TBSでは、10月12日(日)午後9時から、妻夫木聡が主演する日曜劇場「ザ・ロイヤルファミリー」が放送スタートする。本作は、競馬の世界を舞台に、ひたすら夢を追い続けた熱き大人たちが、家族や仲間たちとの絆で奇跡を起こしていく、人間と競走馬の20年にわたる壮大な物語。
-原作や台本を読んでどんな感想を持ちましたか。
妻夫木 原作の早見(和真)さんとはもともと親交があったので、日曜劇場という枠で一緒に戦えることが本当にうれしかったです。身が引き締まる思いでした。初めて原作を読んだ時はその圧倒的な熱量に驚きましたし、脚本を読んだ時も、原作の持つ魅力が最大限に生かされている仕上がりになっていて感動しました。臨場感や高揚感、さまざまな思いが詰め込まれた情熱的な脚本で、本当にうれしかったです。
佐藤 競馬そのものを取り上げるドラマは珍しいですよね。競馬をやらない人でも、その時代の名馬の名前は知っていると思うんです。例えばトウカイテイオーやディープインパクトなど、強い馬にはそれだけのインパクトがあった。そうやって競馬に興味を持った人もいるでしょうし、別のきっかけで興味を持った人もいると思います。このドラマも同じで、「競馬に詳しくなくても知っている」というような存在感を持つ作品にしていかなきゃいけないなと率直に思いました。
-栗須栄治、山王耕造を演じるにあたって、意識していることはありますか。
妻夫木 僕が演じる栗須は、挫折から始まり、耕造との出会いを通して競馬界に触れ、だんだんと情熱を取り戻していく人物。絶望の淵でも内に秘めた情熱は誰よりも強い。弱さも強さもさらけ出しながら、自分の思いに正直に突き進む、魅力的な人物だと思います。演じるに当たっては原作も脚本も何度も読み込みましたが、キャラクターを作り込むというよりは、ありのままに寄り添いながら栗須と一緒に成長していけたらいいなと考えています。
佐藤 僕は耕造を勝手に“昭和感”を漂わせる人物だと捉えています。現代に放り込まれた昭和の人間を、周囲がどう受け止めるのか。その反応を見るのが楽しみです。具体的にどう表現しているかは、ぜひ作品で確かめてください。僕は競馬歴が長いので、馬主の知り合いも多いんですが、まず「馬主(うまぬし)」と読むことをこのドラマで初めて知る方も多いと思います。どんな人なのか、どれくらい持ち出しがあるのか、賞金はどれくらい入るのか…そういう部分も耕造を通して知っていただけるのではないでしょうか。
-これまでに共演経験がありますが、本作で共演されていかがですか。
妻夫木 ご本人を目の前にして言うのは恥ずかしいですが、浩市さんがいてくださることが何より心強いです。耕造役に浩市さんが決まった時は本当にホッとしました。耕造は浩市さん以外考えられないと、どこかで思っていたんです。珍しく早い段階で終盤までの台本が手元にありますが、順番通りに撮るわけではなくバラバラに撮影は進んでいきます。20年にわたる関係性が描かれているわけですから、そうした撮影状況の中でも、浩市さんと僕との間にある歴史が今回の撮影を大きく支えてくれていると日々痛感しています。
佐藤 30年近い付き合いの中で積み重ねたものが、良くも悪くもにじみ出てしまいますよね。でもそれが栗須と耕造の関係にいい形で重なってくれると思いますし、その空気感が漂うのかもしれません。
-クランクインして2カ月ほどたちましたが、撮影の様子を教えてください。
妻夫木 皆さん本当に家族のように過ごしながら撮影しています。僕自身、1日1日が過ぎるたびに「このシーンはもう二度とやらないんだな」と寂しさを感じるくらいで、それほど毎日がいとおしく、充実した日々を送れているのかなと思います。どの現場でも監督の名前を冠して“〇〇組”と呼ぶのですが、今回は塚原(あゆ子)さんが監督なので“塚原組”です。この塚原組は衣装合わせの時からすごく温かい空気があって、その包容力がどんどん広がっていき、今は本当に家族のように一緒に過ごしながら撮影できていると感じます。
佐藤 うちの座長は本当に優等生だね。私は正直きついです。役者同士だけではなく、馬という、損得では動かない存在を相手にしているので。そこに何かを求めることの難しさはありますが、その良さを引き出そうとみんなで頑張っている。これは普通の撮影に比べるときついですよ。子どもと動物にはかなわないですね。
-撮影現場でのエピソードや印象に残っている出来事はありますか。
妻夫木 北海道は快晴のイメージがあり、これまであまり雨に降られたことがなかったんです。結構土砂降りの日が続き、なんとかかいくぐって撮影していました。その中で、自称晴れ男、晴れ女がたくさんいて、毎日のように「誰が犯人か」という犯人探しが繰り広げられていました。僕は塚原監督があやしいと思っているんですが、浩市さんは僕を犯人に仕立て上げようとしていて(笑)。
佐藤 座長が来ると天気が崩れるんだよ。
妻夫木 いやいや、そんなことはないと思いますよ(笑)。
佐藤 冗談抜きで、僕も北海道で10本近く撮影してきましたが、こんなに天候が崩れるのは珍しい。日高の人に聞いても「こんなに降ることはない」とおっしゃるくらい。その中で撮影している。これが逆に作品にプラスに働いてくれればと思います。
妻夫木 撮影できることが当たり前じゃないってことですよね。
-馬との撮影についてはいかがですか。
妻夫木 僕らの都合で撮影を進めなくてはいけない中でも、馬たちが本当に頑張ってくれています。ある日の撮影で命と命が触れ合う瞬間を見て、思わず涙が出ました。馬も人も関係なく、触れ合った瞬間に無条件に幸せを感じ、「この瞬間のためにこのドラマをやっているんだ」と思ったんです。触れるだけで癒やされますし、かわいいです。
佐藤 僕は乗り役でもあるので、馬との関係性は特別です。
-最後にこの作品の魅力と見どころを教えてください。
妻夫木 このドラマに関わるまで“継承”という言葉をあまり意識していなかったのですが、台本を読む中で、この物語は馬と人の継承を描いていると感じました。その裏にはさまざまな人の思いが託されていて、「何を思い、何を受け継いできたのか」「そして僕たちは何を託していくのか」。
佐藤 おっしゃる通りです。継承というと古くさく聞こえるかもしれませんが、実際には構築していくもので、ただ受け継ぐだけではない。このドラマを通して、そういうことを感じてもらえたらと思います。