3月5日から1年に1度の全国人民代表大会(全人代)が北京で開催されています。経済成長率の目標は3年ぶりに前年から引き下げられ、2026年は4.5~5%に設定されました。
北京で1年に1度の全人代が開催。成長率は3年ぶりの引き下げ
中国の北京で1年に1度の「政治の祭典」・全国人民代表大会(全人代)が3月5~12日の日程で開催されています。私自身、過去20年以上、全人代を観察してきました。中国の政治は往々にして「黒箱操作(ブラックボックス)」だと言われ、外界が知ることができるのは結果のみであり、過程は決して見えないと思われています。
実際、そうなのでしょう。
そんな中、全人代は、限られてはいるものの、ブラックボックスの一端をのぞき込むことができる場だと認識しています。「分からない」では始まりませんし、中国側に「分かるようにしてくれ」と求めるだけではあまりにももろいし、不確実ですから、やはり見る側が「分かる」努力をしていくのが正攻法だと思います。
最高指導者である習近平氏の表情や発言、政治局常務委員やその他の委員を含め、指導層、地方幹部、解放軍、外交官などの動向、中国政治を巡る全体的雰囲気などを映像や写真から把握することも重要なアプローチになるでしょう。
全人代開幕後、最初に注目されるのが首相による「政府活動報告」です。日本の首相施政方針演説に相当します。政府の首長である首相(現在は李強(リー・チャン)氏。
まずは、最も注目される年間の経済成長率目標を見てみましょう。
2026年の国内総生産(GDP)実質成長率の目標は前年比4.5~5%に設定されました。2020年以降の目標と結果を整理した図表からも見て取れるように、成長率目標は3年ぶりに前年から実質的に引き下げられました。
またもう一つの特徴が、「4.5~5%」という形で、目標値に一定の幅を持たせている点です。過去には、2016年と2019年に、それぞれ6.5~7%、6~6.5%と幅を持たせていましたが今回で3回目です。
2020 2021 2022 2023 2024 2025 2026 目標 見送り 6%以上 5.5%前後 5%前後 5%前後 5%前後 4.5~5% 結果 2.3 8.6 3.1 5.4 5.0 5.0 中国国家統計局の発表を基に筆者作成。数字は前年比
この背景にあるのは、一つは景気が低迷していることが挙げられるでしょう。不動産不況、需要不足&過剰供給、デフレスパイラルといった構造的問題が山積する中、5%という目標の達成が困難になっている経済情勢の現状が見て取れます。
もう一つは国内外における不確実性が挙げられます。トランプファクター、緊迫するイラン情勢といった海外情勢は必然的に中国国内の情勢に跳ね返ってきます。そういう不確実性、不可抗力に対する備えとして、0.5ポイントの幅を持たせている、裏を返せば、経済情勢を巡る動向を楽観しておらず、危機感を持って構えていると解釈できます。
第15次五カ年計画の特徴と方向性
4.5~5%という成長率目標を達成するために、一つの鍵を握るのがマクロコントロールです。「適度に緩和的な金融政策」という提起に示されているように、国内外の情勢が市場動向に与える影響を見ながら、小刻みな利下げを実施していく可能性は大いにあるでしょう。
金融緩和以上に注目されるのが財政出動です。「従来よりも積極的な財政政策を続ける」という主張を裏付けるように、財政赤字率、超長期特別国債、地方政府特別債いずれも、それまでよりもワンランク上がった2025年の水準で据え置きました。
物価に関しても、経済がデフレ基調で進む中、2025年にようやく上昇率目標(インフレターゲット)を下方修正して2%前後としましたが、2026年も同じ水準です。
直近の2月、消費者物価指数(CPI)は前年比1.3%増となり、1月の0.2%増、2025年12月の0.8%増を上回りましたが、2026年を通じて、中国経済がデフレスパイラルをどう脱却していくのか。統計だけでなく、実態にも迫りながら、動向を追っていきたいと思います。
