今週は、これまでの下落基調から一転して急騰する場面を見せました。相場のムードは好転したかに見えますが、いまだ予断を許さない状況です。
急落から急騰に転じた株式市場
いわゆる「月またぎ」で4月相場を迎えた今週の株式市場ですが、国内外を問わず、下落基調から一転して急騰を見せる場面がありました。
<図1>国内外主要株価指数のパフォーマンス比較(2025年末を100)(2026年4月1日時点)
図1は、2025年末を100とした、国内外の主要株価指数のパフォーマンス比較の推移を示したものですが、4月1日時点で表示されている全ての株価指数が足元で持ち直している様子が確認できます。
4月相場入りを迎えるタイミングで相場のムードがガラリと変わった印象ですが、こうした株価反発の主因として、最近まで株価を押し下げてきた、イランをめぐる中東情勢に対する改善期待が高まったことが挙げられます。
トランプ米大統領による「早期の戦闘終結」と「イランとの交渉進展」を示唆する発言や、SNSでの投稿、各種報道等やイラン側の情報発信を通じて、停戦に向けて動き出している可能性が報じられたことなどが具体的な材料となりました。
また、3月相場の下げ過ぎの反動や、日米のAI関連銘柄がPERなどの面で割安と言えるところまで株安が進み、ちょっとした好材料を理由に買いを入れやすくなったこと、そして、イラン情勢を受けてインフレ懸念が高まる中、パウエル米FRB議長が「インフレ警戒を理由とする利上げを現時点で考えていない」という旨の発言があったことによる安心感なども、株価反発の支援材料になったと考えられます。
ただし、続く4月2日(木)の午前(米国時間では1日の夜)に行われた、トランプ米大統領による米国民向けの演説を境に、日本株市場や米国株先物市場が再び売られる展開となっており、にわかに高まった相場の改善ムードは早くも雲行きが怪しくなっています。
もっとも、トランプ米大統領にとっては、演説を行うことで「市場の風向きを好転させたい」という意図があったと思われるだけに、市場のネガティブな初期反応を受けて、俗にいう「TACO(タコ)る」格好で、トランプ米大統領が新たに警戒感を和らげる動きをしてくることや、停戦に向けた動きが順調に進展する可能性もあり、株価の反発基調を続けて行けるのかを見極めて行くことが目先の焦点になります。
株価はどこまで戻せる?意識しておきたい「強気の罠」
では、株価の反発基調が続くのかについて、米主要株価指数(NYダウ・S&P500・ナスダック総合)の日足チャートから、テクニカル分析の視点から読み取れる状況を整理します。
最初にNYダウから見て行きます。
<図2>米NYダウ(日足)とMACDの動き(2026年4月1日時点)
NYダウは2月10日の高値をピークに、3月30日の安値をつけるところまで下落トレンドを形成していました。とりわけ、3月中旬に株価が200日移動平均線を下抜けて以降、この200日移動平均線が上値の抵抗として機能しています。
株価が急反発を見せた31日(火)の取引でも、取引時間中にこの200日移動平均線を超える場面があったものの、終値では上回れず、引き続き200日移動平均線が抵抗として機能しています。
また、下向きを強めている25日移動平均線が迫ってきています。
反対に、株価が無事に200日や25日移動平均線を上抜けできた場合、次に控えるのが50日移動平均線となりますが、こちらも同じ見方となるため、目先の株価は50日移動平均線あたりまでが戻りの目安になりそうです。
このほか、下段のMACDを見ると、直近まで下降を辿っていたものの上向きに転じて、シグナルも上抜けており、一応、「底打ち」のサインも出現しています。
同様に、S&P500やナスダックの日足チャートを見ても、31日(火)の株価反発によって200日移動平均線からの下方乖離の修正が行われたものの、200日移動平均線を上回れない状況であることや、下向きの25日移動平均線が迫っていること、50日移動平均線が戻りの目安になりそうという点が共通しています(図3と図4)。
<図3>米S&P500(日足)とMACDの動き(2026年4月1日時点)
<図4>米ナスダック総合(日足)とMACDの動き(2026年4月1日時点)
強気の罠とは?
足元で見せている株価の反発基調が続くかどうかは別として、株価の下落トレンドから反発基調を強めた際に注意しておきたいのが、いわゆる「強気の罠(ブルトラップ)」と呼ばれるものです。
一般的に、強気の罠とは「株価の大幅下落後に急反発を見せ、上昇基調へ転換と思わせながらも、再び下落トレンドに戻ってしまう」値動きのパターンのことを指します。
ちょうど図5のようなイメージです。
<図5>相場のムードから見た下落トレンドの波とポイント
また、強気の罠については、「直近の株価が高値をつけていたこと」もポイントになります。
高値をつけた後の株価下落は、まだ強気の見方が残っていることもあって、勢いよく反発しやすいのですが、その流れが続かなかった場合、「やはり相場は弱かった」と再び売り直されて下落トレンドを強めてしまうという考え方が背景にあります。
今回は強気の罠なのか?目安と注意点
では、「足元の株式反発が強気の罠となってしまう可能性は高いのか?」について、材料や状況の面からも整理していきたいと思います。
結局はイラン情勢次第になりますが、先ほども触れたように、停戦に向けた交渉が進んでいるような報道がある一方で、米軍がペルシャ湾に展開し、地上作戦の可能性も報じられるなど、政治的な発言と、軍の動きが一致していないことによって、「実際のところはイマイチ分からない」状況となっています。
そのため、まずは軍事行動の有無が焦点になり、先日にトランプ米大統領が発言した、イランのエネルギー施設攻撃の猶予期間となる日本時間4月7日(火)午前9時までに動きがあるか否かがひとつめのポイントになります。
また、株式市場と他市場との温度差もポイントになります。株式市場の上昇の大きさと比べて、原油先物(WTI)の価格や、米10年債利回りなどの金利、為替市場などはあまり動いてはおらず、株価の反発は「売られ過ぎの反動(リリーフラリー)」が目立っている状況と考えられます。
そして、このまま中東の戦闘が終わった場合、戦火の拡大や泥沼化が回避され、市場にとって安心材料になりますが、ホルムズ海峡が閉鎖されたままでは、供給網(サプライチェーン)への懸念は残されたままとなり、スタグフレーション(景気後退とインフレの併発)リスクがくすぶることになります。
さらに、事態の正常化までに掛かる時間もポイントになります。海峡が解放されても、戦闘中に敷設された機雷などの障害物が存在しているのであれば、安全が確認されるまで船舶の通行は制限されるほか、直近で跳ね上がった船舶保険料が下がるまでに掛かる時間、そして、今回の戦闘では、中東諸国のエネルギー関連のインフラ施設が直接的な被害を受けており、特にLNGの製造装置などは、製造できるメーカーが世界に数社しかなく、壊れた施設が復旧するには、想定以上の時間が掛かるかもしれません。
つまり、足元で見せた株高は「戦火が広がらなくなったことへの安心感」が先行しており、あらためて、「経済の正常化までの時間軸」を織り込んでいくことが想定されます。
したがって、足元の株式反発は「強気の罠」となる可能性は想定よりも高く、派手な株価の値動きに振り回されない冷静な視点が求められることになりそうです。
(土信田 雅之)

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