3月の中小型株ハイライトは「中東情勢リスクにもらい事故」
あまりに順調だった2月までの日本株でしたが、3月に様相が一変。そのきっかけは、米国とイスラエルによるイランへの大規模攻撃でした。攻撃直後にホルムズ海峡が事実上封鎖されたことで原油価格が高騰。
ウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)原油の1バレル=100ドル超えがリスクオフムードを加速させました。その後は月を通じて、原油が上がれば株が下がり、原油が下がれば株が上がる「原油逆相関型」の地合いに。
最初の攻撃の直後、トランプ米大統領が「(イラン攻撃は)4~5週間を超える可能性がある」と発言したことで、事態の長期化を覚悟する必要が出てきたわけですが、時間の経過とともに市場参加者は事態の収束を意識します。また、TACO(どうせトランプは日和る)の意識もあるため、「下がったら買い」で動いた個人投資家が多かったようです。
トランプ米大統領は3月だけで12回も戦争の早期終結の可能性に言及したそうです。ただ、4~5週間を経過しても事態は収まらず、イランもホルムズ海峡の事実上の封鎖のほか、ミサイルやドローンで反撃。
原油も高止まりする中、中東のエネルギー依存が高い日本企業でいえば、物流費の上昇などを通じた業績マイナスが意識されます。この中東情勢リスクに関心が集中しましたが、その他でも金利上昇による米テック株の調整やプライベートクレジット問題で銀行株も低調でした。
投資家動向でいえば、外国人が売りに転じ、これまで買い遅れていた個人投資家が逆張りで買い手に。攻守交代するほどのトレンド変化が3月に発生し、前月まで過去でも最長級の11カ月連続上昇を記録していた東証株価指数(TOPIX)が12カ月ぶり月間マイナスに。
そのプライム市場の中小型株と比べれば…東証スタンダード市場指数、東証グロース市場指数の下落率はややマシではありました(大幅安ですが)。
そもそも、中東情勢リスクは、原油高などを通じて利益を圧迫することがマイナスという理屈があります。
おそらく影響などないわけですが、中小型株というのは流動性が低い意味でリスクの高い株とみなされる「リスク資産」です。そして、個人投資家の信用買いによる保有比率が高い銘柄がグロース市場には多くあったりします。
キオクシアホールディングス(285A) や ソフトバンクグループ(9984) 、日経平均レバレッジ上場投資信託(ETF)など信用買いの人気銘柄が3月急落。評価損益率の急激な悪化によって、売りが飛び火してきた影響を受けた可能性はありそうです(もらい事故?)。そんな3月に大きく上がった中小型株、大きく下がった中小型株をランキング化しておきます。
【スタンダード・グロース】3月の月間騰落率上位10 市場 コード 銘柄名 3月
騰落率 時価総額
(億円) S 9115 明海グループ 75% 458 G 6613 QDレーザ 59% 508 G 456A HUMAN MADE 57% 1,127 G 278A テラドローン 48% 437 G 6085 アーキテクツ・スタジオ・ジャパン 47% 341 G 6521 オキサイド 32% 520 G 485A パワーエックス 20% 2,020 S 4979 OATアグリオ 19% 324 G 296A 令和アカウンティング・HD 15% 310 S 6736 サン電子 15% 2,048 【スタンダード・グロース】3月の月間騰落率下位10 市場 コード 銘柄名 3月
騰落率 時価総額
(億円) S 3103 ユニチカ ▲40% 709 S 6226 守谷輸送機工業 ▲40% 729 G 7777 スリー・ディー・マトリックス ▲37% 569 S 6855 日本電子材料 ▲35% 848 G 3905 データセクション ▲33% 409 S 6366 千代田化工建設 ▲33% 2,577 G 402A アクセルスペースHD ▲32% 352 S 7760 IMV ▲32% 509 S 7279 ハイレックスコーポレーション ▲31% 1,150 G 7779 CYBERDYNE ▲30% 374 ※時価総額300億円以上、時価総額は4月1日終値時点
10%以上値上がりした銘柄が、スタンダードとグロース合わせて16銘柄しかありませんでした。一方で、10%以上値下がりした銘柄は134銘柄…やはり地合いが悪かった3月相場。なお、東証グロース市場の上場維持基準が厳格化した2026年ですが、その市場に飛び込むニューカマー「新規公開株(IPO)」は厳しい船出となっています。
3月は3社がIPO(全てグロース上場)しましたが、全銘柄の初値が公開価格割れ。2月の3社も全て公開価格割れでしたので、これでIPOの初値は6社連続公開価格割れ。
これ、過去初の不名誉な記録だそうです。IPO株の当選はほぼ必勝で、かつてのIPO株はプラチナチケットと呼ばれていましたが…今は当選したら損失確定という惨状。
新NISAで中小型株!今月の銘柄アイデアは…「逆襲時に大事なのは『上値のシコリの軽さ』」
