『ハイキュー‼』×SVリーグ コラボ連載(36)

東京グレートベアーズ 後藤陸翔

(連載35:東京GB戸嵜嵩大は難病を乗り越え、憧れの柳田将洋と同じプロに 迷いを振り払った及川徹の言葉とは?>>)

【ハイキュー‼×SVリーグ】東京GB後藤陸翔は同級生・髙橋藍...の画像はこちら >>

「高校のバレーボール部が自主性を求められるチームで、純粋な戦術だけじゃなく、『どんなプレーをしたら相手が嫌か』なども考えていました。そうじゃないと試合に勝てない。

それが積み重なって、今につながっていると思います」

 後藤陸翔(23歳)は、ルーキーとは思えないほど理路整然と自己分析した。身長は187cmと、男子バレーのアウトサイドヒッターとしては小柄なほう。顔つきも柔和だが、コートでは図太く、したたか。それが、大卒1年目ながらSVリーグで戦えている理由だ。

 昨年11月、サントリーサンバーズ大阪とのフルセットの激戦では、15得点と勝利に貢献。感極まって涙も流した。それだけ勝負に熱い。

 試合を報じるニュースでは、「(髙橋)藍だけじゃないんだぞ」という後藤の言葉が見出しを飾った。髙橋とは同級生で、高校時代には選抜チームでもともに戦った。ふたりは試合後に記念撮影し、旧交を温めたという。

「藍が海外に行って、日本代表で活躍しているのは刺激になりますね。その背中を追いかけている、という感じもあります。

(昨年11月の試合でも)高いブロックへの工夫が見えて『慣れているな』と思いましたし、ディフェンス力もあらためてすごいと実感しました」

 後藤はライバルを観察し、リスペクトする。一方で、「負けない」という気概もある。

 彼がバレーと出会ったのは、偶然だった。小学3年になった時に、ドッジボール部に入るつもりで友達と練習を見学に行ったが、その日はたまたま休み。すると、隣で練習していたバレー部の部員に勘違いされ、引き入れられた。母親がママさんバレーを、姉もバレーをやっていたため"免疫"はあったというが......。

「実際にやったら、新鮮で楽しかったです。レシーブをしたりボールを打ったり、先輩たちがスパイクを打つのを見て、『かっこいい! ああなりたい』と思いました。最初は遊びでしたが、厳しくなかったのがよかったです」

 最も繰り返したのはレシーブ。それが、今のオールラウンドなプレースタイルの土台になっている。そして、"バレーで生きる"という道筋が照らされる瞬間が訪れた。

「中3の時に全国3位まで行ったんです。

そこで『いける』という自信がつきました。(地元・愛媛県の)新田高校でも(春高バレーに出場するなど)頑張りましたが、自信がついたという点では中学での経験が大きいですね」

 近畿大では4年時に主将を務め、2023年の黒鷲旗大会や天皇杯ではVリーグのチームを次々と破った。

「大学も自分で考えてプレーするチームスタイルでした。自分が4年になって、最後に『後輩に何か残したい』という思いが、あの結果につながったんだと思います。キャプテンについては、純粋にやりたかったし、自分のためになるとも思って。チームの勝敗を左右する一番しんどい立場でしたが、おかげで成長できました」

 後藤は厳しい戦いを経るごとに成長してきた。強大な敵と戦うことに、一種の快感も覚える。昨年11月のサントリー戦の勝利もそうだ。

「ライバルに引っ張り上げられてきた感覚はあります。より強い敵と対戦することで、自分の能力も上がるというか......。(サントリー戦は)SVリーグの最多観客を達成した試合でしたし、そこでいい結果が出せてよかったです」

 後藤は落ち着いた口調で、こう続けた。

「『その時代の一番になりたい』と思っています。

そのなかで、日本代表でプレーすること、海外に挑戦するといった目標を達成していきたい。今は、グレートベアーズで優勝したいですね」

 進むべき道に迷いはない。

【後藤が語る『ハイキュー!!』の魅力】

――作品の魅力とは?

「全巻読んでいます! 連載開始から『週刊少年ジャンプ』で読んで、コミックスも読んで......少なくとも5周はしていますね(笑)。選手一人ひとりの心境や、物語が細かく描かれているじゃないですか。いわゆる"脇役"なキャラクターにも、しっかりスポットライトが当たるのがいいです」

――共感や学んだことは?

「試合中の心境などは、僕らも共感できます。稲荷崎の宮兄弟などが、練習でやらないことを試合でやるのもいい。自分もたまにやるんですが、チャンレンジする、工夫する姿勢には感銘を受けます」

――印象に残った名言は?

「鴎台の星海(光来)の『小さい事はバレーボールに不利な要因であっても 不能の要因では無い!!』ですね。僕も身長187㎝で、サイドとしては今のチームでも大きくない。SVリーグにはかなり大きい外国人選手もたくさんいますから、重ね合わせているところもあるかもしれません。星海は自分が"弱い"ことを認めながら、その状況を楽しんで自らを高めていく姿勢が『いいな』って思います」

――好きなキャラクター、ベスト3は?

「1位は星海。ダントツですね(笑)。2位は、遊び心があるキャラが好きなので宮侑。

3位は井闥山学院の佐久早(聖臣)ですかね。『いつ終わってもいい』という意識で、常に最善を尽くすことはプロになっても大事にしたい気持ち。高校生であんな考え方ができるのはすごいです」

――ベストゲームは?

「烏野vs鴎台です。日向(翔陽)が熱を出して、コンディションの大切さを再確認するのもあるんですが、新しい跳び方の"ドン"ジャンプにトライするのもすごくよかった。試合は全員がベストを尽くして、試合結果も衝撃で印象に残っています。そして何より、星海が格好いいです!」

(連載37:ヴィクトリーナ姫路の松本愛希穂は試練に直面も「逃げたくない」 田中龍之介のように、下を向いている暇はない>>)

【プロフィール】

後藤陸翔(ごとう・りくと)

所属:東京グレートベアーズ

2001年5月13日生まれ、愛媛県生まれ。187cm・アウトサイドヒッター。小学3年時からバレーを始める。新田高校では春高バレーに出場し、近畿大学ではリーグ優勝を何度も経験。4年時には主将を担い、黒鷲旗全日本男女選抜大会や天皇杯ではVリーグのチームを次々と破って見せた。2024年、東京グレートベアーズに入団した。

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