年1月分からはまたiDeCoに戻す」といった戦略を無理して採らなくてもいいと思われます。


 実務上の問題で、数カ月ごとのタイムラグが生じたとしたら、そのまま年内はiDeCoのままとし、上限が月6.2万円に引き上げられる12月にフル活用する掛金額変更を行えば十分でしょう。


 今回の改正によりiDeCoとマッチング拠出の上限ルールは共通化されます。そのため、「今後はマッチング拠出のほうで運用を一本化したい」と考えているのであれば、長い目で見て数カ月のブランクを気にせず、マッチング拠出へ移行するほうがメリットが大きいかもしれません。マッチング拠出は一般的に口座管理手数料がかからないもの(会社が負担)である分有利にはなります。


 一方で、iDeCoのほうが運用商品の選択が魅力的であることが多く(例えばオールカントリー系投信が企業型にはないことが多い)、また投資信託の運用管理手数料も低い傾向があるため、iDeCoのままにしたほうが有利な可能性もあります。


 ご自身の会社の企業型DCの商品ラインアップと、運用管理手数料の条件をチェックしてみてください。iDeCoの口座管理手数料に当たる年2,052円よりも運用コストが安くなればいいわけですから、仮に本人拠出残高が100万円相当あったとして、年0.2%以上安くなればiDeCoのままでいいことになります。


 企業型DCでは、「国内株インデックス:年0.7%」「外国株インデックス:年1.0%超」のような投資信託がいまだに残っているので、これならiDeCoのほうが明らかに有利でしょう。


 もし、iDeCoなみの運用管理費用で企業型DCの運用商品がラインアップされているのであれば、マッチング拠出で一元化したほうが有利となります。


4月にマッチング拠出の掛金額変更をした人は年末の手続きもお忘れなく

 ところで、4月の法改正では、マッチング拠出の限度額が「月5.5万円」まで規制緩和されますが、12月には「月6.2万円」の限度額に引き上げが行われます。


 もし、社内制度が4月に限度額の規制緩和を実施し、そのタイミングで上限まで増額手続きをした人は、12月にはさらに月7,000円の増額が可能となります。


 これは再手続きが必要となりますので、秋以降の社内通知をよく確認しましょう。


(山崎 俊輔)

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