原油の高止まりで、米国のガソリン価格は3年ぶりの高値に上昇。米国民のストレスが高まり、トランプ米大統領の支持率は就任後最低に低下しています。中間選挙までに支持率を回復させないといけないわけで、「どうせトランプ大統領はTACOるだろう…」そんな意識も広がる中、3月の月末に動きがありました。
トランプ米大統領が「ホルムズ海峡がほぼ閉鎖されたままでも、イランに対する米軍の作戦を終了する用意がある」「イランとの戦争が間もなく終結する可能性が高い」などと発言したことが停戦期待材料に。
米国株市場でも、中東情勢リスクを嫌った3月相場で下落率の大きかった銘柄ほど大きく上昇。これ、マーケット用語で「リターンリバーサル」と呼ばれる現象です。指数でいえば、SOX指数が1日で6%超の爆上げを果たしました。
これを受けた4月1日、新年度の初日の東京株式市場でも似たような現象が発生。3月に下げがきつかった大型株は、1~2月にパフォーマンスが良かった大型株です。
半導体、AI株中心に大幅リバウンドを果たし、4月1日の日経平均株価は前日比2,675円高(前日比+5.24%)と急騰。中東情勢リスクにより、需給で崩れた相場は、中東情勢リスク後退によって需給で戻す…これを見せつけました。
株は上昇しているとはいえ、ホルムズ海峡が実質的に封鎖されたままで米軍が攻撃を終えるだけでは、原油供給が滞っている状況は何も解決しないわけで、まだ原油は高止まりしています。それでも株価が戻そうとしているのは、短期のリバウンドは業績より需給影響が強いため。
それでいえば、本来は業績影響など皆無な日本の中小型グロース株まで巻き込まれて下げました。こっちも需給で崩れた相場だったため、4月1日は需給で戻しました。東証グロース市場250指数は前日比+5.48%で、日経平均株価にも上昇率で勝り、上昇率としては今年最大を記録しています。
さあ、巻き返しだ! そんな4月ですが、急騰翌日の2日、トランプ米大統領が演説でハシゴを外してくれました…。終結宣言あるか?と期待を高めていた市場のアテは完全に外れ、「2~3週間後に徹底的にイランを攻撃する」と発言。
こうなると、4月後半までに再度イランを激しく攻撃するといった事実が伝わる可能性が出てきます。リスクオフ材料とみなされるヘッドラインが出るリスク。
そしてその後、再度停戦期待が広がるのでしょう。今度は4月1日のようなリスクオン材料とみなされるヘッドラインが出る期待。こんなのに振り回されるくらいなら、もう「じっとしておこう」と考える投資家は増えそうで、それが薄商いに拍車をかけそうでもありますが…。
3月の波乱の中で、中小型株市場においても気になるのは、セリングクライマックス的な動きが一切起きなかったことでした。
東証グロース250指数も3月はリスクオフで大きく崩れたわけですが、売買代金は一貫して減少傾向でした。つまり、損失に耐え切れず、投げ売り的にポジションを整理した個人投資家は多くなかったということ。
そして、二市場全体の信用買い残も20年ぶり高水準を積み上げているように、「中東情勢リスクは嫌だ」と言いながら、実際のポジションは楽観的、リスクオン的な個人投資家が多いといえそうです。信用で買った投資家含め、上値での戻り売り圧力はかなり強そうと見ておくべきでしょう。
リターンリバーサル局面で重要!信用のシコリが軽い中小型株は?
【条件】
(1)スタンダードorグロース銘柄
(2)時価総額300億円以上
(3)売買代金25日移動平均が5億円以上
(4)3月騰落率がマイナス10%以下(市場全体より下落率大きい)
(5)「信用買い残/売買高25日平均」が100%未満
※3月末時点、信用買い残/売買高25日平均が小さい順
コード 銘柄名 3月
騰落率 信用買い残
/売買高25日平均 1723 日本電技 ▲27% 10% 2782 セリア ▲13% 12% 6227 AIメカテック ▲13% 14% 6877 OBARA GROUP ▲12% 15% 1909 日本ドライケミカル ▲22% 21% 7906 ヨネックス ▲20% 31% 3103 ユニチカ ▲40% 38% 6777 santec HD ▲17% 70% 4970 東洋合成工業 ▲13% 82% 1965 テクノ菱和 ▲25% 84% 7564 ワークマン ▲20% 84% 7287 日本精機 ▲20% 84% 255A ジーエルテクノHD ▲22% 92% 6855 日本電子材料 ▲35% 99%
停戦に向けた進展が引き続き期待される中、リターンリバーサルの動きは引き続き待っていきたい4月相場。リバウンド局面で強い出力を発揮しそうなのは、「手前での下げが大きい」「流動性がある」「信用買い残が売買高に対して軽い(シコリが小さい)」銘柄と考えられます。
スタンダード、グロースに上場する全銘柄の中でスクリーニングしたところ…条件に合致したのは全部で14銘柄だけ、全てスタンダード銘柄でした。中東和平を待ちましょう。
(岡村 友哉)

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