映画『うちの弟どもがすみません』やドラマ『リベンジ・スパイ』など、数々の映画やドラマ、舞台で活躍する織山尚大の3年ぶりの主演舞台となる「エクウス」が1月29日から上演される。本作は、実際に起きた事件を基に描かれた、ピーター・シェーファーによる心理劇。
-3年ぶりの主演舞台が決まった心境から教えてください。
自分にとっていろいろな節目を迎えた上での今回の舞台です。いろいろな方から「大変そうな作品だよね」と声をかけてもらいましたし、作品の資料を見たときにも「これは大変そうだな」と思ったのですが、ずっと「舞台をやりたい」と思っていたので、決まったときは本当にうれしかったです。
-今回、織山さんが演じるアランという役柄について、どのようにとらえていますか。
孤独で孤独でしかたないのかなと思います。でも、ふて腐れることもできないし、コンプレックスを抱えていて、それがどこにでもついてくる。お母さん、お父さん、そして精神科医のダイサートといった周りの人がみんな、(そのコンプレックスを)突き刺してくるのですが、彼は内臓がむき出しているような状態なので、突き刺されると痛いんですよ。だから毎日、落ち着けずにいる。そうしたアランに自分を重ねて演じているので、僕も毎日、落ち着かない感じですが、それはそれで「エクウス」の舞台だと感じて楽しいです。
-重ねて演じているということですが、アランと自分が重なるところがあるのでしょうか。
アランというよりはエクウス(馬)の方が自分を重ねやすいかもしれません。エクウスが鎖につながれ、鞍(くら)などのいろいろなものをはめられている姿は、僕だけでなく現代社会の人たちに重なるところはあるのかなと思います。会社や学校などもそうですが「普通はこうなんだよ」というものがあって。全てを自由にすることはできないし、どこにも行けない。でも、このアランは、エクウスと1つになることによって自由になりたいという欲がすごく強かった。もしかしたら、アランは誰よりも人生を謳歌(おうか)しているのではないかとも感じます。ダイサートが途中からアランに対してどこか憧れのような感情が出るというのは、きっとそういうことなのかなと。今、まだそうやって作品をひもといている段階なので、僕自身もアランと似ているところはあるのかもしれません。
-アランは馬を愛している人物ですが、織山さんは馬は好きですか。馬にまつわる思い出がありましたら教えてください。
最近、「馬」というワードを出し過ぎているからか、スマホに「馬」しか出てこなくなったんですよ(笑)。それほど検索しているわけではないと思うんですが、至るところに馬の顔が出てきます(笑)。
-乗馬は初体験だったのですか。
初めてでした。目の前で見たのも初めてで。真っ白い馬だったんです。すごくきれいで、すてきでした。
-織山さんといえばダンスですが、本作では身体表現で見せるシーンもあるのですか。
エクウスはアルミのワイヤーで表現されているので、それを持ってお芝居したり、乗ったり、馬と一体化しないと演じられないシーンがあります。だからこそ、乗馬クラブでいろいろな体験をさせていただいたのですが、馬がどういう動きをするのか、関節がどこにあるのか、足はどうやってあげるのかということを研究して、自分も馬であるかのように表現できたらいいなと思っています。ダンスというよりは表現ですが、冒頭のシーンで、エクウスと僕が抱き合うシーンがあるので、そこもぜひ注目して欲しいです。
-「舞台をやりたい」とずっと思っていたというお話もありましたが、織山さんがこれまで舞台を通して生の衝撃を感じた経験はありますか。
たくさん経験してきました。もちろん事務所の人たちの舞台もそうですし、ラスベカスで「シルク・ドゥ・ソレイユ」の舞台を見たときも「世界って広いんだな。
-ところで、2026年は芸能活動10周年を迎えますが、今、振り返ってみて織山さんにとってどんな10年でしたか。
難しいですね…。
-そんな節目で、新しくリセットした気持ちを持って今回の「エクウス」に向き合っていくのですね。
きっと20歳の頃だったら、この作品は表現できなかったと思いますし、分からない感情も多かったと思います。(20歳と現在では)2年しか違いはありませんが、アイドルにとっての10代から20歳と、その先という年齢の違いはすごく大きいんですよ。10代の後半はアイドルとして1番キラキラしている時期ですが、その先にある20代は感覚が全く違うものなんです。(20歳になって)やっと大人になれたと思っていたけど、まだまだ全然大人ではなかった。考え方もまだまだ未熟で、いろいろなものにすぐに押しつぶされてしまう。
-改めて公演に向けての意気込みや読者へのメッセージをお願いします。
僕にとって3年ぶりの主演舞台ですし、10年という節目でもあります。この「エクウス」という作品が、どれくらい自分に影響をもたらして、そして皆さんにどんなものをお届けして、どんなものを共有できるか、今も試行錯誤しながら稽古しています。確実に皆さんの人生のターニングポイントの1つになる舞台になるのではないかと思います。ぜひ、生で感じていただき、その場で生まれる空気感や感情を味わって、何かを感じ取っていただければ、僕はアイドルをやっていて良かったと思います。2026年を良い年に、そしてこの作品を良い作品にしたいと思っていますので、ぜひ劇場にお越しください。
(取材・文・写真/嶋田真己)
舞台「エクウス」は、1月29日~2月15日に都内・東京グローブ座、2月20日~24日に大阪・サンケイホールブリーゼで上演。

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