3月は高配当・優待株狙いの時期ですが、中東情勢緊迫化で株価が下落。JAL(日本航空)・ANA(全日本空輸)も大幅安となり、優待狙いの逆張りチャンスとも言えます。
今回のお題 中東情勢悪化で下落する空運大手2社
3月もそろそろ終わりですが、この時期は高配当株や優待株を駆け込みで狙う時期とも言われますよね。中東情勢の緊迫化で3月に相場が急変、多くの個別株も値下がりしました。前向きに言うなら、高配当株や優待株を仕込むなら株価が安い方が好都合!といったところでしょうか。
3月優待の定番人気株に、JAL(日本航空)、ANA(全日本空輸)の空運大手2社があります。その両社も、ご多聞に漏れず3月に大幅下落。年初来でマイナス圏に突入してしまっています。中東情勢の緊迫化で原油価格が大幅上昇。燃料高や減便を懸念した売りが厳しいですが、一方で優待狙い含めた逆張り買いのチャンスにも映るところ…。 JAL(9201) と ANA(9202) 、ここから買うならどっち?この2社で比べてみます。
JAL(9201) ANA(9202)
上記両社の株価のポイントや株価データを見ながら、双方を比較し、皆さんの相場観で購入検討するならどちらにしますか?
A:JAL(9201)
ここがGOOD
株主還元重視ならJAL一択株価の“割安感”にフォーカスするなら、ANAより断然JALでしょう。TOPIX採用銘柄の予想PERが18.7倍、PBR1.63倍に対し、JALもANAも予想PERは9倍台、PBRも1倍前後ですので、そもそも市場全体の中でも低バリュエーション業種。その業種の同業他社比較の意味でも、JALの方がANAより割安評価となっています。
ただ、割安感でいえば、配当利回りで見るとより際立ちます。
今期の年間配当も前期の86円から96円に増配で、4期連続の増配へ。中東情勢で3月に株価が大幅調整していることで、予想配当利回りは3.70%まで高まっています。これはANAの同2.04%よりも圧倒的に高いため、配当狙いならJAL一択。TOPIX採用銘柄の予想配当利回りは2.03%ですので、JALは日本株全体でも高配当利回り株と認定できますね。
足元業績は好調、新長期ビジョンも策定
第3四半期までの業績はすこぶる良好。東南アジアからのインバウンド需要が旺盛なほか、単価の高い北米向けビジネス客が牽引。売上収益、EBIT(利払い・税引き前利益)とも再上場以降の過去最高を更新していますし、コンセンサスも上振れています。会社計画上振れでの着地も視野に入りそうです。
また、3月2日、10年後に向けた新たな長期の経営ビジョン「JALグループ経営ビジョン2035」を策定しました。数値目標として、31年3月期のEBITを26年3月期予想比46%増の3,000億円、35年度に同71%増の3,500億円以上を目指すとしています。
ここが心配
来期減益見通しが見栄え悪い3月に入り、株価パフォーマンスが同業のANAより圧倒的に悪化。その理由は、新たな長期ビジョンとともに示した27年3月期(来期)の業績予想でした(本決算の発表は5月初旬)。27年3月期の最終利益は、26年3月期予想比11%減の1100億円になりそうと発表、これは当時のコンセンサス(1,283億円)を下回っています。
イラン情勢の緊迫化による原油高、円安の進展がネガティブだし、そもそも物価高によるコスト増も不可避でした。中国路線が計画比で少し弱いのは、渡航自粛の影響が挙げられます。また、JAL固有の理由では、26年3月期に不動産や機材の売却益など一過性の利益計上による上振れがあって、その分の反動が来期の下振れ要因になります。ANAの来期コンセンサスが小幅ながら増益であることと比べると、ガイダンスの見栄えが悪いといえそうです。さらにいえば、増配を続けてきたJALですが、来期の配当予想は96円と26年3月期と同額だったこともネガティブな印象につながっています。
保有株数次第で株主優待券はANA有利
JALの株主優待は、国内線全路線を対象にした片道1区間の50%割引券です。3年連続保有による優遇もあるのですが、一般的な3月の優待内容だけでANAと比べてみましょう。内容的には同じですし(細かい予約のしやすさなどの要素は排除)、100株で優待券1枚もらえることも同じ。
ただ、仮に優待券を3枚もらいたければJALなら500株であるのに対し、ANAは300株。
JAL レーダーチャート ※各指標の数値に基づき独自基準でスコア化
B: ANA(9202)
ここがGOOD
