年度末の3月は、高配当利回りや株主優待など実利が分かりやすい銘柄が注目されがち。一方、長期の資産形成では、「連続して増配」している企業に目を向けることも大切だ。

予想配当利回りが2~3%程度でも、安定した利益と財務基盤を維持している企業は時間を味方にした成長が期待できる。25年以上連続増配の「レジェンド日本株」を紹介する。


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「連続増配企業」に見られる二つの条件

 2026年3月期決算企業の権利取り最終売買日は3月27日(金)です。この日の大引けまで株式を保有しておけば、配当や優待を受け取る権利がもらえます。


 決算期末を控えたこの時期は、「せっかく投資するなら配当や優待を受け取りたい」という実利志向が強まり、いわば東京市場の季節的な風物詩ともいえる動きが見られます。しかし、こうした短期的な権利取りの視点だけではなく、中長期投資の観点から注目したいのが連続増配銘柄です。


 連続増配とは、毎年配当金を増やし続けている企業のことです。配当は企業の利益から支払われるため、利益が安定していなければ増配を続けることはできません。また、一時的に利益が増えただけでは連続増配は難しく、景気の変動や市場環境の変化を乗り越えながら利益を積み上げていく力が必要です。


 さらに重要なのは、財務の健全性です。借入金が多く資金繰りに余裕のない企業では、景気が悪化した際に配当を減らさざるを得なくなることがあります。


 一方、連続増配企業の多くは自己資本比率が高く、手元資金にも余裕があります。このような企業は不況期でも配当を維持しやすく、場合によっては増配を継続することも可能です。

つまり連続増配は「利益の安定性」と「財務の安全性」という二つの条件がそろって初めて実現できるものなのです。


「高配当」よりも「連続増配」に注目する理由

 投資家にとって連続増配銘柄の魅力は、配当収入が年々増えていく可能性があることです。購入時の配当利回りがそれほど高くなくても、増配が続けば数年後には実質的な利回りが大きく上昇します。これは長期投資の醍醐味(だいごみ)の一つといえるでしょう。


 また、増配を続ける企業は市場からの信頼も厚く、株価が比較的安定しやすい傾向があります。結果として値上がり益(キャピタルゲイン)と配当収入(インカムゲイン)の両方を期待できる点が特徴です。


 一方、高配当利回り銘柄の中には一時的に配当が高くなっているだけのケースもあります。業績悪化で株価が下落し、結果として利回りが高く見えている場合も少なくありません。このような銘柄では減配リスクが潜んでいることも多く、表面的な利回りの高さだけで判断するのは危険です。


 その点、連続増配銘柄は企業の継続的な成長力を反映しているため、いわば「企業の通信簿」ともいえます。毎年着実に増配できる企業は、事業の競争力が高く、収益モデルがしっかりしている場合が多いのです。


 3月の権利取り最終売買日を前に銘柄選びを進める際には、「今年いくら配当がもらえるか」だけではなく、「この企業は来年も増配できるか」という視点を持つことが重要です。安定した利益と健全な財務を備えた企業は、時間を味方につけることで投資成果を積み上げやすいからです。


 配当は企業から株主へのメッセージともいわれますが、そのメッセージが毎年強まっていく企業こそ、長く付き合える投資先といえるのではないでしょうか。


25年以上連続増配!安定業績の日本株5選

 こうした観点から、今回は連続増配銘柄を5銘柄ご紹介します。いずれの銘柄も予想配当利回りは2~3%台と「非常に高い」という水準ではありません。


 ただ、安定した業績と財務を背景に、2023年スタートの東京証券取引所による『PBR改革』よりはるか前から、配当実績を積み上げてきた「レジェンド銘柄」です。なお、今回は証券コード順ではなく、連続増配ランキング順にご紹介します。


銘柄名 証券コード 株価(円)
(3月10日終値) 特色 花王 4452 6,294 国内トップの連続増配記録を持つトイレタリー SPK 7466 2,633 自動車産業を支える縁の下の力持ち 三菱HCキャピタル 8593 1,447.5 長期安定収入が魅力の総合リース大手 ユー・エス・エス 4732 1,786 需要旺盛な中古車市場が安定収益源 リコーリース 8566 6,090 親会社グループの顧客基盤も安定収益源

花王(4452)

 日本を代表する連続増配銘柄で、2026年12月期予想ベースでは37期連続増配となる見通しです。1980年代末から減配を行っておらず、連続増配記録は東京市場でダントツです。足元の業績は低迷期から脱却しており、2025年12月期の純利益は増益、2026年12月期も増益見通しです。収益性の改善が進み、売上営業利益率も改善傾向にあります。


 同社が連続増配を続けられる背景には、生活必需品メーカーとしての安定収益があります。洗剤や化粧品など日常消費財は景気変動の影響を受けにくいほか、キャッシュフローが安定しています。高いブランド力と海外展開も収益基盤を支えており、「長期保有に耐える銘柄」の典型例といえるでしょう。


SPK(7466)

 自動車補修部品を扱う「縁の下の力持ち」的な専門商社で、2026年3月期予想では28期連続増配となる見通しです。配当額は1990年代後半から伸びています。足元の業績も堅調で、2026年3月期は増収増益予想です。

第3四半期時点でも利益は前年同期比で伸びており、計画に対する進捗(しんちょく)率も高水準です。


 増配が続く理由は、そのビジネスモデルにあります。同社の主力は自動車の補修部品で、新車販売が低迷しても修理需要は一定程度存在します。いわゆる「アフターマーケット」に根差した事業であるため景気変動の影響が比較的小さく、長期的に利益を積み上げやすい構造を持っています。


三菱HCキャピタル(8593)

 総合リース大手で、2026年3月期予想では27期連続増配となる見込みです。2024年からテレビCMを開始するなど知名度の向上に努めています。業績面では過去最高益の更新が続いており、2026年3月期純利益は増益見通しです。


 増配が続く背景には、リース事業特有の安定収益があります。長期契約に基づく収益が多く、景気変動の影響を受けにくい構造です。また、環境関連事業や海外事業など成長分野への投資も進めており、収益源が分散されています。高配当かつ増配を続ける「インカム投資向き銘柄」の代表格といえるでしょう。


ユー・エス・エス(4732)

 中古車オークション最大手で、26期連続増配を続けている銘柄です。業績は中古車需要の強さを背景に堅調で、2026年3月期純利益は増益見通しとなっています。新車供給不足や中古車価格の上昇が追い風となり、安定した収益を確保しています。


 同社が増配を続けられる理由は、収益性の高さにあります。中古車オークションは一度システムを構築すると追加コストが小さく、高い利益率を維持できます。また市場シェアが高く競争優位性も強いため、利益が安定しています。結果として増配余力が生まれやすい構造になっています。


リコーリース(8566)

 3位の三菱HCキャピタル同様、同社もリース会社です。2026年3月期予想では26期連続増配となる見込みです。業績面では、2026年3月期各利益は減益予想となっていますが、減益見通しの中でも増配方針を維持しており、株主還元姿勢の強さがうかがえます。


 同社が連続増配を続けている理由は、安定した金融収益にあります。リース契約は長期にわたるため収益の見通しが立てやすく、キャッシュフローが安定します。親会社グループの顧客基盤も強みであり、景気変動の中でも利益を維持しやすい体質を持っています。堅実な経営と安定収益が増配を支えている典型例といえるでしょう。


(田代 昌之)

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