2023年の日本初演で大きな反響を呼んだ、ジャンポール・ゴルチエの激動の半生を描いたエンターテインメント「ファッションフリークショー」が、9月12日から日本再上陸する。本作は、世界的ファッションデザイナーとして知られるジャンポール・ゴルチエが幼少期からトップデザイナーとして躍進していくまでの半生を音楽・ダンス・ファッションを融合させた舞台芸術として描く。

本公演を応援するアンバサダーに就任した増田貴久に、本作の魅力やファッションについて聞いた。

-アンバサダーに就任したときの気持ちを教えてください。

 日本初演が決まったときにどうしても見に行きたいと思い、スケジュールを調整したのですが、仕事があって行けず、友達やスタッフさんから「面白かった」と聞いて悔しい思いをしていました。今回、再び公演が決まり、アンバサダーのお話をいただいてすごくうれしかったのですが、同時に、僕は初演を見ることができなかったのに良いのかなと(笑)。作品に関わっているスタッフの皆さんの熱量が高く、いろいろと教えてくださるので、今、僕が一番、公演を楽しみにしていると思います。今回、こうしてアンバサダーとして活動する中で、たくさんのすばらしい洋服を見させてもらい、ステージ上でも使われているオートクチュールの衣装を着させてもらい、すごく気合が入ります。

-この作品のどんなところに興味を引かれて、初演を観劇したいと思ったのですか。

 今回もそうですが、初演のとき舞台の映像をダイジェストにしたものを見て、すごくきれいな絵が切り取られていて、その絵がおしゃれ。照明もセットももちろん服も、パワーがすごくてすごいと思いました。

-増田さんとゴルチエの洋服の出合いは?

 2010年くらいだったと思いますが、たまたまゴルチエの路面店ができたというニュースを見て、探して行ったのが最初でした。そこで、ライダースのジャケットを買ったんですよ。当時、ライダースは持っていなかったですし、自分のファッションに取り入れたこともなかったんですが、裏地が青の黒のライダースを売っていて。

何にでも合うなと思って買いました。スーツの上に着てもシャツでも合うなと思うので、いろいろな着方できるなと。そのライダースは今も持っています。このアンバサダーが決まって、最初の衣装合わせのときにも着て行きました。

-今日の衣装もゴルチエのオートクチュールだと聞いています。この衣装を選んだ決め手は?

 パッと見て、洋服屋さんに並んでいたら買おうと思う服だったので(笑)。ゴルチエさんの服は、「これ、どうやって着るんだろう」と思うような、面白い服が多いんですよ。洋服を見ていて、楽しい気分になれることってあまりないですし、着方に驚くこともあまりないじゃないですか。でも、ゴルチエさんの服はアイテムから洋服の楽しさやパワーが伝わってくるので、僕自身もすごく影響を受けています。僕もライブの衣装を自分で作らせてもらっているので、この上着にこれをつければいいんだとか、今後の衣装の参考にさせていただいています(笑)。

-NEWSの衣装を手がける際にはどんなところにこだわっているのですか。

 もちろん、メンバーが気に入ってくれて、楽しくなって、自信を持てて、テンションが高くなるような服を作って、パフォーマンスを良くするというのが第一ですが、その次に、コンサートを見に来てくださったお客さんが、コンサートを思い出すときの手助けになるような衣装が作れればいいなと思っています。

「オープニングで金色の王子さまみたいな衣装のときがよかった」とか「あの衣装のときにあの楽曲を歌っていた」というように、衣装はそのシーンを覚える一つのアイテムになると思うんです。そのシーンの色がより強くなる、より記憶に残るようになるものにしようと心がけています。どんな服だったか細かく覚えていてもらう必要はないんです。ただ、例えば「あのときの加藤くんがかっこよかった」と思い返したとき、記憶の中の加藤くんが服を着た状態で思い出してもらえるくらい印象的なものを作れたらいいなと思っています。

-今後、挑戦してみたいファッションはありますか。

 着たことがない服がない気がする(笑)。本気で甲冑(かっちゅう)を研究している方に甲冑を着せてもらったこともあるし、忍者のような衣装も作ったこともあるし、着物ももちろんある。だから、何だろう(笑)?

 …質問の意図とはずれてしまいますが、僕は本当に服が好きで、自宅も服置き場に僕が住んでいるというくらい服がたくさんあるんですよ。しかも、それは今後もきっと増え続けていきます。なので、今後、やってみたいことは、クローゼットを開けたら1つのコーディネートの服しかかかっていないという状態を保つこと。同じ色のTシャツが何枚かと同じ色の上着が3個くらいとパンツも同じものが2、3本置いてあるだけ。それは、楽だからそうしているのではなく、すごくこだわり抜いて選んだものというのが理想ではあります。

ただ、僕は基本的に服を捨てないですし、断捨離もほぼしないんです。僕よりもこの服を着てくれるだろうという人に出会ったらあげることはありますが、基本的には買ったものは捨てることなく持っているので、一生その生活はできないだろうと思います(苦笑)。

-私服のこだわりはありますか。

 小学校4、5年生のときに母親からもらったChampionの大きなトレーナーがあったんですが、そのサイズ感に衝撃を受けて、それ以来、オーバーサイズに目覚めたんですよ。母親が着古した古着だったんですが、着るとビッグサイズなのに丈は短くて。友達からは「サイズ間違っていない?」と言われながらも気に入ってずっと着ていました。今は、どのブランドでもオーバーサイズの服を販売していますが、当時はどこにもなかったんです。それからはピタピタのファッションがメンズで流行ってもダボダボの服を着ていましたし、今でも普段はダボっとしたファッションが多いです。とはいえ、たまにはスーツも着ますし、ピッタリしたTシャツを着ることもありますから、オーバーサイズじゃなくては嫌だということもないんです。トキめいたもので、サイズが合えば特に嫌だということもないので、強いこだわりはあまりないのかもしれません。

-先ほど買った服は捨てないとおっしゃっていましたが、そうするとその捨てなかった服を何年か後にまた着たりもするんですか。

 そうです。

買ってすぐに毎日着るというタイプではないので、買ったら自分のコレクションの中に入れておくという感じです。昔、買ったブランドの服とそのブランドの新作を合わせたり、家の中で一人でファッションショーをして組み合わせて着ています。このブランドとこのブランドはルーツが同じだから組み合わせても問題ないとか、勝手に自分の中でルールを決めてスタイリングして楽しんでいます(笑)。

-改めて、本作の公演を楽しみにされている方にメッセージをお願いします。

 今回、僕がこのアンバサダーに就任させていただくことが発表された後から、周りのスタイリストさんや洋服好きの友人、舞台好きな人といった、いわゆるオシャレ感度が高い人たちから「また来るんだ!? 絶対に行く。初演も本当に楽しかった」という声をたくさん聞きました。初演を見たという人がまた行こうと思っているというのは、すごいことだと思います。そうしたパワーを身をもって感じて、僕自身もより楽しみになりました。今回は、期間中に何度も見に行こうと思っています。ダンス・音楽・ファッションが融合した唯一無二のエンターテインメントショーです。ぜひ劇場で一緒に楽しみましょう。

(取材・文・写真/嶋田真己)

 ジャンポール・ゴルチエ「ファッションフリークショー」は、9月12日~28日に都内・東急シアターオーブ(ヒカリエ11階)で上演。

公式サイト https://fashionfreakshow.jp/

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