『沈黙の艦隊 北極海大海戦』(9月26日公開)

 日本政府が極秘に建造した高性能原子力潜水艦を奪い、独立国「やまと」建国を世界に宣言した海江田四郎(大沢たかお)は、東京湾での海戦で米第7艦隊を圧倒した後、国連総会へ出席するためニューヨークへと針路を取った。

 そんな中、アメリカとロシアの国境線であるベーリング海峡にさしかかったやまとの背後に、ベネット米大統領が送り込んだ最新鋭原潜が迫り、流氷が浮かぶ極寒の海で潜水艦同士の激しいバトルが幕を開ける。

 一方、日本ではやまと支持を表明する竹上首相(笹野高史)を中心に、衆議院解散総選挙が実施される。

 かわぐちかいじのコミックを、大沢の主演およびプロデュースで実写化した「沈黙の艦隊」シリーズの映画第2作。映画第1作(23)および配信されたドラマ「沈黙の艦隊 シーズン1 東京湾大海戦」(24)の続編。前作に引き続き『ハケンアニメ!』(22)の吉野耕平が監督を務めた。

 もちろん見どころは特撮を駆使した北極海やニューヨーク沖での海戦の模様だが、自民党の総裁選を控えた現実を見据えながらのポリティカル・フィクションとして見ても面白い。

『ラスト・ブレス』(9月26日公開)

 北海でガス・パイプラインの補修を行うため、スコットランドから出航した潜水支援船タロス号。飽和潜水士のダンカン(ウディ・ハレルソン)、デイブ(シム・リウ)、クリス(フィン・コール)が水深91メートルの海底で作業している最中、タロス号がコンピュータシステムの異常で制御不能に陥り、命綱が切れたクリスは深海に投げ出される。

 緊急用の酸素残量はわずか10分。海底の潜水ベルにとどまったダンカンとデイブ、海上のタロス号の乗組員たちは、あらゆる手を尽くしてクリスの救助を試みるが……。

 最も危険な職業の一つといわれる飽和潜水士の実話を基に、極寒の深海に取り残された潜水士の運命と、極限の救出活動に挑む人々の姿を描いたサバイバルスリラー。

 本作の題材となった潜水事故のドキュメンタリー映画を手がけたアレックス・パーキンソン監督が、綿密なリサーチに基づいて映画化。実際に事故が起こった船で撮影するなどリアリティーを追求し、ドキュメンタリー映像も交えて描く。

 飽和潜水士の過酷な作業の様子や支援船内での指揮系統のやり取りなどが緊迫感を生み、たった一人の命を救うために懸命の努力を尽くす人々の姿が感動を呼ぶ。

『ブラックバッグ』(9月26日公開)

 イギリスの国家サイバーセキュリティセンター(NCSC)のエリート諜報員ジョージ・ウッドハウス(マイケル・ファスベンダー)は、世界を揺るがす不正プログラム「セヴェルス」を盗み出した組織内部の裏切り者を見つける極秘任務に就く。

 容疑者は諜報員のフレディ(トム・バーク)、ジミー(レゲ・ジャン・ペイジ)、情報分析官のクラリサ(マリサ・アベラ)、局内カウンセラーのゾーイ(ナオミ・ハリス)、そしてジョージの愛妻である敏腕諜報員のキャスリン(ケイト・ブランシェット)の5人。

 ある夜、ジョージは裏切り者の動向を探るべく、容疑者全員をディナーに招待する。食事に仕込まれた薬とアルコールの効果で、容疑者たちの意外な関係性が浮かび上がる中、ジョージは彼らにあるゲームを仕掛ける。

 「オーシャンズ」シリーズのスティーブン・ソダーバーグ監督と「ミッション:インポッシブル」シリーズの脚本家デビッド・コープがタッグを組み、エリート諜報員と二重スパイが最重要機密をめぐって繰り広げる頭脳戦を描いたミステリーサスペンス。原題の「ブラックバッグ」は極秘任務を表す。

 回想は入るものの、主な舞台となるのはウッドハウス家のダイニングやベッドルーム。そこで展開する夫婦や同僚による腹の探り合いが見どころとなる。つまりこれは、家庭内で繰り広げられるスパイ映画なのだ。

 スパイがスパイを狩るという複雑なだまし合いを94分にまとめた手際の良さが光る。ファスベンダー、ブランシェットらの5人はもちろん、脇役のピアース・ブロスナンの怪しい存在感にも注目だ。

(田中雄二)

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