交響楽団(オーケストラ)が存立の危機に立たされている。多くの交響楽団で収入が落ち込んでおり、赤字が目立つ。
芸術文化の発展に重要な役割を担ってきたが、コロナ禍を境に流れが変わった。一度離れた会員の呼び戻しや、企業などから協賛・寄附金を増やすと同時に、コスト管理を強める必要に迫られている。だが、自助努力にも限界がある。音楽文化を根付かせ、発展させるにはファンだけでなく、一人ひとりの応援の広がりも欠かせない。
2年連続の赤字
交響楽団の多くは、公益性の認定を受けた「公益財団法人」だ。税制面での優遇を受ける一方、社会活動などの厳格な運営も求められている。また、純資産額が一定基準を下回ると解散しなければならない。
東京商工リサーチは、3期連続で業績が比較できる20団体を調査した。コロナ禍の影響が大きかった2022年度の売上高合計は177億7,453万円で、最終利益は5億2,515万円と採算ベースに乗せていた。
ところが、2023年度の売上高は前年度比1.9%減の174億3,431万円に落ち込み、最終利益はマイナス4億5,301万円と赤字に転落した。2024年度は入場者数が緩やかに回復し、売上高は4.1%増の181億6,221万円と増収に転じた。
交響楽団の取り組み
日本を代表する交響楽団の1つである「日本フィルハーモニー交響楽団」は、2026年に70周年記念の特別演奏会や特別定期演奏会を企画している。2025年度の事業計画では、「企業や学校、ホール、自治体等に対する新規受託や協賛を推進し、演奏料収入の拡大を図る。また魅力あるプログラムを増やして来場者率のアップを図り、入場収入の増加」を掲げている。
「九州交響楽団」は2025年10月、経営改革プランを公表。最終赤字が続き、財団法人の解散を避けるためにも早期黒字化に向け、収入源の多様化やファンのすそ野拡大などの方針を打ち出した。チケット価格の見直しや協賛金獲得に向けた活動強化などの取り組みを進めている。
文化の根を未来につなぐためにも、音楽分野でも草の根の動きがより重要になっている。
(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2025年12月10日号掲載「取材の周辺」を再編集)

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