ホワイトハウスは、トランプ大統領が5月14~15日に中国を訪問すると発表しました。イラン情勢は予断を許さない状況が続き、不確定要素は山積する中、トランプ訪中は5月に実現するのか。
「延期」されたトランプ訪中が5月14~15日に実施か
私が本稿を執筆している2026年4月1日午前現在、本来であれば、世界中が注目する一大イベントが中国の地で発生している可能性がありました。
トランプ米大統領による中国訪問と、習近平国家主席との米中首脳会談です。
米中両政府は、3月31日~4月2日の日程でトランプ大統領の訪中実現に向けて、準備と調整をしていました。結果として、それは実現しませんでした。
米国とイスラエルが2月28日にイランを攻撃し、イラン側も応戦。現在に至るまで、中東情勢は緊迫しており、長期化、泥沼化する可能性も全く否定できません。
そのような状況下において、トランプ大統領は米国の最高指揮官として、ワシントンを離れることができない。ゆえに「訪中の延期」を中国側に要請したとのこと。
その後、ホワイトハウスのレビット報道官は3月18日、「中国側が延期に同意した」と報道陣に明らかにすると同時に、両国が新たな日程を調整しているとも示唆しました。
そして3月25日、レビット報道官は、トランプ大統領が5月14~15日に中国を訪問し、北京で習近平国家主席と会談すること、およびその後に習氏がワシントンを訪問することを公表しました。
これに対し、中国側は林剣(リン・ケン)外交部報道官が3月26日に行われた定例記者会見で、次のようにコメントしています。
「首脳外交は中米関係において、代替不可能な戦略的で、案内役としての役割を果たしている。
イラン情勢の影響は?
中国外交部による表明は、端的ではありますが、非常に重要な示唆を含んでいると私は解釈しています。文字通りではありますが、言わんとしていることは二つあります。
(1)習近平国家主席とトランプ大統領の関係、および会談は米中関係にとって最も重要な要素、行事であり、それを着実に実行することで、米中関係は初めて安定し、進展すると中国側は考えている
(2)トランプ大統領の訪中を巡っては、不確定要素があるため断定的なことは言えず、かつ慎重に物事を進めてはいるものの、前向きに実現させようと尽力している
「不確定要素」とはいうまでもなくイラン情勢を指すでしょう。より踏み込んで言えば、イラン情勢に対してトランプ大統領がどう向き合い、対応していくのかを巡り読めない部分が多すぎるということです。
ホワイトハウスは前回も、2月20日、すなわち訪中予定日の1カ月以上前の段階で「トランプ大統領が3月31日~4月2日に訪中」と発表しましたが、中国側は「(1)訪中するかどうか」「(2)いつ訪中するか」に関して、一度も明確に追認することはありませんでした。
イラン情勢が緊迫化する中で、断定的に訪中やその日時を発表することを嫌がったということです。
私の理解によれば、中国政府は、特に重要な政治、外交行事に関して、「正式発表」というものを重んじる傾向があり、一度発表したことは安易には変更、撤回しない、ゆえに、限りなく100%に近い確率で実現できるという確証を持たない限り、正式発表は避けるように見受けられます。
それが習近平氏という最高指導者の動向に関わることであればなおさらです。
今回もホワイトハウスは、3月25日、すなわち1カ月以上前の時点で、「トランプ大統領が5月14~15日訪中」と発表しました。中国側は一定程度困惑していると思います。
トランプ氏の訪中、および米中首脳会談を北京で実施するとなれば、当然今から連日綿密な準備と意思疎通を両国当局間で繰り広げる必要があることは論を待ちません。
一方、正式発表は、両国当局間で日程や議題などを含め、あらゆる準備と調整が完了し、よほどのことがない限り変更も中止もないという確証を持ち、かつトップがゴーサインを出して、初めて可能になるというのが、少なくとも中国側の考えでありスタンスだと思います。
だからこそ、中国政府の対外的な説明としては、「意思疎通を続けている」という次元にとどまっているということです。
そんなトランプ氏は、3月31日(米東部時間)、ホワイトハウスで記者団に「われわれは間もなく(イランから)撤退する」と述べ、それが2~3週間以内になる可能性があるとしました。
さらに、外交的成功が米国による紛争終結の前提条件なのかという記者からの問いには、「いや、彼らは私と合意を結ぶ必要はない」と答えています。
仮にトランプ氏のこの発言が現実味を持ち、これから2~3週間、つまり4月中下旬にイランで何らかの「終戦」が実現した場合、イラン情勢をいったん沈静化させ、ひと段落させた後に、ワシントンを離れ、太平洋を跨ぎ、約1万1,000キロ離れた北京へと飛ぶ条件が整うということなのでしょう。
一方で、トランプ大統領には、イランとの戦いをいつ終わらせるかに関して読みを誤った前例があり、それが3月下旬に予定していた訪中を延期した原因になりました。
今回に関しても、読みが外れ、イラン情勢が終戦とはほど遠い状況で推移する可能性も現時点では否定できません。
トランプ大統領は訪中に前のめりであり、習近平国家主席もそれを実現すべく前向きに構えているという構造は間違いないと思います。
その一方、実際のところ、どうなるのかに関しては、ふたを開けてみないと何とも言えない、というのが米中首脳外交を巡る現在地と言えるでしょう。
トランプ訪中×イラン情勢×台湾有事
ここからは、トランプ大統領の訪中を不確実にしてきたイラン情勢に、日本で近年注目度が一気に上がっている台湾有事を絡めて考えていきたいと思います。
日本のエネルギー事情やその経済活動、国民生活への影響という観点からすれば、ホルムズ海峡の封鎖問題を含めた中東情勢は非常に重要かつクリティカルであり、日本人にとっても決してひとごとではありません。
一方で、日本からの「近さ」という観点からすれば、東京から約7,600キロ離れているイランと比べて、沖縄県の那覇市から約650キロの位置にある台湾で何が起こるかという点は、日本を取り巻く環境により直接的に影響するでしょう。
その上で、「トランプ訪中×イラン情勢×台湾有事」の相関性を、三つの視点から考えていきます。
一つ目に、習近平国家主席としては、トランプ大統領を自国に招き入れ、ホームグラウンドで行う首脳会談、あるいは別の場において、台湾問題に関して突っ込んだ話をし、状況次第では、トランプ氏から中国が「台湾統一」という目標を有利に運べるような言説を引き出したいという点です。
二つ目に、イラン情勢が緊迫している一つの帰結として、トランプ氏の訪中期間が従来の3日間(3月31日~4月2日)から、2日間(5月14~15日)に短縮しているというのが現時点で出てきている情報ですが、台湾問題という米中関係にとって最も敏感で、世界情勢への影響度が深いテーマを、この短期間でどこまで話し、突き詰められるかが不確実であるという点です。
三つ目に、習近平氏としては、トランプ氏がベネズエラに続いてイランにも軍事攻撃を仕掛けている事実を逆手に取り、「中国が内政問題だと主張する台湾を、実力を持って統一することなど、米国が他国に対して行っている行為に比べれば、断然正当性と道義性に勝る」という国際世論を醸成したいという点です。
以上3点から、イラン情勢の影響を受けながら調整が進むトランプ訪中において、米中首脳間で台湾問題がどう扱われるかという問いは、中国の台湾海峡における今後の行動、それに対する米国の反応に深い次元で影響すると私はみています。
要するに、日本を取り巻く経済や安全保障環境にも不可避的に影響してくるということです。私たちも、自らの生活に非常に近い課題として、「トランプ訪中×イラン情勢×台湾有事」を見ていく必要があると考えるゆえんです。
(加藤 嘉一)

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