10月24日公開の『恋に至る病』は、TikTokで話題になるなどティーンを中心に絶大な支持を集める斜線堂有紀のベストセラー小説を映画化した話題作だ。

 内気な男子高校生・宮嶺望と学校中の人気者・寄河景。

同じクラスになった2人は距離を縮めていくが、続発する同級生の不審死をきっかけに、景に対する宮嶺のいちずな思いは疑惑へと変わっていく。果たして、2人の思いがたどり着く先は…?

 公開を前に、W主演を務める宮嶺望役の長尾謙杜と寄河景役の山田杏奈、さらに主題歌「奇跡を待ってたって」を書き下ろした“Saucy Dog”の石原慎也の3人へのインタビューが実現。物語と密接に絡んだ主題歌の制作秘話やそのインスピレーションの源となった演技の舞台裏について語り合った。

-3人での対談は初めてだそうですが、お気持ちはいかがですか。

長尾 歌番組などで他のアーティストの方にお会いしても、お話しする時間はなかなか取れないので、今回このような機会をいただけてとてもうれしかったです。しかも石原さんは、どんな質問にも快く答えてくださるんです。それがうれしくて。

山田 私も、石原さんのようなアーティストの方とお話しする機会は滅多にないので、「変な質問をしてしまわないかな?」と気が引ける部分もあったんですが、主題歌について質問したら、なんでも気軽に答えてくださって。おかげで、お話をしていて、とても楽しいです。

石原 僕の方こそ、お2人が気軽に話しかけてくださったので、うれしかったです。これまでお二人の出演作を見て、俳優としてリスペクトしていましたから。

-主題歌「奇跡を待ってたって」は、石原さんがボーカル・ギターを務めるバンド“Saucy Dog”がこの映画のために書き下ろしており、映画の世界観とマッチしたすてきな曲に仕上がっています。

石原さんは長尾さんと山田さんのお芝居から曲のインスピレーションを受けた部分もあるのでしょうか。

石原 劇中での宮嶺と景の関係は、水族館に行ったりする普通の恋人らしい部分と、その裏に見え隠れするシリアスな部分があり、それを表現するお2人のお芝居が素晴らしかったんです。だから、その両面をきちんと表現しようと、歌詞をシリアスに寄せ、その分、サビのメロディーで普通のカップルとしての明るさを伝えるようにしました。

-石原さんのお話通り、長尾さんと山田さんのお芝居に引き付けられますが、宮嶺と景という役を演じる上で、それぞれどんなことを心がけましたか。

長尾 宮嶺を演じる上で、目立たないようにすることを心掛けました。あまり色づいていない感じのほうが、宮嶺らしいかなと思って。景に対する宮嶺の気持ちも、徐々に接近していく様子がきちんと台本に書かれていたので、それに従って丁寧に気持ちを乗せていこうと。

山田 台本のト書きに「景の言うことを、周りが聞きたくなってしまう」と書かれていたんです。それを前提に話が進むので、どうしたら「この人についていきたい」と思わせるカリスマ性を表現できるのか、だいぶ悩みました。そこで、カリスマ性のある人たちの話し方など、その共通点を探すことから始め、心理学も調べたりしました。

長尾 カリスマ性って、出そうと思って出すのは難しいですよね。

山田 そうなんです。

話し方も、宮嶺といるときは景の本心が垣間見えるような等身大のお芝居を心掛け、クラスメートといるときは、景自身も意識していると思ったので、声の出し方や音程を万人受けする感じにしようと思って演じていました。

-そうやってお2人が繰り広げる物語がドラマチックな分、エンディングに流れる「奇跡を待ってたって」が心に染み入ってきます。

石原 映画の内容をきちんと踏まえた曲にしたかったので、エンディングが始まって何秒で風景が変わり…といったことを細かく計算した上で、サビが最も盛り上がるように考えながら作りました。最初は寂しい感じでギターリフと歌から入るところは、宮嶺の気持ちを表すなど、主人公になったつもりで書いています。

長尾 歌詞が宮嶺と景の気持ちを表していて、すごくすてきですよね。僕らがセリフで伝えていることを、主題歌1曲に収めて届ける石原さんはやっぱりすごいなと。おかげで、僕自身も救われた気分になりました。

山田 私も、エンディングで「奇跡を待ってたって」が流れたとき、宮嶺と景の気持ちが昇華された気がして。私自身のお芝居も間違っていなかったと思えて、すごく救われました。

長尾 僕は今「奇跡を待ってたって」を繰り返し聴いているんですけど、音源をメールで送っていただいたので、聴きたくなったらかなりさかのぼらないといけないのが大変で(笑)。だから、気軽に聴けるように、早くリリースしてほしいです。(主題歌「奇跡を待ってたって」は、10月22日(水)配信リリース)

山田 実は今回、撮影が終わった直後から、廣木(隆一)監督が「主題歌はSaucy Dogがいい」と言っていたんです。

私も以前からSaucy Dogさんの楽曲には、言葉にならない感情を的確に表現してくださる印象を持っていたので、廣木監督のアイデアに納得でした。

石原 ありがとうございます。お2人に気に入っていただけて、うれしいです。でも、この曲ができたのも、お2人のお芝居が魅力的で、印象に残るシーンが多かったおかげだと思っています。

-それでは最後に、皆さんの考えるこの映画の注目ポイントを教えてください。

石原 男性でも女性でも、恋愛に関しては表と裏があると思うんです。それをこんなすてきな物語に膨らませることができるのかと驚くと同時に、環境が違えば自分もこうなっていたかも…と思わせるところがあって。そういう魅力的な物語の上、演じている長尾さんと山田さんのお芝居もすてきなので、ぜひ注目してください。

山田 愛情ゆえにさまざまなことが巻き起こり、単純なラブストーリーではなく、ミステリーやサスペンスなどさまざまな要素が盛り込まれた一筋縄ではいかない物語になっています。ぜひ楽しんでいただけたらうれしいです。

長尾 物語の進行と共に宮嶺と景の距離感や空気感が変わっていき、きっと皆さんが予想もしなかったような結末にたどり着くはずです。エンディングに流れる主題歌も、映画の内容を的確に表現していて余韻を味わえるので、ぜひ最後まで楽しんでください。

(取材・文/井上健一)

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