2024年 2025年 2026年 物価上昇率 3%前後 2%前後 2%前後 財政赤字率(額) 3%前後
(4.1兆元) 4%前後
(5.7兆元) 4%前後
(5.9兆元) 超長期特別国債 1兆元 1.3兆元 1.3兆元 地方政府特別債 3.9兆元 4.4兆元 4.4兆元 中国国家統計局の発表を基に筆者作成。
2026年は、第15次五カ年計画の初年度でもあります。中国はソ連時代の計画経済にならって、五カ年計画というスキームで、中長期的に国家運営をしていく傾向にあります。
李強首相は政府活動報告の中で、第15次五カ年計画、すなわち2026~2030年における「重大な戦略的任務」として、以下の四つを「突出させる」と提起しています。
(1)質の高い発展の推進
(2)国内大循環の強化
(3)国民全体の共同富裕の推進
(4)経済発展と国家安全の統合
私から見て、これら4点はいずれも2012年に発足し、2027年に3期目終了を迎える習近平政権・新時代を象徴する政策であり、国家としての方向性にほかなりません。
「国内大循環」「共同富裕」「国家安全」といった「習近平ファクター」が、中国の経済構造・市場動向を巡る前提となる。
食料やエネルギーの調達、消費、技術、サプライチェーンなどが含まれるでしょう。製品の設計や開発では一層の国産化、内製化が進むでしょう。
一部の企業や個人だけが豊かになることを許さず、「みんなで一緒に豊かになる」を目標とする共同富裕は、国内外の資本家や起業家にとっては逆風となるかもしれません。
そして、経済活動よりも国家安全が優先されるという「政治の論理」は、反スパイ法といった法律を含め、国内外の企業、ビジネスマンにとっては不確定要素になるでしょう。
どうなるトランプ訪中?
内政もさることながら、ここにきて注目度が非常に高いのが、今月末に予定されている(とされる)トランプ米大統領の中国訪問です。昨今の米中関係、およびトランプ訪中に関して、3月8日に全人代における一アジェンダとして記者会見を開いた王毅(ワン・イー)外相は次のように語っています。
「今年は米中関係にとって重要な年であり、ハイレベル交流の議題はすでにわれわれのテーブルに上っている。今必要なのは、双方がこのために周到な準備を整え、適切な環境を整え、存在するリスクを管理し、不必要な干渉を排除することである」
外交を統括するトップの立場から、米国との関係を重視しつつも、米国をけん制しようとする姿勢が見て取れます。その一つの念頭にあるのが、イラン情勢でしょう。中国にとってイランは伝統的友好国であり、BRICSの加盟国でもある。
そんなイランが米国に攻撃されている状況下において(イランも反撃している)、トランプ大統領を自国に招き入れて、習近平国家主席が笑顔で応じ、握手ができるのかどうか。
一方のトランプ氏は訪中に意欲的なように見受けられます。
3月9日にマイアミで行われた会見で、記者から「ホルムズ海峡を獲得することに興味があると言っていたが、タイムラインはあるのか?」と問われたのに対し、中国に言及しながら、以下のように回答しています。
「私はそれ(ホルムズ海峡)を開いた状態にしておきたい。良い状態のままにしておきたい。分かるだろう、これは私たちというよりも中国に関係することだ。実際、ここでは(私たちは)中国や他の国々を助けている。というのも、彼らは多くのエネルギーを米国から得ているからだ。私たちは中国と良い関係にある。とても光栄なことだ」
トランプ氏は、中国に対して好意的なメッセージを送ることで、中国側が懸念を持って見つめ、トランプ訪中にとっての一つの障壁だと捉えているイラン情勢で、逆に習近平氏に「恩を売る」姿勢を示しています。訪中を手繰り寄せるだけでなく、訪中が実現した場合に、中国側との交渉やディールを有利に進めたいという思惑が作用しているのでしょう。
全人代は3月12日に閉幕します。
(加藤 嘉一)

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