2025年上半期(1-6月)「病院・クリニック」の倒産状況
病床20床以上の病院の経営が厳しさを増している。2025年上半期(1-6月)の病院・クリニックの倒産は21件(前年同期比16.6%増)だった。
特に、病床20床以上の病院は8件で前年同期の2.6倍に急増。このうち従業員50人以上300人未満は6件(前年同期1件)と中堅規模で目立ち、従業員300人以上も2件(同ゼロ)発生した。
コロナ禍の独立行政法人福祉医療機構(WAM)のゼロゼロ融資の返済開始がピークを迎えるなか、診療報酬の上昇が物価高に追いつかず、医師や看護師などの人件費、入院患者の食材上昇に加え、光熱費の高騰などで施設の維持管理費もアップし、医療機関の収益悪化が加速している。
病院・クリニックの上半期の倒産は、コロナ禍前の2019年は17件発生したが、2020年はコロナ関連支援策に支えられ、9件(前年同期比47.0%減)とほぼ半減した。その後、増加に転じ、2024年は18件に急増した。物価高や人件費、人手不足がさらに深刻化した2025年は21件(同16.6%増)に達し、5年連続で前年同期を上回った。
今期は特に、地域医療の中核となる病院の倒産が目立った。2025年上半期のクリニックの倒産は13件(同13.3%減)と減少したが、ベッド数20床以上の病院は8件(同166.6%増)と前年同期の2.6倍に急増し、過去15年間で最多だった。また、負債10億円以上が5件(前年同期1件)、従業員300人以上が2件(同ゼロ)、同50人以上300人未満が8件(同1件)とそれぞれ増加し、人口減の中で地域の核となる病院の苦境が鮮明となった。
医療機関は、理事長・院長の高齢化が進み、医師や看護師不足、医療設備の老朽化などの課題に直面している。加えて、診療報酬が人件費や電気代、備品・消耗品などの物価上昇に追い付かず、経営を圧迫している。
医療業務のコストと診療報酬のバランスが崩れ、採算が悪化する状況に追い込まれている医療機関は少なくない。地域によって人口減少に伴う患者数や働き手の減少もあり、地方を中心に医療空白のエリアが増えることも現実味を帯びている。
※本調査は、日本標準産業分類の「病院」「一般診療所」から負債1,000万円以上の倒産を集計、分析した。
原因別は、「販売不振」が14件(構成比66.6%)で最多。次いで、「既往のシワ寄せ」が3件(同14.2%)、「他社倒産の余波」2件(同9.5%)と続く。
形態別は、21件すべてが消滅型の「破産」で、再建型はゼロだった。
負債額別は、「1億円以上5億円未満」が8件(前年同期比11.1%減、前年同期9件)で最多。 次いで、「10億円以上」が5件(前年同期1件)。
従業員数別は、前年同期は1件だった「50人以上300人未満」が8件発生したほか、300人以上も2件発生した。