建て替えや再開発に欠かせない解体工事は、不動産市況のバロメーターのひとつだ。建設業界ではゼネコンの好調な業績が目立つが、解体工事業の倒産が過去最多ペースをたどっている。
安全確保や労働時間の管理など、コンプライアンス遵守が厳しく求められるなか、一部業者のホームページには「格安」や「安価」などの言葉が飛び交う。解体工事業の淘汰の波はどのように押し寄せているのか。
小規模企業だが負債は肥大化
2025年1-7月の解体工事業の倒産は36件(前年同期比12.5%増)だった。過去20年間では、2012年同期に並ぶ最多件数で、このペースで推移すると、これまで年間最多だった2024年の59件を超える計算だ。
倒産した36件を原因別でみると、受注不振が23件(構成比63.8%)と6割超を占める。価格競争による値引きや受注競争で売上が落ち込んだ業者が多い。
倒産形態は、36件すべて破産だった。民事再生法などによる再建は難しいようだ。
資本金別は、1億円以上がゼロで、個人企業を含む1,000万円未満が28件(構成比77.7%)と小規模事業者が目立つ。
ところが、負債額別では1億円以上が14件(構成比38.8%)と約4割を占める。
資本金が少額にも関わらず負債が肥大化する理由として、機械や重機、車両などへの投資のほか、コロナ禍の資金繰り支援や運転資金の借入が膨らんだことが考えられる。
都道府県別では、最多が東京都の9件(前年同期比350.0%増)。
解体工事業は、業績悪化などでコスト削減を過度に優先すると、騒音や振動、粉塵などのトラブルに発展することもある。最悪の場合、解体物の不法投棄など、環境汚染や事故を招きかねない。
建設業界の足下を支える解体工事業にも、人手不足やコスト高が襲い掛かる。小規模の業者の淘汰が増えると、デベロップメント計画や工事進捗に目詰まりを起こす事態も懸念される。