イラン戦争はいつまで続くのでしょうか。ホルムズ海峡封鎖による原油高が深刻となり、トランプ大統領は軍事作戦と並行して停戦協議を進める考えを示しています。
しかし、イランが徹底抗戦の構えを崩さず、イスラエルも攻撃の手を緩ないなかでの終結は簡単ではなさそうです。エネルギーアナリストの岩瀬昇氏がイラン情勢の展望を考察します。
「停戦合意」の現実味
トウシル編集部:米国とイランの停戦協議が注目されています。双方が折り合える可能性はどの程度あるのでしょうか?
岩瀬昇氏:ハードルはかなり高いとみています。イラン側は「われわれの5条件が受け入れられる場合には」という注釈付きで、停戦を検討するとしています。
イラン側が出している条件と米国側の出している条件は全く噛み合っていません。
イラン側は開戦当初から立場を全く変えていません。彼らは、すでに制空権を失っており、戦力的に圧倒的に劣後していることは認識していますので「正面衝突は避けるが、決して負けない」という戦い方をしています。
イラン側から見ると、米国とイスラエルに攻め込まれていて、それに対して保有している限られたミサイルやドローンなどをやりくりしながら「やられたらやり返す」という形で反撃しているわけです。
例えば、イスラエルによるイラン最大のガス田サウスパースを攻撃されたことに対して、カタールのLNG製造装置のあるラスラファンを攻撃していますし、クウェートの海水淡水化プラントを攻撃したというのも、イラン南部にある海水淡水化プラントが空爆されたからです。
仮にトランプ大統領が本気で停戦を望んだとしても、実は「米国がイスラエルを抑えられるのか」という難題があります。
イスラエルはイランの体制転換を目指しており、イランへの攻撃を継続する可能性が否定できません。イスラエルから攻撃されれば、イランはイスラエルのみならず周辺諸国の米軍基地などに対して攻撃するでしょうし、ホルムズ海峡の封鎖がさらに強化される可能性もあります。
この「イスラエルが勝手に動いてしまう」という問題をトランプ大統領がイスラエルへの軍事支援を削減するなどの方策で制御できない限り、イラン側が納得する形で停戦協議に応ずることはないでしょう。
双方が合意する形での停戦が難しい中、現時点で一番起こりうるシナリオは、トランプ大統領による一方的な勝利宣言と軍事作戦の停止です。
ただし、トランプ大統領が軍事作戦を停止したとしても、イラン側はこれを「自国の要求が受け入れられた結果」とは見なしません。
米軍からの攻撃が止まったとしても、イランはミサイルやドローンを温存しつつ、自分たちの要求を通すために、また効果があることを実感しているために、ホルムズ海峡の実質的閉鎖を続けていくのではないでしょうか。
米軍地上攻撃のターゲットは?
トウシル:トランプ大統領はカーグ島(ハールク島)やその他の軍事目標への地上攻撃の可能性を示唆しています。そのリスクはどの程度あるのでしょうか?
岩瀬氏:米国による地上攻撃の可能性は十分に考えられます。
米国とイスラエルはイランの最高指導者を暗殺したとはいえ、イランの体制に変化を起こせたわけではありません。
ベネズエラの成功体験がトランプ政権にはあるようですが、イランの体制とは、ホメイニ師が打ち立てた政治理論「ヴェラーヤテ・ファギーフ」(法学者の統治)に基づくシステムです。イスラム革命防衛隊もその一角を占めているシステムです。
今回の攻撃でも、このシステムが揺らいでいる気配はありません。
イスラエルが目指している「体制転換」の実現は果てしなく遠い道なのです。
トランプ大統領は、今回の軍事行動の目的から「体制転換」を外していますが、中間選挙に向けて支持率を高めるために「何かしらの手柄が必要だ」と考えてもおかしくありません。そのために、短期間での軍事行動で「勝利した」と主張できるような「既成事実」を作ろうとすることはあり得るでしょう。
トランプ大統領は、地上攻撃の軍事目標として、イラン最大の原油積み出し拠点であるカーグ島の「制圧も選択肢だ」と発言しています。
しかし、私はホルムズ海峡に近い他の島への攻撃の方が可能性は高いとみています。
カーグ島はペルシャ湾のかなり奥まったところにあり、占領して短期間で引き上げるような作戦には不向きです。さらに、カーグ島には多くの地雷が配備されるなど強固な防御態勢を敷いており、占領するには相当な兵力と時間を要します。短期間で勝利し、成果を誇示できるような軍事目標ではありません。
私が地上攻撃の目標として可能性がより高いと考えているのは、アブムサ島や大トンブ・小トンブといったホルムズ海峡周辺にある小さな島々です。
これらの島々は、UAEとの間で領有権問題があるものの、イランが実効支配しています。ここを短期間で制圧し、「ホルムズ海峡の安全を確保した」という形で勝利宣言をする、というシナリオは十分に考えられます。
これらの島は、イランが海峡を通過する船舶に攻撃する際の拠点となり得る場所ですから、そこを奪取すれば、あまり説得力はありませんが、トランプ大統領は「ホルムズ海峡の脅威を取り除いた」と主張できるわけです。
ただし、それはあくまでトランプ大統領が「勝利宣言」をするための象徴的な行動でしかないでしょう。
これらの島を一時的に制圧したところで、イランによるホルムズ海峡の事実上の閉鎖を完全に防げるのかというと、それは別の話です。イラン側は、自分たちの要求が満たされない限り、ホルムズ海峡の実質的管理を続けるでしょう。
ガソリン高騰で米国にも打撃
トウシル:米国自身は、ホルムズ海峡の封鎖が続いても問題ないのでしょうか?
岩瀬氏:米国は原油の純輸出国なので、国内で消費する原油の「量」に関して問題ありません。ただし、ホルムズ海峡の封鎖によって世界の原油価格が上がると、米国の原油価格も上がり、ガソリン価格の高騰につながります。
3月末に米国でガソリンの1ガロン当たりの平均小売価格が4ドルを超えました。ガソリンの高騰が続くと、米国民によるトランプ大統領への反発はさらに強まります。車社会の米国では、石油需要の半分近くがガソリンで、2割近くが軽油なのです。
ガソリンや軽油の値上がりは庶民の生活そのものに大きな負担増を招きますので、中間選の争点となっているインフレ、「Affordability(生活コストが支払い可能な範囲かどうか)」の観点から強烈な逆風になるのは間違いありません。
3月26日には、「ノー・キングス(王はいらない)」という800万人規模(主催者発表)の反トランプ政権デモがありました。こうした動きはさらに拡大していくでしょう。
トランプ大統領は、4月2日の演説で、「イランとの戦闘が終わればガソリン価格は急速に下がる。株価も回復する」と語りました。
しかし、米国が攻撃を停止しても思惑通り、原油価格が下がる、ガソリン価格が下がるとは到底思えません。イランがホルムズ海峡の事実上の閉鎖を続けている限り、原油価格は高止まりすると考えるべきでしょう。
また、閉鎖が解除されても、イランの攻撃により生産施設がダメージを受けており、サプライチェーンも断絶されたわけですから、復旧には週単位ではなく月単位の時間がかかると考える必要があると思います。
また、トランプ大統領はさらなる軍事行動も含めた「次の手」を打とうとするでしょう。それが今後の大きな焦点になると私は考えています。
本稿ではイラン情勢の現状を考察しました。次回の記事では、中東からの原油供給が滞る中、日本への調達や備蓄体制にどのような問題が生じるのか、その影響を深掘りしていきます。
(呉 太淳)

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