ゴルフ、サッカースクールなど、スポーツ教室の倒産(1-4月)が過去20年で最多の11件に達した。人件費や光熱費上昇などコストが高騰している一方、競合教室の増加やオンライン指導、動画配信などライバル出現で熾烈な競争が続き、月謝値上げも難しくなっている。
休廃業・解散(2024年)は48件(前年26件)とほぼ倍増し、淘汰が進んでいる。
東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースから、スイミングやテニス、ゴルフ、サッカー、ダイビングスクールなど指導者が教えるスポーツ教室(スポーツ・健康教授業)の倒産や休廃業・解散を分析した。
スポーツ教室は大手と小・零細規模のすみ分けから、倒産はこれまで小康状態が続き、年間10件を下回る水準で推移していた。
だが、コロナ禍が落ち着き始めた2022年と2023年は20件に達した。物価高が追い打ちをかけ、電気代や施設利用料などの高騰で利益が悪化している。月謝値上げは利用者の減少にもつながりかねず、なかなか容易でない。また、オンライン指導や動画配信などで手軽に始める利用者も増え、今年は4月までの累計が過去20年で最多の11件に達した。
スポーツ教室の休廃業が過去最多
倒産急増の予兆は、事業を停止した休廃業・解散にも表れている。年間(1-12月)での最多は2024年の48件で、2023年の26件から2倍近くに増えた。競争に加え、運営コストの上昇に月謝の値上げが追いつかず、指導員の賃上げ、人手不足も解消メドが立たない状況だ。
これ以上の値上げは、利用者の負担が重く、利用回数の減少や退会に結びつく。そのため、倒産する前に早めの撤退が急増している。
子どもから大人まで、健康を志向する人にも、一流選手を目指す人も利用できるスポーツ教室だが、物価高の波に揉まれている。
スポーツ教室の倒産、休廃業・解散の増加は、将来のスーパースターの芽と夢を摘むかもしれない。だが、月謝への価格転嫁は家計への負担に直結する。利用者減少から経営が悪化している教室も目立ち始めた。
月謝と利用者のニーズのバランスが崩れると、倒産や休廃業の増加を止められない。2025年はスポーツ教室にとってにターニングポイントとなりそうだ。
(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2025年5月22日号掲載「取材の周辺」を再編集)