米国大手ITの設備投資(主に生成AI向け設備投資)は2026年に50~60%伸びると予想される。このため、足元のAI半導体需要は好調。
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毎週月曜日午後掲載
本レポートに掲載した銘柄: アドバンテスト(6857、東証プライム) 、 ディスコ(6146、東証プライム) 、 東京エレクトロン(8035、東証プライム) 、 レーザーテック(6920、東証プライム) 、 エヌビディア(NVDA、NASDAQ) 、 ブロードコム(AVGO、NASDAQ)
1.2026年の生成AI向け設備投資は大幅増へ。
米国の大手ITの2026年設備投資は前年比50~60%増と予想されます。これと、エヌビディアの2027年1月期1Q、ブロードコムの2026年10月期2Q(いずれも2026年2-4月期)の会社側業績予想を見ると、2026年のAI半導体需要は引き続き高い伸びが予想されます。
このため、日本の半導体製造装置メーカー4社(アドバンテスト、ディスコ、東京エレクトロン、レーザーテック)の2027年3月期は業績好調が予想されます。
表1 米国大手ITの設備投資額(暦年)
グラフ1 AI半導体の売上高
2.生成AI向け設備投資の今後と半導体製造装置メーカーへの影響。
エヌビディア、ブロードコムの決算電話会議等を参考に、半導体デバイス、半導体製造装置の2026年、2027年についてポジティブな要因を挙げると次のようになります。
- 生成AI需要の拡大とAIデータセンターの大型化に伴い、AI半導体需要は強い状態が続いている。
- 特注型AI半導体の需要も強い状態が続いており、2028年の契約も進んでいる模様。
- 特注型AI半導体では、従来1つの特注型AI半導体で推論・学習の両方を行っていたものを、推論・学習ごとに専用AI半導体を設計することで全体の性能向上を目指す動きがでている。この場合、AI半導体の出荷個数が増加すると思われる。
- AIデータセンターの規模が巨大化し、扱うデータ量が大きくなるにつれ、CPUも重要になってきた。
- 従来型の情報システムへの投資(サーバー、パソコン、通信機器、各種のソフトウェアなど)がAI投資に置き換わっている傾向がある。
- HBM、AIサーバーのメインメモリ(DRAM)、ストレージ(SSD、NAND)の容量も傾向的に大きくなっている。
- 半導体製造装置需要に対しては、AI半導体とCPU、DRAM、NANDの総個数が増加している。アドバンテストのSoCテスタ、メモリ・テスタ、ディスコのダイサ、グラインダ、東京エレクトロンの前工程の各装置に対して需要増加要因となろう。
- 最先端CPUもサーバー、パソコン(各種のAIを高速処理するため、パソコンのCPU、GPUで処理する需要が増えると思われる)の両方で重要となれば、レーザーテックのEUV露光装置用フォトマスク欠陥検査装置の需要増加要因になろう。
一方で、AI半導体と半導体製造装置に対してネガティブな見方、ニュースもでています。
- エヌビディアの2026年1月期4Q決算電話会議では、2026年の米国大手ITの設備投資7,000億ドル(アマゾン・ドット・コム、マイクロソフト、アルファベット、オラクル、メタ・プラットフォームズの5社合計、前年比50%以上の増加)を2027年も維持するのは難しいのではないかと多くの投資家(機関投資家)が懸念しているという質問がアナリストからあった。
- これまでのAI半導体と大規模AIデータセンターの最終的な最大口ユーザーはオープンAIと思われるが、アルファベットのGeminiがアプリユーザー数でも性能でも急速に追い上げている。Geminiはユーザー数43億人のグーグル検索のAI検索にも使われており、早晩ChatGPTの性能を抜く可能性がある。また、コーディングと文書生成、長文読解ではアンソロピックのクロードが追い上げている。従ってオープンAIの設備投資がこれまでのように高い伸びが続くかどうか不透明感がある。
