第二のオルツはどこか――。循環取引による大規模な粉飾決算が発覚した(株)オルツ(TSRコード:012883700)の余波が止まらない。

AIを活用した議事録作成アプリを展開していたオルツの実力は、広告代理店などを経由した幻だった。再建を志向する民事再生法を7月に申請したが、その夢も潰えた。これに前後して、「AI関連」、「デジタル商材」、「急成長」など、オルツから想像されるワードを組み合わせる頭の体操が活発になった。

 オルツが上場していた株式市場をモジって、「グロース屋さんとの距離感が難しくなった」と耳打ちする開示関係者もいる。風評を含めて企業監査や情報開示に与えた影響は計り知れない。
 与信も再考を迫られている。大手金融機関では、与信先の取引先もスクリーニングしているが、「越境融資」を抱える地域金融機関は対応が後手に回っている。ましてや事業会社が与信する際に「先の先」を可視化するのは至難の業だ。ことし6月、金融庁は金融機関向けの粉飾検知に向けたレポートで、粉飾検知には担当者の違和感が最も重要と示した。これを研修に活用しようとする事業会社もあるが、「担当者は営業マンなので違和感に気付けないことが多く、感じても審査まで上がってこない」(審査部)と漏らす。

 そもそも売上(売掛)の実在を確かめるのは難しい。ことし、粉飾が疑われながら民事再生を申請したある企業の再建が迷走した。
スポンサーが選定されるまでの資金繰りはタイトになりがちだが、今回のケースでは取引先との契約形態の精査に慎重を期す必要があった。さらに、会社側から後出しでネガティブな情報が出てきて二転三転した。法的申請後にファイナンスを打診された金融機関の担当者は、その対応に頭を抱えている。一般論と前置きしたうえで、「適切な情報が得られない場合や海外向け売掛を前提とした再生ファイナンスは出しにくい」と本音を語る。融資のプロでも、売掛に関する情報や種類を見極めながら対応している。

 企業をみる際の解像度をどのように上げていけばいいのか。今年、与信業界を賑わせた企業やレポートはまさに生きた教材だ。

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