国内106銀行「中小企業等・地方公共団体向け貸出金残高」調査


 2024年9月中間期の国内106銀行の総貸出金残高は、559兆5,133億円(前年同期比3.8%増)で、2012年同期以降、増加を続け過去最高を更新した。
 このうち、中小企業等向け貸出は374兆9,580億円(同2.6%増)、地方公共団体(以下、地公体)向け貸出は40兆3,333億円(同2.0%増)で、ともに前年同期を上回った。中小企業は物価高や資材、人件費の上昇などで資金需要が活発化している。

こうした中小企業に対し、銀行はマニュアルや金利引き上げだけでなく、企業の実態に即した適切な支援が出来るか、力量が問われている。

 業態別の中小企業等貸出金は、大手行が前年同期比2.4%増、地方銀行が同2.9%増、第二地銀が同2.1%増で、全業態で伸ばした。ただ、総貸出金に占める中小企業向け貸出金の比率は、9月中間期では2010年以降で最低の67.01%(前年同期67.80%)に落ち込んだ。地公体向けは7.20%(同7.33%)で、2年ぶりに前年同期を下回った。

 2024年度の企業倒産(負債1,000万円以上)は、11年ぶりに1万件を超えた。コスト上昇に続き、金利引き上げも動き出したが、過剰債務の解消が見込めない企業は少なくない。さらに、トランプ関税で景気の先行きに不透明感が漂い始めた。財務内容だけでなく、中小企業の実態に応じた事業支援、再生や廃業、M&Aなどの取り組み強化で、銀行の存在意義を示すべきだろう。

※本調査は、国内106銀行の2024年9月中間期決算で、「地方公共団体向け」と「中小企業等向け」の貸出金残高を前年同期と比較、分析した(りそな銀行、沖縄銀行は信託勘定を含む)。「中小企業等」は、個人向け貸出を含む。

24年9月中間期 中小企業等向け貸出は374兆円 過去最高を...の画像はこちら >>


中小企業等向け貸出67.01%、3年連続の低下で過去最低に

 2024年9月中間期の総貸出に占める中小企業等向け貸出比率は67.01%(前年同期67.80%)で、3年連続で低下した。
 コロナ禍の資金繰り支援で、2021年9月期は68.00%だったが、支援終了で減少に転じている。


 トップが佐賀共栄銀行の95.83%(前年同期94.52%)で、総貸出金残高が1,919億4,000万円(前年同期比0.4%増)のうち、中小企業向け貸出残高は1,839億5,200万円(同1.8%増)だった。
 以下、神奈川銀行94.42%(前年同期93.45%)、スルガ銀行93.51%(同94.65%)で、最低は東邦銀行の51.54%(同49.99%)。
 中小企業向け貸出比率は、地方銀行62行のうち37行(構成比59.6%)で上昇した。第二地銀は、37行のうち17行(同45.9%)で上昇したが、大手行は7行すべて前年同期を下回った。
 コストアップが続くなか、新たな資金調達が難しい企業も多い。企業の状況に応じた資金支援に加え、経営再建や廃業支援など、企業ニーズの掘り起こしも重要だ。

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