イラン情勢が緊迫するのを横目に、6回目となる米中ハイレベル協議がフランスのパリで開催されました。経済・通商分野で対話を続ける一方、注目されるのは3月末に予定されていたトランプ大統領の訪中です。
イラン情勢の緊迫化を横目に米中がパリでハイレベル協議開催
イラン情勢が緊迫しています。米国とイスラエルが2月28日にイランを攻撃した後、イランも徹底抗戦し、安易な停戦要求に乗るつもりはないという姿勢で臨んできました。
トランプ大統領は当初「4週間ぐらいか、それ以内」でイランでの戦争が終了するという見立てを示していましたが、昨今の緊迫、膠着(こうちゃく)した情勢から俯瞰(ふかん)する限り、泥沼化、長期化する可能性も大いにあるといえるでしょう。
ロシアとウクライナの戦争は始まってからすでに4年が経過しました。欧州に加えて、中東までもが「長期の戦場」と化せば、世界情勢はますます混沌(こんとん)としたものになっていくのは避けられません。エネルギー価格の高騰を含め、私たちの生活にも直接的に影響してくる局面も容易に想像できます。
そんな中、3月15~16日、米中の閣僚がフランスのパリでハイレベル協議を実施しました。第2期トランプ政権発足以降、ジュネーブ、ロンドン、ストックホルム、マドリード、クアラルンプールに続く、6回目の協議です。
米国側からはベッセント財務長官、グリア通商代表、中国側からは何立峰(ホー・リーフォン)副首相、李成鋼(リー・チョンガン)通商代表が参加し、米中間の通商問題を中心に、約1日半にわたって議論を展開しました。
私から見ると、この光景はある意味、「異様」に映りました。というのも、イランは中国にとって伝統的友好国であり、BRICSの加盟国でもあります。そんなイランが米国に軍事攻撃を受けているさなかに、習近平国家主席の側近で副首相である何立峰氏が、米国側の閣僚と対面で協議をしたわけです。
中国にとっては、イラン情勢よりも米国との関係が重要ということなのでしょうし、大国間の政治というものは、冷徹で無情なものだと改めて実感させられている今日このごろです。
米中「貿易戦争」の現在地と行き先
ここからは、米中ハイレベル協議で何が議論されたのかを見ていきましょう。
関税措置の手配、二国間貿易および投資の促進、既存の協議合意の維持など、双方が関心を有する経済・貿易問題について議論が行われました。米国側からは、米最高裁が国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく関税発動を違憲と判断したのを受けて、今後の関税措置をどう実施していくかについての説明もあったもようです。
また、今回の協議での「新たな合意事項」としては、二国間の貿易および投資を促進する協力メカニズムの設立検討が挙げられます。
中国側の発表によれば、このメカニズム設立の背景・目的は、「米中経済・貿易協議メカニズムの役割を引き続き十分に発揮させ、対話と意思疎通を強化し、相違を適切に管理し、実務的協力を拡大し、二国間経済・貿易関係の持続的で安定した前向きな発展を推進すること」にあるとのことです。
一方で、中国側は米国側に対し、「一方的関税措置に反対する立場を一貫して堅持しており、米国側に対し一方的関税などの制限措置を全面的に撤廃するよう強く求める」「自らの正当かつ合法的な権益を断固として守るため必要な措置を講じる」と迫り、トランプ政権の関税措置に対して「深刻な懸念」を伝えています。
大国ではなく、強国を目指す国として、「超大国」米国に対しても、言うべきことは言っていく、という姿勢に変化はありません。この傾向は今後強まることはあっても弱まることはないでしょう。
ただ全体的には、今回の協議は比較的良好な雰囲気の中で実施され、終了したように見受けられます。
中国側は、「率直で、踏み込んだ、建設的な交流と協議だった」と振り返り、米国のベッセント長官も、会談後、次のようにインタビューで語っています。
「会談は非常に良かった。われわれは安定した関係を築いている。
また、「世界第1位と第2位の経済大国の関係の安定性を改めて確認することになる」「米国はデカップリングを望んでいるわけではない(「戦略産業は取り戻す必要はある」とも)という点を改めて中国側に伝えた」などともコメントしています。
米中経済関係の間には、半導体やAIなど戦略的に競争関係にある分野もあるけれども、包括的なデカップリング(切り離し)は追求しないという立場です。
米中が競争しつつも、共存を目指していくというスタンスを改めて確認した事実は、世界経済、マーケットにとっては取りあえず朗報といえると思います。
トランプ訪中はどうなるか?
