NHKで好評放送中の大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」。“江戸のメディア王”と呼ばれた“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く物語は、快調に進行中。
-大河ドラマ初出演が決まった時のお気持ちはいかがでしたか。
最初は信じられませんでした。ちょうど全国ツアーの途中、ある地方公演が終わって食事に行ったとき、スタッフさんから突然、「大河ドラマの話があるんだけど」と言われたんです。本当に驚きました。「いつか大河ドラマに出演したい」という大きな夢はありましたが、それがまさか今年だとは想像もしていなかったので。
-周囲の反響はいかがでしたか。
大河ドラマは幼い頃から家族で見ていたので、家族はとても喜んでくれました。特に、父は歌手なので、大河ドラマ出演の重みを誰よりも理解していたため、それはそれは喜んで。ただその分、情報解禁の日までは、伝えたい気持ちをぐっと堪えて秘密にしていたんです。話してしまうと、父が自分のステージで、お客さんに「息子が大河ドラマに出演します」としゃべってしまいそうで(笑)。
-ファンの皆さんも喜ばれたでしょうね。
ファンの皆さんもきっと喜んでくれると思っていたので、情報解禁まで明かせないことが、すごくもどかしかったです。今では、全国各地で「大河ドラマに出演します」と言うと、自分の歌より盛り上がるのでは、というくらい大きな反響があります(笑)。
-演じる富本斎宮太夫は浄瑠璃の太夫ということで、歌手の新浜さんにふさわしく、第33回では歌(語り)を披露する場面もあるそうですね。
一見、歌手と共通する部分がありそうなのですが、実は歌い方が現代とはまるで違うんです。だから、こぶしをきかせたり、ビブラートさせたり、という現代風の歌い方にならないように、細かく先生の指導を受けた上で本番に臨みました。かなり苦戦しましたが、移動の合間に浄瑠璃の映像を繰り返しチェックするなど、必死に食らいついていきました。
-そして迎えた本番の様子はいかがでしたか。
歌の現場とはまったく違いましたが、演出の方や主演の横浜流星さんをはじめ、スタッフ、キャストの皆さんが温かく迎えてくださり、お芝居初心者の僕にやりやすい環境を作ってくださいました。収録は日光でのロケだったので、前日に前乗りし、早朝から特殊メイクを含めて2時間くらいかけて準備した上で、本番に臨みました。ロケは炎天下でしたが、演出の方も、本番で僕の声が枯れないように、リハーサルから気遣ってくださって。
-終わった後の達成感はいかがでしたか。
こんなすてきな作品に関わることができた感動と共に、ものすごい達成感がありました。収録後、横浜さんに「いつかまたご一緒できる日を楽しみに、これからも頑張ります」とご挨拶したところ、横浜さんからは「がんばレオン!」という言葉をいただきました(笑)。
-主演の横浜流星さんとは同世代ですが、ご一緒した感想はいかがでしたか。
横浜さんは昨年末、僕が初出場したNHK紅白歌合戦の審査員を務めてくださり、その2カ月後には成田山新勝寺で行われた節分の豆まきでもご一緒しました。今回が3度目の対面ということで、「まさかあの時のレオンくんに、ここで会うとは思わなかった」という言葉をいただきました。横浜さんとは同い年という事もあり、収録の合間に親しくお話させていただきましたし、横浜さんの演技を間近で見られたことも、大きな刺激になりました。
-第33回は富本斎宮太夫が「歌(語り)の力で、騒動を落ち着かせる」ということで、歌の力が人の心を動かすことになりそうですが、ご自身もエンターテインメントに携わる人間として、どのように感じましたか。
いつの時代も、歌を始めとした芸事には人を動かす力があるんだな、と知ることができ、とてもうれしかったです。自分が素晴らしい仕事をさせてもらっていることを、改めて実感する時間にもなりました。今も数々の自然災害をはじめ、辛いニュースはたくさんありますが、僕の歌が少しでもそれを忘れる癒しの時間になってくれたら嬉しいですし、何より歌を通じて皆さんにエールを送りたいと、強く思いました。
-今回の出演で、俳優業に対するやりがいを感じることはありましたか。
俳優業も僕の目標のひとつなので、こういったチャンスをいただけるように、これからも頑張っていきたいと、改めて思いました。先日も、大先輩の五木ひろしさんや坂本冬美さんの明治座、新歌舞伎座といった大きな舞台での座長公演を拝見しましたが、僕もゆくゆくはそういう歴史のある舞台で、座長公演に挑戦したいという気持ちも湧いてきました。
-同時に、今回の大河ドラマ出演で、昨年の初出場に続く二年連続の紅白歌合戦出場に弾みがつきそうですね。
今回、大河ドラマに出演させていただき、大きな夢がひとつかなったことで、これからもチャレンジを続けていこうという気持ちがより強くなりました。そういう意味で昨年は、僕にとっての甲子園といえる紅白の舞台に立たせていただくことができましたが、初出場は甲子園で言えば一回戦のようなもの。今後は二回戦、三回戦へと進みたい、さらに言えば「歌手でいる限り、紅白の舞台にずっと立ち続けるんだ!」という意欲も湧いていました。そして、見たことのない景色を、これからもファンの皆さんやお世話になった方々にお届けしなければと、気が引き締まりました。
-それでは最後に、放送を楽しみに待つ視聴者への言葉をお願いします。
素晴らしい作品に携わらせていただき、感謝の気持ちでいっぱいです。あの時代へのリスペクトの気持ちを込め、大切に務めさせていただいたので、少しでも作品の力になれたら嬉しいです。視聴者の皆さんからどんな反響があるのか、今はまだ期待と不安が入り混じっている状態ですが、全力で取り組ませていただいたことは間違いありません。
(取材・文・写真/井上健一)