4月の倒産 4月では4年連続で増加、「従業員退職」が2倍に急増


 2025年4月度の全国企業倒産(負債1,000万円以上)は、件数が828件(前年同月比5.7%増)、負債総額は1,028億200万円(同9.3%減)だった。
 件数は、4月では4年連続で前年を上回った。800件超は2014年(914件)以来、11年ぶり。

また、今年に入り月次では2月の764件を除き、800件台で推移している。
 負債総額は、2カ月ぶりに1,000億円を上回ったが、4月では2年連続で前年を下回った。負債100億円以上の発生がなく(前年同月1件)、最大の負債額はLa Plume Niseko Resort特定目的会社(東京)の60億円だった。同1億円未満は650件(前年同月比11.3%増)で、構成比は今年最高の78.5%(前年同月74.5%)に達し、小規模倒産を中心にしている。

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 物価高や人件費の上昇、金利負担の増加などが続くなか、突然のトランプ関税で不確実性が高まっている。また、7月の国政選挙でどのような中小企業対策が打ち出されるのか注目されるが、現状は過剰債務を抱えた企業が倒産の趨勢を左右する展開になるだろう。
 また、米の品薄と米価高止まりが続くと、飲食店、米穀卸の動向と同時に、個人消費への影響も懸念される。このため、企業倒産は業績回復が遅れた企業の息切れ型倒産を中心に、増減を繰り返しながら増勢をたどる可能性が高い。


・形態別件数:破産が753件で、構成比は90.9%
・都道府県別件数:前年同月を上回ったのが25道府県、減少18都府県、同数4県
・負債額別件数:負債1億円未満の構成比78.5%、100億円以上は2カ月連続で発生なし
・業種別件数:機械器具小売業、繊維・衣服等卸売業、飲食料品小売業などが増加
・従業員数別件数:従業員10人未満の構成比は89.7%
・中小企業倒産(中小企業基本法に基づく)の構成比は、2カ月連続で100.0%
・「人手不足」関連倒産は、従業員退職14件(前年同月7件)、人件費高騰12件(同12件)、求人難10件(同6件)で、合計36件(同25件)
・「物価高」倒産は56件(前年同月60件)で、2カ月連続で前年同月を下回る

◇倒産データ分析:https://www.tsr-net.co.jp/news/data_analysis/index.html

産業別 10産業のうち、6産業で前年同月を上回る

 2025年4月の産業別件数は、10産業のうち、6産業で前年同月を上回った。
 最多はサービス業他の292件(前年同月比10.6%増)で、7カ月連続で前年同月を上回った。月次倒産に占める構成比は35.2%(前年同月33.7%)。
 このほか、情報通信業34件(前年同月比3.0%増)が4カ月連続、農・林・漁・鉱業12件(同300.0%増)と建設業152件(同4.1%増)が2カ月ぶり、小売業106件(同32.5%増)が3カ月ぶり、運輸業38件(同15.1%増)が5カ月ぶりに、それぞれ前年同月を上回った。 
 増加率が最も大きい農・林・漁・鉱業では、耕種農業(2→5件)や畜産農業、園芸サービス(各ゼロ→3件)などで前年同月を上回った。


 一方、卸売業85件(同12.3%減)と不動産業20件(同13.0%減)が2カ月連続、製造業88件(同12.0%減)が8カ月ぶり、金融・保険業1件(同75.0%減)が3カ月ぶりに、それぞれ前年同月を下回った。

2025年4月の全国企業倒産828件
2025年4月 産業別倒産状況


2025年4月の全国企業倒産828件
主なサービス業他 倒産状況

地区別 9地区のうち、8地区で前年同月を上回る

 2025年4月の地区別件数は、9地区のうち、8地区で前年同月を上回った。
 九州84件(前年同月比6.3%増)が8カ月連続、中部88件(同3.5%増)が7カ月連続、北海道26件(同30.0%増)と近畿228件(同20.0%増)、四国22件(同100.0%増)が2カ月ぶり、東北52件(同30.0%増)と北陸14件(同27.2%増)が3カ月ぶり、中国37件(同15.6%増)が7カ月ぶりに、それぞれ前年同月を上回った。
 北海道、近畿、四国、九州の4地区は今年最多となった。
 一方、関東277件(同12.0%減)が、2カ月連続で前年同月を下回った。

2025年4月の全国企業倒産828件
2025年4月 都道府県別倒産


※地区の範囲は以下に定義している。
東北(青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島)
関東(茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、山梨)
中部(長野、岐阜、静岡、愛知、三重)
北陸(富山、石川、福井)
近畿(滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山)
中国(広島、岡山、山口、鳥取、島根)
四国(香川、徳島、愛媛、高知)
九州(福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄)

当月の主な倒産

[負債額上位5社]
1.La Plume Niseko Resort特定目的会社/東京都/リゾート開発/60億円/破産
2.熊本観光開発(株)/熊本県/ゴルフ場運営ほか/56億4,400万円/民事再生法
3.APB(株)/福井県/全樹脂電池開発製造/34億8,500万円/破産
4.(株)第一プロパレス/大阪府/分譲マンション等開発販売/30億円/破産
5.(株)AT清算会社/熊本県/ホテル運営/27億円/特別清算

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