そして、極めて重要なのが、今回のハイレベル協議が、トランプ大統領の訪中にとってどのような示唆を持つのかという点です。ベッセント長官はインタビューで次のようにも語っています。
「しかし実際には、この会談はトランプ大統領と習主席という両首脳が互いに抱く大きな敬意によって成り立っている」
要するに、昨今の米中関係にとって最も重要なのは、トランプ大統領と習近平国家主席という両首脳間の関係であり、対話であるということです。ハイレベル協議に両国を代表して参加する部下たちは、そんな両首脳に絶対的忠誠を誓うことが何より求められるという現実を示唆していると私は分析しています。
米国と中国では政治体制も価値観も異なりますが、最高指導者を取り囲む「統治の在り方」に関しては、驚くほどに同質化している側面もあるといえるでしょう。
ベッセント長官は次のようにも語っています。
「ただ、私がはっきりさせておきたいのは、(米中首脳)会談が延期される場合、それは大統領が中国にホルムズ海峡の警備を求めたからだ、という誤った見方が出回っていることだ。それは全くの誤りだ」
この見解については、中国外交部も追認しており、「中国がホルムズ海峡の封鎖を解除するために艦船を派遣するかどうか」と、「トランプ大統領が当初の予定通り訪中するかどうか」は別問題であるという点を確認しています。
言い換えれば、中国がイラン戦争で米国に協力するかどうかはトランプ氏の訪中に実質的に影響しない、両国首脳会談に関しては、そこは切り離して考え、対処していくということです。
では、もう少し踏み込んで考えてみましょう。
イラン情勢が引き金となり、トランプ氏の訪中、その前後に横たわる米中関係の在り方に影響するのでしょうか。
答えは「イエス」だと思います。
米中ハイレベル協議が終了した直後、トランプ大統領は、ホワイトハウスで記者団に対して、イランとの戦争への対応を理由に、「ワシントンにとどまる必要がある」と説明した上で、北京での首脳会談を約1カ月延期するよう中国側に要請したと述べています。
一方、中国側とは調整を続けていること、習近平主席とは良好な関係にあること、および首脳会談自体は実現させたいという意向を示しました。
イラン情勢に当初の想定以上に手こずっており、ワシントンの執務室を離れられない、訪中はぜひともしたいけれども、それどころではないという心境なのでしょう。米国にとっては誤算といえる展開かもしれません。
一方の中国側は、外交部報道官の名義で「トランプ大統領の訪中を巡り米中当局は意思疎通を保っている」の「一点張り」。中国側にとっても、米国がイランで戦争をしている状況下で来られても困る、という思惑が働いていると思います。攻められているのが友好国であるイランならなおさらでしょう。
私が本稿を執筆している3月18日午前時点において、両国間でトランプ訪中を巡り最終決定には至っておらず、米ホワイトハウスがすでに発表している3月31日から4月2日という訪中日程は、延期される可能性も十分にあるということです。
いずれにせよ、イラン情勢とトランプ訪中の関係、および米中関係の先行きは、世界経済や国際情勢、そして日本が位置するアジア太平洋地域の地政学リスクに大いに関係、影響してきますから、私たちも引き続き動向を注視していく必要があると思います。
(加藤 嘉一)

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