脱毛サロン最大手の「ミュゼプラチナム」を運営していたMPH(株)(TSRコード: 036547190)が8月18日、東京地裁から破産開始決定を受けた。大手脱毛サロンの多くは、積極的な広告宣伝に展開している。
MPHの破産は負債総額約260億円、被害者(契約者)は120万人を超え、社会問題化している。
ミュゼプラチナムの本社(2024年12月TSR撮影)
事業拡大ありき
破産した脱毛サロンの経営手法はいくつかの共通項がある。最初の契約は格安の利用料金を設定し、集客には有名人を広告塔に起用、著しいペースで出店を加速する、などだ。国内マーケットでしのぎを削る以上、1社がこうした手法を採ると他も追随せざるを得ないことも背景にある。
同じように国内マーケットで事業する飲食店やホテルなどと違う点は、利用者と契約時に数年や数回、永年を含め長期契約を結び、前受金を受けることにある。前受金は将来分の施術負担も含まれるが、脱毛サロン側は施術時期まで資金を確保できる。
その資金を事業拡大に向けて流用すると、事業自体は倍々に拡大するが、将来の施術費用(債務)も倍々に増えていく。事業拡大が続く限り、その債務を賄えるが、拡大が止まると一気に資金繰りが悪化する。
この泥沼の競争は、大手クラスの大半を消耗させて次々に倒産に追い込んだ。被害者は、前払金を払った利用者で、ミュゼは120万人超、銀座カラーは約10万人だ。
未払賃金問題も露呈
ミュゼ破産はもう1つ問題点がある。
通常、未払賃金を企業が抱えたまま倒産すると、国の「未払賃金立替制度」を利用できる。所管の独立行政法人労働者健康安全機構によると、2024年度に制度が適用された企業は2,623件で、支給社数は10年ぶりに3万人を超えた。
だが、MPHは経営悪化後、休業や新会社設立などを進め、「未払賃金立替制度」の適用が難しかった。そのため未払賃金を抱えた従業員が集まり、債権者として破産を申し立てた。 破産開始決定により「未払賃金立替制度」が適用されるとみられる。
脱毛サロンの相次ぐ破産で多くの契約者が被害を被り、今回の事例では従業員にも被害が及んだ。事業移管では契約者情報の取り扱いにも慎重さが必要だ。こうした点を踏まえ、規制の在り方について本格的な議論が必要だ。
(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2025年8月21日号掲載予定「取材の周辺」を再編集)