ホルムズ海峡封鎖の長期化が見込まれる中、さまざまなリスクが浮上しています。本稿では、特に重要な以下三つのポイントについて解説します。
1.日本の石油備蓄日数の他国と比較した「長さ」の実態
2.ペルシャ湾内に油田を保有する企業が減益となる可能性
3.ナフサだけではなく、軽油・重油の不足懸念
(1)実は日本の石油備蓄日数は他国比で長くない
多くのメディアでは、「日本の石油備蓄日数が他国比で長い」と報じられています。在庫日数は在庫量を一日当たりの国内消費量で割ることで計算されます。その計算の限りでは日本の石油備蓄日数は254日と主要国中最長の水準にあることは事実です。
しかし、原油の中東依存度は国によって大きく異なり、この点が見過ごされがちです。ホルムズ海峡封鎖で中東原油の供給が大きく減少している一方で世界の他地域の原油生産に支障がない現況では、在庫日数を中東依存度に応じて調整して比較する必要があります。
具体的には、各国の在庫日数を中東依存度のパーセンテージで割った「調整後備蓄日数」の数値を比較します(各国の中東原油の調達量減少分だけ石油在庫を取り崩していくイメージ)。
この計算で比較すると、267日の日本に対し、韓国297日、中国500日、英国1,100日、フランス・ドイツが867日と、日本よりも長い結果となります。従って、見かけ上の備蓄日数は短いものの、実質的な備蓄日数の長い主要国の対応を待つ余裕は日本にはありません。日本が率先して対応を打っていく必要があります。
なお、東南アジア諸国については調整後でも日本より備蓄日数が短く、特に短いベトナムは、日本と韓国に原油確保の支援を求めてきています。
<石油備蓄日数と中東依存度を加味した調整後備蓄日数> 国名 備蓄日数 中東依存度 調整後備蓄日数 a b a÷(b÷100) 日 % 日 日本 254 95 267 韓国 208 70 297 中国 200 40 500 インド 74 55 135 タイ 61 55 111 フィリピン 60 80 75 インドネシア 20 30 67 ベトナム 15 35 43 英国 110 10 1,100 フランス 130 15 867 ドイツ 130 15 867 出所:各種資料より楽天証券経済研究所が作成(推計値含む)
(2)ペルシャ湾内に油田を保有する企業が減益となる可能性
ホルムズ海峡封鎖で世界の石油開発企業の株価の多くは上昇トレンドとなっています。しかし、ペルシャ湾内に油田を保有する企業は、原油の生産停止もしくは生産量減少を余儀なくされています。この状況が長期化すれば、足元の原油価格上昇、株価上昇とは相反して、収益が減少という結果になる可能性があります。
この点について日本の石油開発・精製企業、 INPEX(1605 東京) 、 ENEOSホールディングス(5020 東京) 、 出光興産(5019 東京) 、 コスモエネルギーホールディングス(5021 東京) について検証しました。
具体的には、既に2025年12月期決算発表済みで2026年12月期の業績見通しを示しているINPEXについては、2026年の平均原油価格が63ドル、100ドル、200ドルになった場合の、中東原油(ペルシャ湾内油田)分を除いた当期純利益を推計しました。
2026年3月期の通期決算未発表の残り3社については、2026年3月期の当期純利益に占める中東原油(ペルシャ湾内油田)分の利益を推計し、影響度合いを確認しました。
結果としては、INPEX(2025年度当期純利益額:3,938億円)が2026年を通してペルシャ湾内油田からの原油販売ができなかった場合、平均原油価格が63ドルだと前年比減益(純利益額:2,443億円)、100ドルだと横ばい(純利益額:3,949億円)、200ドルだと増益(純利益額:6,603億円)となりました。
その他の3社については、ENEOSHD、出光興産については、ペルシャ湾内油田からの利益が2026年3月期の連結決算に及ぼす影響が限定的もしくはゼロと計算されました。これに対し、コスモエネルギーについては半分程度に及ぶ結果となりました。
