須永恵(福士蒼汰)と恋人の木下亜子(福原遥)は、共通の趣味である天文の本や望遠鏡に囲まれながら幸せな日々を送っていた。しかし実は本当の恵は1カ月前にニュージーランドで事故死しており、現在、亜子と一緒にいるのは、恵のふりをした双子の兄・涼だった…。
-この映画はスピッツの「楓」から生まれた物語ですが、この曲に関する思い出はありますか。
スピッツさんが大好きで、「楓」は自分のプレイリストに入れてずっと聞いていました。そのため、この曲が原案になった映画ができると聞いた時は、まさかと思って衝撃を受けましたが、ファンの一人としてはすごく楽しみでもありました。草野(マサムネ)さんの温かい歌声とは裏腹に、別れを描いた切ない曲で、すごく心に響く曲だと思っていました。
-スピッツの曲をカラオケで歌ったりしますか。
恥ずかしいですが、何度もあります。でも恐らく皆さんあると思いますよ。「チェリー」とか「ロビンソン」とか、どの年代の人でも知っているからすごいですよね。しかも「楓」は私や(福原)遥ちゃんが生まれた年の曲でもあるので、その時に出た曲が今もこうして受け継がれていることに驚きます。
-最初に脚本を読んだ時は、どんな印象を受けましたか。
大好きなスピッツさんの「楓」を基にした映画にまさか自分が出演させていただけるなんてといううれしさを感じながら読みました。曲をより理解できた感じがします。優しいうそやけなげな愛があったり、ただの別れや悲しみだけではなくて、すごく深みのある話だと思いました。皆がいろんな矢印を真っすぐに向けて、その人と向き合おうとしている姿がすごくかっこよくて、本当にはかない物語だと思いました。「楓」の聴き方が変わるというか、この別れがあったからこそ新しい愛が見つけられたとか、前向きな気持ちで曲が聴けるようになりました。
-演じた日和との共通点はありましたか。
不器用だけど愛嬌(あいきょう)があって、自分のやりたいことを真っすぐにできる日和が大好きでした。自分が脚本を読んだ時に、日和に共感できる、応援したいと思えたからこそ、見てくださる方にもそう思っていただけるように演じたいと思ったので、応援したい、共感できるという気持ちが強かったです。
-演じる上で気を付けたことや心掛けたことはありましたか。
先輩の涼くん(福士蒼汰)との関係性が、どこか兄妹のようでもあり、友達のようでもあり、上司と部下のようでもある。そのあんばいが結構難しかったし、福士さんとも初めての状態から、2人の掛け合いがほぼ毎日あったので、恥ずかしいと思う気持ちや緊張をなくして、日和としての気持ちを思いっきりぶつけようと思って、福士さんの胸を借りるつもりでやっていました。
-実際に福士さんと共演してみていかがでしたか。
とてもすてきな方で、待ち時間にちょっとお話できたんですけど、すごく温厚な方でした。お芝居に関してはすごく真面目でストイックで、「このせりふはこうやって言ってみるのもありかも」というような優しい言い方で寄り添ってくださり、いろいろと教えていただいたので、本当に涼くんのような、尊敬できる先輩みたいな関係性でした。
-現場の雰囲気はいかがでしたか。
まるで「楓」という曲のように、すごく優しくて、温かい現場でした。そんな空気に包まれていたからこそ、現場に入った瞬間に日和になれたというか、日和の、人って優しいから自分は突っ込んでいけるという気持ちがすごく分かるというか、それを感じていたので、ずっと日和のようなテンションで行けたし、それを許してくださる現場だったのでやりやすかったです。
-行定勲監督の印象は?
とにかく主演のお二人がかわいくていとおしい。そういうラブストーリーを撮られる方だなと思いました。私は日和のシーンだけだったので、ニュージーランドでどのような撮影が行われていたのかとか、福士さんと遥ちゃんがどんなお芝居をして、どんな画を撮っているのかは知らなかったので、試写で見た時に風景も含めてとてもすてきだなと思いました。屋上のシーンなどでも、遥ちゃんのアップがすごくきれいで、こんなにアップがすてきで、しかも切なさを表せるのはすごいなと。それを引き出したのが行定さんの力というか、すてきな部分だなと思いました。私は行定さんを信じてお芝居をしていました。
-完成作を見た印象と、観客や読者に向けて一言お願いします。
とても感動する作品だというのが一番です。人肌恋しい冬の季節にすごく見たくなる映画にもなっていますし、登場人物全員の矢印が真っすぐに向いていていとおしいからこそ、見終わった後、自分も大切な人のことを思いたくなります。それは、家族や友人、恋人、今近くにいる人、今会えない人、いなくなってしまった人、そういう全ての大切な人たちのことを思える作品だと感じました。この映画は、この冬の一押しの作品です。というのも、本当に風景がきれいで、その中に冬ならではのはかなさが描かれています。冬だからこそ伝わることってたくさんあると思います。そのため、感動したい時や、大切な人のことを改めて思いたい時に見ていただきたい映画になっています。あとは、本当に映像がきれいなので、そういうところも注目していただけたらうれしいです。
-演じた日和として、こんなところを見てほしいというのはありますか。
私は、日和が本当に真っすぐに涼くんを思うことを一番に考えて、意識してお芝居しました。5人のメインキャストの中の誰かに共感できる、自分はこの人に似ているなと思えたりするでしょうが、私はすごく日和に共感できたので、そういうふうに共感できるキャラクターを探しながら見るのも面白いかなと思います。
(取材・文/田中雄二)

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