- アンソロピックは米国政府と米国政府と関係のある企業からは締め出されてしまったが、ChatGPTからクロードに乗り換えるユーザーが多いため、急速な設備投資が必要になっている。ただし、オープンAIに匹敵する投資になるかどうか不透明。アルファベットは早い時期に自社製AI半導体「TPU」を開発しており、効率的なシステム開発と設備投資に熱心なので、生成AI向け設備投資でオープンAIに代わる企業になるか、これも不透明である。
- エヌビディアはオープンAIの大口出資者だが、最近今年2月に発表した300億ドルの出資が最後になる可能性があるという認識を示した。オープンAIが今年中に株式を上場する可能性があることに伴う発言だが、オープンAIの株式上場の結果次第では同社の資金調達に問題が起こる可能性もあり、これはオープンAIの設備投資が抑えられる要因となろう。
- 従って時間軸が長期になるほど生成AI向け設備投資の伸びについては不透明感が強くなっているのが現状であろう。
- 報道によれば、オラクルとオープンAIは、テキサス州にあるAI向けデータセンターの拡張計画を取りやめた。このデータセンター計画はAIインフラ構築プロジェクト「スターゲート」の一環だが、資金調達を巡る協議が長引き、オープンAIの需要にも変化が生じたため。この地域では代わりにメタ・プラットフォームズがデータセンターの拡張を検討している模様。今後同様のニュースが続くようだと、オープンAIの設備投資の変調を示すものになる可能性があり、それが生成AI向け設備投資全体の変調に繋がる可能性もあろう。
3.日本の半導体製造装置メーカー4社の業績予想を上方修正するが、投資する際は各社に対する個別判断が重要になろう。
このように、生成AI向け設備投資は2026年も大幅に増えると予想されていますが、2027年以降は不透明になっています。また、オープンAIの設備投資に対する懸念が大きくなれば、早ければ2026年後半、遅くとも2027年前半には生成AI向け設備投資が鈍化する可能性もあります。
この状況を見て、日本の半導体製造装置4社の業績予想を上方修正します。
各社の株価を考える際に注意しなければならないのが米国とイランの戦争の影響です。イランが湾岸諸国のインフラ、例えば海水淡水化プラントを攻撃する可能性が指摘されていますが、その場合、湾岸諸国は水を含む大量の生活物資をこれまで以上に輸入しなければなりません。そのための現金を確保するために保有している各国の株式を売る必要があります。この問題はすでに株式市場で連想されているため、米国と日本の株価が下落する要因になっています。
また、原油価格上昇は電力価格上昇を通じて生成AI向け設備投資にとってマイナス要因になると思われます。
これで見てきたように生成AI向け設備投資が2027年以降も伸びるかどうかについても、不透明感があります。
このため、エヌビディア、ブロードコムだけでなく、日本の半導体製造装置メーカーの株価も当面は上昇しにくい要因を抱えることになると思われます。今回はアドバンテスト、ディスコ、東京エレクトロン、レーザーテックの今後6~12カ月間の目標株価を前回と同じとしました。株価が大きく下落しているためリバウンドが期待できると思われますが、株価が下落している要因が生成AI向け設備投資の鈍化懸念と株式の需給関係の悪化懸念によるものなので、短期間での成果は期待しにくい可能性があります。
アドバンテスト
アドバンテストの楽天証券業績予想は2026年3月期は修正しませんが、2026年の設備投資好調を織り込んで、2027年3月期業績予想を上方修正します。2027年3月期の新しい業績予想は売上高1兆3,600億円(前年比27.1%増)、営業利益6,800億円(同47.8%増)とします。前回予想の売上高1兆2,900億円(同20.6%増)、営業利益6,280億円(同36.5%増)から上方修正します。
AI半導体の好調だけでなく、CPUの好調も予想されます。また、従来はSoCテストでは、回路を描き込んだ後のウェハテストと、チップをパッケージングした後の完成品にする直前の後工程テストの2回のテストを行ってきました。これに加えて、露光装置によって回路を描画したウェハをチップに切り出した後の「ダイレベルテスト」(四角いチップを「ダイ」という)が、特に複雑で高額なAI半導体のテストにおいて2026年後半から導入されると言われています。これは直接SoCテスタの需要増加に繋がると思われます。