<石油開発精製企業のペルシャ湾内油田からの利益> (億円) 2025年度 2026年度原油価格別
シミュレーション 実績/予想 $63 $100 $200 INPEX当期純利益 3,938 3,300 5,335 8,921 中東原油分 1,040 857 1,386 2,318 中東原油分除き 2,898 2,443 3,949 6,603 ENEOS当期純利益 1,350 - - - 中東原油分 39 - - - 中東原油分除き 1,311 - - - 出光当期純利益 750 - - - 中東原油分 0 - - - 中東原油分除き 750 - - - コスモ当期純利益 530 - - - 中東原油分 224 - - - 中東原油分除き 306 - - - ※斜体は各社資料に基づき楽天証券経済研究所が計算した推計値
出所:各社資料より楽天証券経済研究所が作成
(3)ナフサだけではなく軽油・重油にも不足懸念
日本の原油消費量は日量250万バレル程度で、そのほとんどに当たる日量240万バレル程度を中東から輸入してきました。世界の原油生産量が日量で約1億バレル、国別で多い順に米国が日量1,300万バレル、ロシアが日量1,000万バレル、サウジアラビアが日量1,000万バレル、カナダが日量600万バレルと続いています。この中で、米国が最も有力な代替調達先です。
他方、米国から輸出される原油は2000年代後半から生産量が増加してきたシェールオイルが中心です。シェールオイルは密度が低い軽質原油であり、日本の製油所が中東から調達して処理してきた中重質原油とは成分が大きく異なります。
シェールオイルはガソリンやナフサなど密度の低い(軽質な)石油製品を多く生産できる一方で、密度の高い軽油、重油、アスファルトの生産量は少ないという特性があります。
従って、米国から十分な量の原油を調達して製油所で処理し始めた場合、現在ひっ迫が取りざたされているナフサの需給は緩和方向に向かう一方で、軽油、重油、アスファルトの供給がひっ迫することが予想されます。
<石油製品得率概要> 石油製品 中東原油 シェールオイル % % LPG 4 7 ガソリン 25 40 ナフサ 15 30 ジェット燃料 10 8 軽油 20 13 重油 20 3 アスファルト 6 0 ※中東原油はアラビアンライト原油、シェールオイルはイーグルフォード原油の一般的な製品得率を記載
出所:各種資料より楽天証券経済研究所が作成
この状況を石油製品の割り振りの工夫から緩和する方策としては、重油については火力発電で消費する量を石炭火力で代替するなどして減らし、重油を使わざるを得ない用途に必要量を確保することが考えられます。
他方、軽油、アスファルトについては不足分を他国からそれら自体を輸入せざるを得ないと考えられます。しかし、他国も自国内での在庫確保を優先し、輸入実現には困難を伴う可能性があります。
この状況を調達原油の組み換えで対応する方策としては、可能な限り軽油、重油、アスファルト留分に富んだ原油の調達に努めることが考えられます。具体的な方策には、アンゴラの中重質原油やカナダのオイルサンドの輸入に取り組むなどがあります。
さらに1980年代まで輸入を行ってきたものの現在は生産量が減りつつあるアラスカのノース・スロープ原油は、中東原油に比較的品質が近い上、日本からの距離も近いため輸入が実現できれば理想的な選択肢となります。
ロシア西部での主力油種であるウラル原油も生産量が多い上に、中東原油に近い品質です。ただし、ロシアへの制裁の関係上、現在日本がロシアから輸入可能なのはロシア極東の石油・天然ガス開発事業「サハリン2」で生産されるサハリンブレンド原油に限られており、ウラル原油の輸入は現時点では禁止されています。
日本としてはリスクシナリオを安易に排除しない冷静な分析に基づき、スピード感をもって状況に対処していく必要があると思っています。
(西 勇太郎)

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