「国際線」強く、業績評価はJALより上第3四半期の営業利益は、前年同期比6%増の1,807億円。国際線でインバウンド需要を取り込んだほか、全方面で旅客数を増加させています。市場予想の約1,650億円を上振れ、通期予想(2,000億円)に対する進捗率も約90%と好調です。日中関係の悪化による中国線の動向を慎重に見ているようですが、通期予想の上振れ着地は濃厚と見ています。
来期の減益ガイダンスを先に示したJALに対し、ANAの来期コンセンサス(アナリスト予想の平均)は営業利益2,175億円で、今期の2,000億円予想比で増益が見込まれています。会社側でも第3四半期の決算説明会で、「増益を目指して調整を進めています」とコメントしていました。なお、2030年度までの新中計でも、国際線の運航規模を現在より3割増とする方針を発表。旺盛なインバウンド需要があり、国際線に絞った成長戦略を評価する声が聞かれます。
「PBR2倍」を目指すと公言
PBRはJALより高いとはいえ、まだ1.08倍とPBR1倍周辺レベルのバリュー株です。
PBR2倍の目標に向け、同社としては株主資本コストの低減、期待成長率の向上、ボラティリティの低減などに取り組むとしています。最も効果的な方法は、やはり自社株買いでしょう。株式数の削減によって、1株当たり純資産(BPS)や1株当たり利益(EPS)を増大させられます。昨年12月から1,500億円上限の自社株買いを始めていますが、ここから5年間は自社株買い期待を持てる銘柄となりそうです。
ここが心配
収益性低い「国内線」の改革急務ANAの課題は、収益性が低下する国内線の立て直しです。国内線は市場全体の供給量は大きく変わりませんので、需要が堅調であることが必須です。それでいえば、コロナ以降のビジネス需要の減少などもあり、低需要便が増加。一部では、ANAの国内線の約6割が実質的に“赤字”とも報告されています。もちろん、燃料費含めた物価高騰の影響もモロに受けます。
3月に開かれた社長交代会見の場で、新しく社長に就任予定の平沢氏は国内線について「現在の費用構造の中では収入が追い付いていないのが事実だ」と述べていました。
株主還元でJALに劣る
ANAとJALでは、予想PERやPBRではほぼ同等の評価といえます(若干ANAが高い程度)。一方で、配当利回りという指標でいえば、ANAの2.04%はJALの3.70%より大幅に下回っていますので、これは単純に「配当が少ないから」が理由になります。
新たな2030年度までの新中計では、PBR2倍目標に向け、機動的な自社株買いは行われそうな雰囲気があります。ただ、配当性向は「20%程度を維持」と記載されています。大幅な増配姿勢は期待しづらそうですし、配当性向35%程度とするJALに比べれば明らかに見劣りします。
27年3月期からの中間配当の導入を決めたり、株主優待に3年以上の長期保有に優遇策を付けたり、投資家に歩み寄る姿勢を示している点はもちろんポジティブです。が、やはりJALとの大幅な差を埋めるにはサプライズ発生級の“増配”が欲しいところです。
ANA レーダーチャート ※各指標の数値に基づき独自基準でスコア化
あなたなら、どっちを買う?
もともと地政学リスクに非常に弱い業種ですが、この3月はイラン情勢の緊迫化により株価調整を余儀なくされているJALとANAの2社。その中でも、年初来騰落率に大きな差(JALがANAより弱い)が生じているのは、JALが示した27年3月期の減益ガイダンスが原因でした。
JALの来期減益は固有要因も理由にあり、一時的な踊り場とも見て取れます。長期で配当を狙うなら、圧倒的に配当妙味の高いJALの逆張り買い人気も高そうです。
銘柄投票にぜひ参加してみてください
【銘柄を投票】JAL vs ANA 中東情勢悪化で下落する空運大手2社 優待狙い含めた逆張り買いのチャンス?
各指標の説明 予想PER 1株当たり利益の何倍(何年分)まで株価が買われているかを示す指標。同業他社と比較する際に使われ、低いほど割安と判断します。 PBR 1株当たり純資産の何倍まで株価が買われているかを示す指標。同業他社と比較する際に使われ、低いほど割安と判断します。この数値が1倍を下回る企業に対し、東証は「1倍を上回るよう頑張れ」と指令を出しています。 配当利回り 今期の予想配当金ベースの利回りで、高いほど配当妙味が高いと判定します。定義はありませんが、3%以上なら配当利回りが高いと認識されています。 流動性 1日の売買代金がどれくらいあるか?(表では25日平均)を金額で表示しています。同数値が高いほど、機関投資家も大口の個人投資家もストレス無く参加できると考えられます。
(岡村 友哉)

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