東京で暮らす落ちぶれた俳優のフィリップが、レンタル・ファミリーの仕事を通して自分自身を見つめ直していく姿を描く『レンタル・ファミリー』が2月27日から全国公開される。『ザ・ホエール』でアカデミー主演男優賞に輝いたブレンダン・フレイザーが主演し、全編日本で撮影を敢行した本作で、フィリップが“父親役”となった少女・美亜を演じたゴーマン・シャノン・眞陽に話を聞いた。

-今回はオーディションを受けて役に決まったんですね。どうして受けようと思ったのですか。

 所属事務所から「ハーフの女の子役のオーディションがあるけどやりませんか」と言われて、「やってみたいな」と思いました。お母さんも「やってみよう」と言ってくれたので、3回オーディションを受けました。でも、1カ月ほど何の連絡もなかったので、受からなかったのかと思っていたら、事務所の人から「シャノン受かったよ」って連絡があって、もうすごく興奮しました。お母さんが電話に出て「シャノン受かったって!」と言われたけれど、最初は信じられなくて「冗談? ドッキリじゃないの」みたいな感じでしたが、お母さんの涙を見て「本当なんだ」と思って、泣いてしまいました。そして「早く撮影がしたい」と思いました。

-最初に脚本を読んだ印象はどんな感じでしたか。

 「レンタル・ファミリー」というものがあることを知らなかったので、何でそういう題名なのかなと。レンタカーみたいな感じの人や家族のことなのかなと脚本を読みながら想像しました。本読みはオンラインでしたが、ブレンダン(・フレイザー)さんはニューヨーク、(柄本)明さんは多分家にいて、みんなが違う所にいてもできるんだ、画面に私が映っているのですごいなと思いました。HIKARI監督とスティーブン(・ブレイハット)さんが書いた物語は、ほんとにすてきだなと思いました。

-今回の役は、英語と日本語を話す役でしたが、普段はどんな感じで会話をしているのですか。

 お父さんが、日本語を話せないので、家では大体英語で話しています。日本の学校に通っているので、朝の8時ぐらいから夕方の4時ぐらいまでは日本語で、家に帰ってからは英語です。

-では普段からバイリンガルなので、今回は言葉の面では大変ではなかった?

 前に学校で「首を突っ込まないで」って言おうとしたんです。でも英語だと「鼻を突っ込むな」って言うので、つい「鼻を突っ込まないで」って言ったら、みんなに笑われました。発音についても、撮影の時に、例えばお母さんとのシーンで「もういい。あっち行って」って言うところで、ちゃんと言えるようになるまで何回も練習して、やっとオーケーになりました。普段、発音などは気にしないので日本語の方が難しかったです。

-実際に演じてみていかがでしたか。

 楽しかったです。たくさん映画に出て、いろんな人になってみたいという小さい頃からの夢に一歩近づけたような、「人生ゲーム」のスタートでサイコロを振ったような気持ちでした。

-演じた美亜はどんな子だと思いましたか。

自分との共通点はありましたか。

 私のお父さんとお母さんはすごく優しくて、面白くて。しかもお姉ちゃんとお兄ちゃんたちがいるのでとてもにぎやかなんです。だから学校から帰ってきたら誰もいないという状況がほとんどありません。なので、美亜のようにお母さんが仕事に行って夜遅くまで帰らないから家に1人でいるというのはすごく心細いんじゃないかなと思いました。私自身は、1人でいるのは苦手です。だから、誰もいない家に美亜が1人だけでいるシーンの時は、本当にきつくて悲しいなと思いました。美亜はお母さんを困らせたくないから、あまり寂しいとかこれをやりたいとかは言わないし、そうは見せないから、私は美亜を演じるのが苦しかったです。でも、最後はフィリップという大人の友達ができたのですっきりしました。お母さんとフィリップが連絡を取り合えば、美亜もどこかに行けるんじゃないのかなという希望を感じました。

-フィリップ役のブレンダン・フレイザーさんの印象は? 共演してみていかがでしたか。

 心も体も大きな人です。

例えば、通りすがりの人が道で何か落としたら、必ず拾って「大丈夫?」って声を掛けます。私なら「落としましたよ」とは言うけれど「大丈夫?」とは言わないなと思って。撮影中に、私が車酔いをした時もずっと看病してくれました。本当に優しくて面白いので、現場が明るくなります。太陽みたいな存在の人です。

-ブレンダンさんが出演した映画を見たことはありましたか。

 お姉ちゃんたちも大好きな『ハムナプトラ』シリーズは全部見ました。私はまだ見られていませんが、お父さんとお母さんは『ザ・ホエール』を何回も見ているらしいです。

-HIKARI監督の印象は?

 磁石みたいに人を引きつける人です。私のイメージでは、「監督とは頭がよくて少し怖くて厳しい人」なのかなと思っていました。でもHIKARI監督は、オーディションで初めて会った時もにこにこしていて、私のイメージとは違いました。この前、アメリカのクリティクス・チョイス・アワードに行ったんですけど、ほかの監督やすごい俳優さんが、HIKARI監督のところへあいさつに来て、みんなにこにこしながら帰っていくので、本当に磁石みたいに人を引きつける人だなと思いました。

-完成した映画を見た感想を。

 今は12歳ですが、この映画のオーディションの時は9歳で、撮影の時は10歳でした。だからあの時の自分を見て妹だと思ってもおかしくない。顔は自分だけど違う人みたいな感じがします。友だちにポスターを見せて、「これ私だよ」って言ったら、「小さいね」って言われました。まだ映画に出たことをよく知らない友だちには、わざと「これ誰だと思う?」って聞きました。そうしたら、「シャノンの妹?」って言うから、「2、3年前の私だよ。4年生の時に撮ったんだ」と言いました。そうしたらみんなが「小さかったね」って。でも、ほんとにすごい夢がかなったって、今でも思います。

-これから映画を見る方たちに向けて一言お願いします。

 私は生まれてからずっとさいたま市なので東京に住んだことがないんですけど、東京に来ると全ての動きが速いんです。

例えば、歩いていると、びっくりするぐらい自転車がとても速く横を通り過ぎるんです。みんなすごく急いでいるように見えるので、この映画を見て、リラックスをしてほしいです。何か変な言い方ですが、1度魂を抜いてぼーっとしながら、自分がその世界に入っているみたいな感じでスクリーンに見入ってほしいです。

-今後の目標はありますか。

 いろんなことに挑戦してみたいです。バレエを習っていて、ギターも弾けるので、ミュージカルにも出られたらいいなと思っています。今後も映画や舞台など違う役を演じていきたいです。

(取材・文・写真/田中雄二)

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