これらの状況と現在の株価の調整の両方を評価して、アドバンテストの今度6~12カ月間の目標株価は、前回の3万円を維持します。株式市場が落ち着けばリバウンドが期待できると思われます。
表2 アドバンテストの業績
表3 アドバンテストの事業別売上高
表4 アドバンテストの地域別売上高(通期ベース)
ディスコ
ディスコの楽天証券業績予想は、2026年3月期は修正しませんが、2027年3月期は小幅上方修正します。2027年3月期は、大手メモリメーカーのHBM4へ向けての設備投資が増加する期待が持てます。
ディスコの今後6~12カ月間の目標株価は、前回の8万5,000円を維持します。株式市場が落ち着けばリバウンドが期待できると思われます。
表5 ディスコの業績
東京エレクトロン
2026年は東京エレクトロンにとっても、AI関連を中心に半導体設備投資増加の要因が多いと思われます。AI関連には、AI半導体、HBM、DRAM、NAND、通信用半導体など、各種の先端半導体が幅広く含まれるため、生成AI向け設備投資の拡大は東京エレクトロンにとって業績拡大の機会が大きくなります。
ただし、反対に生成AI向け設備投資に鈍化懸念が出たときには、株価の圧迫要因になると思われます。
楽天証券の2026年3月期予想は修正しませんが、2027年3月期業績予想を上方修正します。今回の2027年3月期楽天証券業績予想は、売上高3兆600億円(前年比24.9%増)、営業利益8,300億円(同36.1%増)とします。前回の売上高2兆9,500億円(同20.4%増)、営業利益7,900億円(同29.5%増)から上方修正します。
今後6~12カ月間の目標株価は前回の5万1,000円を維持します。
表6 東京エレクトロンの業績
表7 半導体製造装置のアプリケーション別売上構成比と売上高(新規装置のみ)(年度ベース)
表8 東京エレクトロンの中国向け売上高
レーザーテック
レーザーテックの2026年6月期、2027年6月期、2028年6月期(参考値)の楽天証券業績予想を上方修正します。
2026年6月期は売上高2,300億円(前年比8.5%減)、営業利益1,070億円(同12.9%減)、2027年6月期は売上高2,900億円(同26.1%増)、営業利益1,420億円(同32.7%増)、2028年6月期(参考値)は売上高3,600億円(同24.1%増)、営業利益1,830億円(同28.9%増)と予想します。
レーザーテックは、AI半導体向けだけでなく、最先端CPUの需要動向が重要になります。AI半導体は2025年後半から量産開始、2026年後半出荷開始予定のエヌビディアの「Rubin」から従来の4ナノから3ナノに移行すると思われます。ブロードコムの最先端XPU(ブロードコムの特注型AI半導体)も3ナノ化する見込みです。この動きは、レーザーテックのEUV露光装置用フォトマスク欠陥検査装置の「ACTIS A150」「A200HIT」にポジティブな影響を与えると思われます。
また、最先端CPUは2025年後半から量産開始した2ナノで生産されますが、2ナノは「ACTIS A150」「A200HIT」だけでなく、最新型の「A300」の需要が増えることになります。
AI半導体だけでなく、最先端CPUの需要が増えることが業績が伸びる要因になることがレーザーテックの株価を見る上でのポイントと思われます。
今後6~12カ月間の目標株価は前回の4万円を維持します。株価が落ち着けば中長期で投資することを検討したいと思います。
表9 レーザーテックの業績
表10 レーザーテックの売上高内訳:通期ベース
本レポートに掲載した銘柄: アドバンテスト(6857、東証プライム) 、 ディスコ(6146、東証プライム) 、 東京エレクトロン(8035、東証プライム) 、 レーザーテック(6920、東証プライム) 、 エヌビディア(NVDA、NASDAQ) 、 ブロードコム(AVGO、NASDAQ)
(今中 能夫)

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