ドリームワークス・アニメーションの代表作を実写映画化したドラゴンライド・アドベンチャー『ヒックとドラゴン』が9月5日から全国公開される。バイキングとドラゴンが争いを続けてきた島を舞台に、心優しいバイキングの少年ヒックと傷ついたドラゴンの交流が、島の未来を大きく変えていく姿を描く。
-今回はオーディションでヒック役に決まったのですか。
そうです。この作品でヒック役のオーディションがあると聞いて、ぜひやってみたいと思いましたが、まさか自分に決まるとは思っていませんでした。オーディションで録ったものを本国に送ってチェックを受けるのですが、送ったら「駄目でした」ということも多々あるらしいので、あまり期待はしていませんでした。だから「決まりました」と言われた時は素直にうれしかったし、驚きました。今回が初めての吹き替えで、未知の世界だったので、その不慣れな感じがヒックと合っていたのかなと。でも、大作だし、自分の畑ではない仕事をするのは新たな挑戦なので、同時にプレッシャーも感じました。
-ヒックのキャラクターをどのように捉えましたか。
ヒックは、最初は弱く見えますが、すごく真っすぐで心の優しい少年だと思いました。トゥースやドラゴンに対しての考え方もすごくピュアで、きれいな心を持っている少年というイメージです。トゥースと出会ってからどんどん成長していく姿を見ていると、役者を始めた頃の、心が弱かった自分と重ねてみたりして心に響くものがありました。
-吹き替えるに当たって気を付けたことはありましたか。
自分がやった芝居にアフレコで声を当てる時は、自分の顔や唇の動きを見て当てているし、自分の声に当てていくので、自然に入っていけますが、誰かがやった芝居に自分の声を乗せていくのはとても難しかったです。日本語と英語とでは、唇の動かし方も違うし、間尺も違う。その中で、ヒックとしての遊びを入れたり、間を作っていくとなると考えることが多過ぎて、常に頭の中がフル回転みたいな感じでした。ヒックが話し始めた声とぴったりにスタートするのは、相当慣れていないと難しくて、どれだけ脚本を読み込んで全部せりふを覚えていったとしても、何十ページ分も一気に録って、それを合わせていくという作業だし、感情のつながりもあるので、一度で全部うまくいくことなんて絶対にありませんでした。そこらへんはなかなか難しかったです。
-吹き替えで難しかったところと楽しかったところはありましたか。
初めてのことだったので、付いていくのに必死な部分もありましたし、基本的には全てが難しかったのですが、それと同じぐらいの楽しさもありました。
-ヒックに共感できるところはありましたか。
ヒックを演じたメイソン・テムズさんの動きに共感しました。もし僕がヒックを演じてもこういう選択をしそうだという表情筋の動きなどがあって驚きました。だからヒックというキャラクターに共感をするというよりも、テムズさんに対して「ここでこの顔を持ってくるのか。分かる」みたいな共感がありました。彼が演じた役に声を当てる、日本語で命を吹き込むという作業なので、まず彼のお芝居を好きになる、彼の表現を好きになる、彼のアプローチを好きになるというところから入っていけば、自然とヒックも好きになれるのかなと思いました。
-映画の見どころや注目点をお願いします。
映像はため息がでるほど素晴らしいし、スケール感にも圧倒されます。僕はIMAXで字幕版を見させていただいたんですけど、とんでもない作品の吹き替えをやったんだなと思いました。見どころは、ヒックが成長する姿とか、アスティー(ニコ・パーカー)との恋愛模様もそうだし、お父さん(ジェラルド・バトラー)との関係性の変化もそうだし、特にドラゴンとのシーンは圧巻です。あとはジョン・パウエルさんの音楽がすごく好きです。大まかなところはアニメ版と変わらないので、原作アニメファンの方も絶対に楽しめると思うし、アニメのカットをそのまま実写化してる部分もあるので、初めて見る人も楽しめるし、昔から好きな人もいろんな記憶がよみがえってくるのかなと思います。世界中でメガヒットをしているので、日本でも「トップに追いつけ」となってほしいです。
-これから映画を見る方々に向けて、アピールポイントも含めて一言お願いします。
改めて「ヒックとドラゴン」の魅力に気付いてもらいたいです。本当にすごいスケール感で描かれてるし、現実からちょっと離れて非現実的な体験ができるドラゴンライドのシーンも見どころです。それに加えて、人間ドラマの部分がしっかりとしていて、キャラクターの一人一人の感情が繊細に描かれてるからこそ、そこにちゃんと感情移入ができるところが素晴らしいと思います。そういう人間ドラマの部分もぜひ楽しんでもらえたらと思います。
(取材・文・写真/田中雄二)