2014年1月にスタートしたテレビ朝日系列の大ヒットドラマ「緊急取調室」。たたき上げの取調官・真壁有希子が、可視化設備の整った特別取調室で取り調べを行う専門チーム「緊急事案対応取調班(通称:キントリ)」のメンバーとともに、数々の凶悪犯と一進一退の心理戦を繰り広げる。

5シーズン、12年にわたって放送されたこの人気シリーズが、12月26日公開の劇場版「緊急取調室 THE FINAL」を持って、ついに完結する。

 その公開を前に、キントリのメンバーである真壁有希子役の天海祐希、梶山勝利役の田中哲司、小石川春夫役の小日向文世、菱本進役のでんでん、玉垣松夫役の塚地武雅の5人が、共に歩んだ12年を振り返ってくれた。

-12年にわたるシリーズが、ついに完結します。今のお気持ちはいかがでしょうか。

天海 劇場版が一度公開延期になった分、それをネガティブに捉えるのではなく、「もう一度やれる」と前向きな気持ちで、エネルギーを満タンにして進むことができたら、と思っていました。だから、その勢いに乗ってこの秋放送された連続ドラマ第5シーズンに続き、劇場版も多くの方にご覧いただけるように頑張っているところです。

でんでん 劇場版の公開に合わせて、もう一度連ドラをやれたことがうれしいよね。撮影でクタクタになっても、年末に劇場版の公開が待っていると思うと、すごく楽しみで。それが今年一番の楽しみ(笑)。

田中 でんでんさん、こないだ張り切り過ぎて、監督に「ちょっと抑えてください」と言われていましたよね(笑)。

でんでん 取り調べのシーンで、首根っこをつかんだり、いろいろやって。

塚地 昭和の取り調べを(笑)。

天海 「そこまでやると、(容疑者から)訴えられちゃいます」って(笑)。

でんでん そういう役だから、テンション高くいかないと、と思って。皆さんのテンションが高いから、自分のテンションが低いと恥ずかしいじゃない。だからとにかく、テンションを上げていこうと。そういうやり方ができる現場だったし。

小日向 でも、完成した劇場版を見て、「いい形で終われたな」とホッとした。エンドロールが流れてきたとき、「ああ、やり尽くしたんだな…」と思って。

田中 寂しさは正直ありますよね。やっぱり、12年という時間の重みを感じて。難しいせりふは多いし、大変なこともありましたが、楽しい現場でしたし、全ては良き思い出となっています。

塚地 僕は途中からの参加でしたが、迎え入れていただいたときのうれしさは今も忘れられません。先輩方のお芝居を間近で見させてもらったことも、すごく大きな財産になりましたし。

-「寂しい」という言葉が出たのは、田中さんだけですね。

田中 あれっ?(笑)

天海 寂しくないわけじゃないんだけど、劇場版の公開までやることがたくさんあるので、そういう感慨に浸っている暇がなくて。だから、劇場版が公開された後、集合がかからないね、となったときに実感するんじゃない?

小日向 現場で集まることはなくなっても、きっと天海さんから「集合!」がかかって、みんなで食事に行く機会はあるはずだから。これでサヨナラじゃないでしょ。

-12年という時間が、そういう皆さんの固い絆を作り上げたわけですね。そんな作品に出合える機会は、俳優人生の中でめったにないことだと思いますが、皆さんにとって「緊急取調室」シリーズとはどんな存在でしょうか。

天海 12年という時間とエネルギーを費やし、皆さんの力もお借りした上で、たくさんの方に応援いただいた作品は、間違いなく自分にとってとても大きなものです。ただ、それが自分に何を与えてくれたか分かるのは、ずっと先じゃないかなと。逆に言えば、それが分かるように精進していかなければ、と思っています。

小日向 僕は50代最後の年に「キントリ」が始まり、今は71歳。だから、役者として一番元気なときに、この作品に出会えたことが僕の宝です。こんなに長く関わるドラマは、他にありませんから。

素晴らしい代表作になりなした。

田中 先日田舎の同窓会に出席したのですが「哲司、今何やっとんの?」と聞かれたんです。「『緊急取調室』というドラマに出ていて」と答えたら、「おお、見とる、見とる!」って。そんなふうに、田舎の同級生がみんな見てくれているんですよね。それが、すごくうれしくて。僕にとってこのシリーズは、そういうかけがえのない作品です。

でんでん 哲ちゃんが言うように、同級生がものすごく喜んでくれるの。同級生だけでなく、「キントリに出ている」と言うと、知り合いがみんな喜んでくれて。そういう意味では、このメンバーに加われたことが、僕にとって大きな幸せです。

塚地 僕はお笑い芸人なので、ファンの方も同年代や若い世代が多いんですけど、「キントリ」に出演させていただいたことで、街で声を掛けてくださる方の年代が広がって。最近は、年配の方から「キントリ、見てるよ!」とか「玉ちゃん!」とよく声を掛けられるんです。

天海 うれしいね。

塚地 それこそ、「天海さん、どう?」と聞かれることも多くて。

田中 僕も同級生から聞かれる。

天海 えー!「怖いよ!」って言ってるの?(笑)

田中 言ってませんて(笑)。

塚地 僕はもちろん、「とてもすてきな方です」と答えていますけど(笑)。そんなふうに、お笑いのファンとは違う世代の方が見てくださることで、僕的には他の芸人よりもアドバンテージがあって(笑)。もちろん、若い世代でも「キントリ、全シーズン見ています!」というコアなファンがいるので、本当に幅広い世代に愛されているドラマなんだなと。

-そして迎えた劇場版「緊急取調室 THE FINAL」はファイナルにふさわしく、キントリが取り調べる相手は、石丸幹二さん演じる内閣総理大臣・長内洋次郎です。国のトップとの対決は緊迫感に溢れ、見応え十分でした。

天海 総理との対決は同時に、自分たちの信じる正義の根幹をも問われることになるので、キントリメンバーの苦悩もさらに深く、濃密に描かれている点が印象的でした。

小日向 国を守ろうとする気持ちは、総理もキントリのメンバーも同じなんだよね。その葛藤が同時に見えるところが、すごく面白かった。だから見終わったとき、「果たしてあの決断は正しかったのだろうか?」と考えさせられるんじゃないかな。

塚地 ご覧になった方が、いろんなことを考えさせられる内容になっていますよね。総理自身は責任感と正義感の強い人なんだけど、過去に起きたある出来事によって自分の正義が揺るがされることになる。そこから、「“正しい”ってなんだろう?」と、見た人自身に問いかけるような物語にもなっていて。

田中 そういう意味では、取り調べのシーンを映画館で見たら、自分が取り調べられている気分になるかもしれないよね。それは面白そうだな。

でんでん そういう奥深い社会派ドラマでもあるので、皆さんそれぞれが、感情移入できる人物を見つけて、楽しんでほしいですね。

天海 総理との対決だけでなく、事件のスケールも今まで以上に大きくなり、大きなスクリーンで十分楽しんでいただける作品に仕上がっています。12年の集大成を、ぜひ映画館で見届けていただけたらうれしいです。

(取材・文/井上健一)

劇場版「緊急取調室 THE FINAL」 12月26日(金) 全国公開 ◆配給:東宝

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